発達性協調運動障害(DCD)とは?小学生の特徴・診断・支援を解説

「縄跳びができない」「球技が極端に苦手」「箸の使い方がぎこちない」——こうした動きの不器用さが目立つ子どもは、発達性協調運動障害(DCD:Developmental Coordination Disorder)かもしれません。

体育の授業や日常の手作業で困りごとが目立ちやすいDCDですが、本人の努力不足や練習不足ではありません。

脳が体の動きを計画し、実行するプロセスに特性がある状態です。世界保健機関(WHO)や厚生労働省でも、DCDは神経発達に関わる特性の一つとして位置づけられています。

この記事では、WHOや厚生労働省の考え方を踏まえながら、DCDの特徴、原因、診断までの流れ、家庭や学校でできる支援について詳しく解説します。

目次

DCDとは?WHOの定義と厚生労働省の考え方

発達性協調運動障害(DCD)は、生まれつきの神経発達の特性によって、体の動きを計画し、実行する能力に困難が生じる状態です。

知的な遅れや、筋肉・神経そのものの異常があるわけではありません。脳から体への「動きの指令」がうまく伝わりにくいことが背景にあると考えられています。

世界保健機関(WHO)が公表している国際疾病分類第11版(ICD-11)では、DCDは神経発達症群の一つに位置づけられています。年齢や知的発達の水準から期待される運動の協調性に、明らかな遅れやぎこちなさがみられる状態として説明されています。単なる「不器用」ではなく、国際的にも認識されている発達特性であるという点が重要です。

また、WHOはICF(国際生活機能分類)という考え方も示しています。ICFでは、生活のしづらさは本人の特性だけで生じるのではなく、周囲の環境との関わりの中で強まったり弱まったりすると捉えます。この視点は、DCDのある子どもへの支援を考えるうえでも大切な土台となっています。

日本国内では、厚生労働省が発達障害者支援法に基づき、発達に特性のある子どもや家族への相談支援体制の整備を進めています。厚生労働省の関連機関である発達障害情報・支援センターでも、DCDを含む発達特性に関する情報提供や相談窓口の案内が行われています。家庭だけで抱え込まず、専門機関とつながることが大切です。

親の育て方や本人の努力不足が原因ではありません。

「運動神経がない」という言葉で片づけてしまうのではなく、「体と脳の連携がいま発達の途中にある」という捉え方を持つことが、支援の出発点になります。

小学生に見られるDCDの特徴

DCDの現れ方は一人ひとり異なります。小学生の時期には特に、体育の授業や給食、図工などの場面で困りごとが目立ちやすくなります。

粗大運動(大きな動き)の困難

  • 走るのが遅い、走り方がぎこちない
  • ボールを投げる・蹴る・キャッチするのが苦手
  • 跳ぶ、バランスを取るのが難しい
  • 体育の時間に特定の動きでうまくできず、恥ずかしさを感じた経験がある

微細運動(細かい動き)の困難

  • 箸やペンの操作がぎこちない
  • 字を書くのが遅く、文字が読みにくい
  • ボタン留めやファスナーの開閉が難しい
  • はさみや工作道具の操作がうまくいかない

生活動作での困難

  • 着替えに時間がかかる
  • 食事の際に衣類をよく汚してしまう
  • 物をよく落とす、人や物にぶつかりやすい

心理・学習面への影響

  • 体育や図工の授業が嫌になり、学校を行き渋るようになる
  • 周りの子と比較して自己肯定感が下がってしまう
  • 「運動ができない子」と見られ、友人関係の中で孤立しやすくなる

こうした特徴は、頑張れば簡単に直るものではありません。

厚生労働省の資料でも、発達の特性は本人の適性や努力の問題ではなく、周囲の理解と環境の調整が重要であるという考え方が示されています。

「できないこと」を責めるのではなく、「どんな場面で困っているのか」に目を向けることが、子どもを理解する第一歩になります。

なぜDCDは起こるの?原因についての考え方

教室で担任の先生が子どもの席のとなりにしゃがみ、やさしく声をかけている場面のイラスト

DCDの原因は、脳が体の動きを計画・調整する「運動協調」の仕組みに特性があることだと考えられています。

作業療法や発達支援の現場では、感覚と運動をうまく結びつける働きに注目し、一人ひとりに合った支援を行っています。

例えば、頭では分かっていても体をその通りに動かすことが難しい場合や、複数の動きを同時に行う(歩きながら話す、リズムに合わせて動くなど)ことが苦手な場合、新しい動きを覚えるまでに人より時間がかかる場合などがあります。

このような特性は、本人の努力不足や育て方が原因ではありません。また、「頑張れば必ず克服できる」というものでもありません。

世界保健機関(WHO)のICFの考え方に基づけば、困りごとの大きさは、本人の特性だけでなく、周囲の環境やサポートの有無によっても変わります。適切な配慮があれば困りごとが軽くなる場合もあれば、環境が合わないことで困りごとが強まってしまう場合もあるのです。

もちろん、成長とともに体の使い方に慣れ、「以前より苦手さが目立たなくなった」と感じる子どもも少なくありません。一方で、大人になっても特定の動きの苦手さが残る場合もあります。

大切なのは「できるようにすること」だけを目標にするのではなく、「どうすれば安心して取り組めるか」という視点を持つことです。

DCDの診断までの流れ

DCDかどうかを判断するためには、医療機関での評価が必要です。

厚生労働省は、発達障害者支援法に基づき、早期の気づきと相談を重視した体制づくりを進めており、地域の相談窓口や医療機関との連携を推奨しています。診断までの一般的な流れは、次のとおりです。

  1. 市区町村の窓口や保健センターに相談
    「運動発達が気になる」と感じた時点で、早めに相談することが大切です。
  2. 医療機関での評価
    小児科、児童精神科、発達外来などで、運動機能に関する検査(Movement ABC-2など)が行われます。
  3. 心理検査・運動評価
    知能検査などによって発達の全体像を把握し、年齢に対して運動能力がどの程度遅れているかを評価します。
  4. 診断と支援計画の作成
    診断がついた場合には、学校とも連携しながら、環境調整や作業療法などの専門的支援につないでいきます。

初診まで数週間から数か月ほど待つ地域もあるため、気になる様子があれば早めに相談を始めることをおすすめします。

診断名の有無にかかわらず、「その子が過ごしやすい環境をどう整えるか」という視点を持ち続けることが大切です。診断がつかない場合でも、困りごとが実際にあるのであれば、学校や専門機関と連携しながら配慮を検討していくことができます。

家庭でできるサポート

家庭では、次のような関わり方が助けになります。

家庭での関わり

  • 「苦手だね」と指摘するより、小さな成功を認める
  • 得意な動きから始めて、自信をつける経験を増やす
  • 焦らず、その子自身のペースを尊重する

環境調整

  • 転びやすい環境を整える(床の物を片付けるなど)
  • 道具を本人の体に合わせたサイズにする(短いボール、握りやすいペンなど)
  • 失敗しにくい活動を設計し、成功体験を積みやすくする

専門的支援の活用

  • 作業療法(OT):動きの計画性や実行機能を支援
  • 理学療法(PT):粗大運動能力の向上をサポート

厚生労働省は、発達に特性のある子どもへの支援について、家庭だけで抱え込まず、児童発達支援センターや発達障害者支援センターなどの専門機関と連携することの重要性を示しています。

「できないことをできるようにする」ことだけを目標にするのではなく、「その子が安心して取り組める環境をどうつくるか」という視点を持つことが、家庭でのサポートの基本になります。

焦らせたり、他の子と比較したりすることは、自己肯定感の低下につながりやすいため、避けるようにしましょう。

学校・周囲との連携で大切なこと

DCDは「怠け」や「やる気の問題」と誤解されやすいことが大きな課題です。

学校の先生や友人に、「動きの調整が難しい特性があること」を理解してもらうことで、本人が感じる心理的な負担は大きく減ります。

学校へ相談する際は、「この場面ではこうしてください」とお願いするだけではなく、まずは学校での様子を教えてもらうことをおすすめします。

例えば、

「家ではこのような様子があります。学校ではどのように過ごしていますか」
「一緒に、その子に合った方法を考えていただけるとうれしいです」

というように伝えると、先生も状況を共有しやすくなります。

文部科学省も、子ども一人ひとりの教育的ニーズに応じて、家庭と学校が連携しながら支援を進めていくことの重要性を示しています。体育の授業での参加方法を工夫したり、板書や作業の量を調整したりするなど、小さな配慮の積み重ねが、子どもが安心して学校生活を送るための土台になります。

「お願いする」だけでなく「一緒に考える」という姿勢を持つことが、学校との良い連携につながります。

相談先・参考になる公式ホームページ(HP)

自宅のリビングでタブレットとノートを使って、自分のペースで学習している子どものイラスト

DCDについて相談したり、詳しく知りたいときは、次のような窓口が参考になります。

  • お住まいの市区町村の子育て・保健窓口
  • 発達障害者支援センター
  • 児童発達支援センター
  • 小児科・児童精神科・発達外来

公的機関の情報として、以下のホームページ(HP)も参考にしてください。

これらのホームページでは、発達障害に関する制度や相談窓口の案内、国際的な診断基準についての情報がまとめられています。

DCDのように見た目だけでは伝わりにくい特性については、家族だけで判断せず、専門機関の意見を聞くことも大切です。

相談窓口に連絡する際は、「いつ、どんな場面で、どのように困っているか」を具体的にメモしておくと、状況を共有しやすくなります。

一人で悩まず、まずは電話や窓口で相談してみることから始めてみましょう。

まとめ

発達性協調運動障害(DCD)は、周りからは「不器用」「やる気がない」と見えてしまうことがある特性です。

しかし、世界保健機関(WHO)が神経発達症群の一つとして位置づけているように、DCDは本人の努力不足ではなく、脳が体の動きを計画し実行する仕組みに特性がある状態です。

厚生労働省をはじめとする公的機関も、発達に特性のある子どもや家族が孤立しないよう、相談窓口や専門機関との連携を進めています。

「どうしてできないの?」ではなく、「どうすれば安心して取り組めるか」という視点を持つことが、子どもを理解する第一歩になります。

保護者だけで頑張る必要はありません。学校や医療機関、地域の専門機関と連携しながら、その子に合った方法を一緒に見つけていきましょう。

子どもが自分のペースで成長できる環境を整えることが、何より大切な支援につながります。

【監修】佐藤 仁美(作業療法士)
児童発達支援・放課後等デイサービスで、発達に特性のある子どもへの支援に従事。現在はNIJINアカデミー東金校の教室長として、不登校の子どもたちの学びを支援している。「子どもを変える」のではなく、「子どもが安心して過ごせる環境をつくること」を大切に、一人ひとりに寄り添った支援を実践している。

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家庭でいまできること

制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。

いま家庭で確かめておきたいこと

睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)

食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか

頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)

「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか

保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか

学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか

声のかけ方で迷ったときは

「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。

逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。

相談先の選び方|どこに何を聞けるか

相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。

相談先の比較
相談先聞けること費用向いている場面
在籍校(担任・スクールカウンセラー)出席の扱い、校内の別室、学習の進め方無料まず学校での配慮を相談したいとき
教育支援センター(市区町村)学校外の公的な居場所、通所と出席扱い原則無料学校の外に一歩を踏み出したいとき
フリースクール(民間)体験活動中心の居場所、少人数の学び月1〜5万円程度興味や「やってみたい」から入りたいとき
オンライン自宅から参加できる学び、出席扱いの実務スクールにより異なる外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき
医療機関(小児科・児童精神科)体の不調の背景、診断と治療保険診療睡眠・食事・体の症状が続くとき
24時間子供SOSダイヤル子ども本人・保護者どちらの相談も無料・24時間いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310)

どこから始めればいいか迷ったら

まずは市区町村の教育委員会(教育相談室)に電話してみてください。学校を通さずに保護者から直接相談できる自治体がほとんどです。「今すぐ通える場所はありますか」「対象は何年生からですか」の2つを聞くだけでも、次の一手が見えてきます。全国の窓口は文部科学省のページから探せます。

この記事のテーマについて、よく寄せられる質問

同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。

Q. 学校を休ませてもいいのでしょうか?

A. 教育機会確保法の第13条は「個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ」と条文で明記しています。休むことは制度の外側にある逸脱ではなく、法律が想定している状態です。

Q. どこに相談すればいいですか?

A. まずは市区町村の教育委員会(教育相談室)です。学校を通さずに保護者から直接相談できる自治体がほとんどです。全国の窓口は文部科学省のページから探せます。

Q. 学校以外に、どんな場所がありますか?

A. 教育支援センター(適応指導教室)は原則無料の公的な居場所、学びの多様化学校は特別の教育課程を組める正式な学校、ほかにフリースクールオンラインがあります。

Q. 出席扱いにできますか?

A. 要件を満たせば校長の判断で可能です。通所する場合は別記1、自宅でICT等を活用して学ぶ場合は別記2の要件があります。令和6年度は学校外の機関等で42,978人、自宅ICT学習で13,261人が出席扱いになっています。

Q. この先どうなるのか不安です

A. 不登校の経験がその後を決めるわけではありません。不登校を公表した著名人12人のように、別の道で力を発揮している人は多くいます。いまは先を決めるより、目の前の回復を優先してよい時期です。

つらいときの相談先(24時間・無料)

  • 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
  • お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター

この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。

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