「学芸会に出たくない」「音楽会の日は学校を休みたい」。小学生の子どもにそう言われたら、励ますべきか、休ませてもよいのか迷いますよね。
参加するかを急いで決める前に、練習・本番のどこが負担なのかを確かめましょう。本人の体調と気持ちをもとに、見学、出番だけの参加、役割の調整、今回は休むことも学校と相談できます。見学や部分参加の方法は、学校の体制や行事の内容によって異なります。
この記事では、学校の学芸会・音楽会・学習発表会を嫌がる理由、親の声かけ、先生への相談文、当日と行事後の対応を紹介します。
にじいろは株式会社NIJINが運営し、この記事で紹介するNIJINアカデミーも同社の事業です。
「出たくない」と言われたら、最初にすること
まずは「出たくないくらい、気になることがあるんだね」と受け止めます。その場で参加を約束させたり、理由が分かるまで質問を重ねたりする必要はありません。保護者も驚いたり、残念に思ったりして当然です。落ち着いて話せる時間を取り直して構いません。
① 体調と安全を確かめる
眠れているか、食べられているか、腹痛や頭痛がないかを見ます。からかい・威圧的な言動などがあれば、その場から離れることや学校への共有を優先します。
② 話せる分だけ聞く
「練習と本番なら、どちらがつらい?」「話す、歌う、待つ時間のどれかな?」と場面を絞ります。「分からない」「今は話したくない」も答えとして受け取ります。
腹痛などを「緊張のせい」「仮病」と決めつけないでください。症状が強い、繰り返す、睡眠や食事に影響しているときは、小児科などに相談しましょう。行事の調整と体調の相談は並行して進められます。
学芸会・音楽会が苦手な理由は、子どもによって違う
同じ「出たくない」でも、舞台が怖い子と、毎日の練習で疲れている子では必要な対応が違います。次の例を答えとして当てはめるのではなく、本人の話を聞く手がかりにしてください。
人前に出る緊張、間違えたら笑われる不安
台詞を忘れる、歌詞を間違える、演奏を止めることを想像して、身動きが取れなくなる子もいます。「失敗しないように練習しよう」だけでは負担が増える場合があります。「忘れたら先生が合図する」「途中で困ったら一度止まってよい」など、失敗した後にどう助けてもらえるかを具体的に確かめましょう。
劇の役・台詞・衣装がつらい【学芸会】
人に見られることだけでなく、長い台詞を覚える、皆の前で一人だけ声を出す、苦手な衣装を着ることが負担になる場合があります。希望の役になれなかった悔しさもあるかもしれません。どこが嫌なのかを分け、台詞を分担する、立つ位置や衣装を調整するなど、学校に相談する内容を絞ります。
音量・響き・楽器の難しさがつらい【音楽会】
大きな打楽器、体育館の反響、マイクの音が苦手な子もいます。一方で、音量ではなく、指使いや楽譜、皆とタイミングを合わせることが難しい場合もあります。「音楽が嫌い」とひとまとめにせず、音の環境と演奏の課題を別々に聞いてみましょう。
練習が長い、予定がいつもと違う
授業の変更、合同練習、長い待機時間など、本番前から負担が続くことがあります。「あと何回練習するのか」「今日はどこで、何時までか」が分からない不安もあります。
島田療育センターの学校行事を嫌がる子への発達相談Q&Aでも、場所や活動を具体的に伝えること、音などの苦手な要因を調整することが紹介されています。こうした工夫は、本人の困りごとに合わせて学校と検討できます。
友達や先生とのやり取りが負担になっている
失敗をからかわれた、練習で繰り返し注意された、隣の子との関係が気になるなど、行事以外の問題が隠れていることもあります。本人が話した言葉と、日時・場面をメモし、保護者の推測とは分けて先生に伝えましょう。本人の前で相手に確認したり、クラス全体に理由を説明したりする前に、伝え方を相談してください。
参加する意味が分からない、別の関わり方をしたい
高学年では「なぜ皆で同じことをするの?」という疑問や、人に見られる恥ずかしさが言葉になることもあります。行事の目的を説明してもらいながら、演じる以外の準備や制作など、本人が納得できる役割があるか考えます。裏方なら平気と決めつけず、本人の希望を聞くことが前提です。
行事以外の日も疲れているなら、集団の人数、指示の伝わり方、休み時間なども見直す必要があります。日常の困りごとは集団が苦手な子へのサポートで詳しく扱っています。行事が苦手ということだけで、発達障害などの診断はできません。
練習期間にできる工夫と、親の声かけ
本番まで我慢して乗り切ることだけを考えず、明日の練習から減らせる負担を探します。家庭での追加練習は、本人が望んでいるかを確認してから。休む時間まで行事の話で埋めないようにしましょう。
| 負担の場面 | 相談の例 |
|---|---|
| 台詞・歌詞を忘れそう | 短く区切る、手元の目印を使う、先生の合図を決める。家庭練習の量も確認する。 |
| 音・人混み | スピーカーや打楽器からの距離、静かな待機場所、会場にいる時間を調整する。 |
| 予定が分からない | 練習する場所・内容・終了時刻を短い表にする。変更時は誰が知らせるかも決める。 |
| 集団練習で疲れる | 参加する練習を絞る、休憩を挟む、少人数で確認する時間を設けられるか相談する。 |
| 注意や視線が怖い | 大勢の前での指摘を避ける伝え方や、安心して質問できる先生を相談する。 |
上記は調整の例です。イヤーマフなどを使いたい場合も、本人の使い心地と、先生の合図・安全上必要な音が届くかを学校と確かめてください。
試してみたい声かけ
「一番気になるところだけ教えてくれる?」
「先生に、どこまで話してもいい?」
「やってみてつらかったら、変えよう」
プレッシャーになりやすい声かけ
「みんなできるよ」
「絶対に大丈夫だから」
「ここで休んだら、ずっとできなくなるよ」
「緊張するよね」と共感したうえで、「立つ場所を見ておく? 今日はやめておく?」と選べる形にします。練習できた量だけでなく、困りごとを伝えられたことや、休憩を選べたことも受け止めてください。
当日は休ませてもいい? 見学・部分参加の考え方
体調が悪い、強い不安がある、本人が参加を望まないときは、休むことも含めて相談して構いません。一方で、「出たいけれど怖い」という気持ちなら、負担を調整した参加を考えられます。参加と欠席の二択を迫らず、本人の希望と安全に過ごせる条件を一緒に確認しましょう。
| 選び方 | 学校と確認すること |
|---|---|
| 調整して参加 | 苦手な場面の支援、休憩の合図、付き添う大人。最後まで出る約束にしない。 |
| 出番の一部だけ | 出る演目と時間、集合場所、出番前後の過ごし方、迎えの方法。 |
| 見学する | 見学席、保護者の同席、入退室の方法。見ること自体が負担なら別案を考える。 |
| 別の役割で関わる | 小道具・掲示・準備など本人が希望する役割。作業量や締切も調整する。 |
| 今回は休む | 欠席連絡、役割の引継ぎ、翌日の受け入れ。休む理由を周囲にどう伝えるか。 |
どの方法も、すべての学校・行事で実施できるわけではありません。担当の先生だけでは判断できないこともあるため、早めに相談して、できる範囲をすり合わせます。一度決めても、体調や気持ちの変化に応じて見直してよいと共有しておきましょう。
「休ませたら逃げ癖がつくのでは」と心配なときは、休むことだけを評価するのではなく、何が負担だったか、次にどんな支援が必要かを考えます。一度の参加・欠席から、今後の成長を決めつけることはできません。
先生への相談は「困っている場面」と「試したいこと」を伝える
「行事が嫌いです」だけでは、学校側も何を変えればよいか判断しにくくなります。本人が話したこと、家庭での変化、希望する調整を短く整理しましょう。原因を完全に説明できなくても、今困っている事実から相談できます。
- 本人と、伝えてよい範囲を決める誰に、何を伝えるかを確認します。安全に関わる内容は大人に共有する必要があることも、できるだけ本人に説明します。
- 担任に場面と変化を伝える「合奏の後に頭痛を訴える」「台詞の練習の前に泣く」などを共有。学校での様子も聞き、家庭との違いを確かめます。
- 一つの調整を試す「次の練習では、出番まで静かな場所で待つ」など、日時・担当者・場所を具体的に決めます。
- 本人の感想をもとに見直すいつ確認するかを決め、合わなければ別案へ。当日の変更を誰に連絡するかも共有します。
音楽会の練習について相談させてください。本人は「体育館の音がつらく、練習が怖い」と話しており、ここ数日は練習の前夜に眠りにくそうです。学校ではどのような様子でしょうか。
本人は、静かな場所で待ち、出番の一部だけ参加する方法なら考えてみたいと話しています。まず次の練習で、待機場所や参加時間を調整できるかご相談したいです。難しい場合は、見学や欠席も含めて考えたいと思っています。
本人の希望で、この話をクラス全体にはまだ伝えないでいただけると助かります。可能な方法と、当日の連絡先を教えてください。
文例の体調・本人の希望は、実際の状況に置き換えてください。まだ希望が分からなければ「本人も決められずにいます」と伝えられます。
- どの演目・練習に、何時から何時まで参加するか
- つらくなったときの合図と、受け止める大人
- 休める場所と、そこまでの移動・付き添い
- 当日の変更・欠席・迎えの連絡方法
- 欠席・遅刻・早退などの記録や、学習評価の扱い
相談が進まないときは、担任を責める形ではなく、学年主任、養護教諭、特別支援教育コーディネーター、スクールカウンセラーなどにも同席をお願いできます。普段の行き渋りも伝えたい場合は、小学生の行き渋りと連絡帳の書き方も参考にしてください。
当日の朝に嫌がったら? 終わった後の登校まで考える
当日の朝:昨日の約束より、今の状態を確認する
前日は参加するつもりでも、朝になって動けなくなることがあります。「昨日は行くと言ったのに」と責めず、体調を確かめ、静かな場所で落ち着けるようにします。登校直前に長い説得や追加練習を始めるのは避けましょう。
今朝は本人の不安が強く、登校の準備が進まない状態です。事前に相談した参加方法を見直したく、ご連絡しました。本日は欠席します。担当の役割の引継ぎと、明日以降の過ごし方について、改めて相談させてください。
遅れて参加する、見学に切り替える場合は、その希望に書き換えます。会場に着いてからつらくなったときは、事前に決めた大人に知らせ、休憩や帰宅を相談します。保護者がそばにいられない場合ほど、学校で誰が支えるかを決めておくことが大切です。
終わった直後:出来栄えの振り返りを急がない
出られた日も休んだ日も、まずは疲れを確かめます。「上手だった?」より「今は休みたい?」「話したくなったら聞くね」と声をかけてみてください。本人が望まない映像の見直しや、きょうだい・友達との比較は控えます。
翌日以降:「休んだ理由を聞かれるのが怖い」に備える
欠席したことを皆の前で説明するのが不安なら、先生にあらかじめ伝えます。友達への返し方は「その日は休んだんだ」「先生と相談していたよ」など、本人が使いやすい言葉を一つ用意する程度で十分です。詳しい事情を自分で説明する役目を背負わせないでください。
行事が終わっても登校への不安が続くなら、行事だけの問題として終わらせず、学習・人間関係・体調を学校と見直します。行き渋りの初期対応や、学校内外の教育相談も選択肢です。
文部科学省の不登校支援に関する通知は、登校という結果だけを目標にせず、本人と保護者の意思を尊重し、学びや相談につながる支援を重視しています。休んだ後も、家庭だけで抱えずにつながりを保つことが大切です。
安心できる場で、自分の伝え方を選ぶ|NIJINの実例
学校の発表会に参加することと、自分を表現する機会を持つことは、別々に考えられます。家庭で好きな作品を見せる、少人数で話す、文章やチャットで伝えるなど、表現の形はいろいろあります。
学校での工夫に加え、学校外の学びを知りたいときの例として、NIJINアカデミーの公式記録を紹介します。どちらも個別の経験であり、発表が苦手な子が同じように変わることを保証するものではありません。
ゆきだるまちゃん:好きな絵を、少しずつ人に見せる
公式記事では、小学6年生のゆきだるまちゃんは、絵が好きでも人に見せることに抵抗があったと紹介されています。最初のインタビューでは、作品をどこまで紹介するかを本人が選びました。その後、全校ホームルームで作品を紹介し、描き方の変化を自分から伝えるようになったそうです。

この実例から参考にしたいのは、発表の大きさより、本人が「ここまでなら」と選べる余地です。学校の行事でも、どの場面なら負担が少ないかを話し合うヒントになります。
記事・画像出典:NIJINアカデミー「『見せるのは怖い』から『見てほしい』へ」
うをまん:関心を持った課題を、大人に伝える
仙台での活動報告には、小学5年生のうをまんが、不登校の子どもたちの学びの場に関心を持ち、自分で構成を考えてプレゼンした記録があります。写真では、ブースで資料を示しながら来場者と関わる様子が紹介されています。

大勢の前で話すことを、すべての子の次の目標にする必要はありません。「何を伝えたいか」「誰になら伝えたいか」を本人と考えられることが、別の表現の場を探す手がかりになります。
記事・写真出典:NIJINアカデミー「不登校の子が仙台で挑戦」。名前は公式記事で使われているニックネームです。
学芸会・音楽会を嫌がる小学生について、よくある質問
Q. 理由を聞いても「分からない」としか言いません。
理由を説明できないからといって、困っていないとは限りません。聞き続けず、練習がある日の前後の様子をメモし、学校での様子と照らし合わせます。絵を描く、紙に書くなど、本人が使いやすい方法でも構いません。
Q. 普段の授業は平気なのに、学芸会だけ嫌がることはありますか?
あります。舞台の照明、観客の視線、衣装、いつもと違う時間割など、行事特有の負担を確かめてください。普段できていることを根拠に「行事もできるはず」と決めず、その場面で必要な調整を考えます。
Q. 希望の役や楽器になれず、出たくないと言っています。
まず悔しい気持ちを受け止め、決め方や、今の役の何が嫌なのかを聞きます。役の変更を約束せず、先生に経緯を確認し、担当の中で工夫できる部分や別の関わり方を相談しましょう。
Q. 練習を休んだら、本番だけ参加してはいけませんか?
一律には決められません。本人の希望を伝え、動きや役割を確認する機会、当日の支援が確保できるか学校と相談します。練習不足のまま舞台に立つことが、かえって不安にならないかも確かめてください。
Q. 学芸会を見学すると、欠席扱いになりますか?
見学場所、登校した時間、学校の運用によって扱いが異なります。出欠の記録と学習評価は分けて学校に確認してください。「見学なら必ず出席」「一度休むと必ず成績が下がる」とは言い切れません。
Q. 本人は出たいと言うのに、会場で泣いてしまいます。
出たい気持ちと、その場の負担は両方あり得ます。いったん静かな場所で休み、本人が落ち着いてから次を相談します。泣いている最中に出番へ戻る約束を求めず、先生と待機場所や参加時間を見直しましょう。
Q. 子どもに「親は見に来ないで」と言われたら?
見られるのが恥ずかしいのか、失敗を心配しているのかなど、話せる範囲で聞きます。来場するか、どこから見るか、撮影するかを別々に相談し、学校の参観ルールも確認しましょう。本人に黙って撮影・共有することは避けます。
Q. 不登校中ですが、本人は音楽会だけ参加したいそうです。
本人の希望を学校に伝え、集合場所、必要な練習、支えてくれる大人を確認します。行事参加を、その後毎日登校する約束と結び付ける必要はありません。周囲への伝え方は不登校中の行事参加と学校への相談も参考にできます。
Q. 先生に「みんなと同じように」と言われ、相談しづらいです。
「参加させたくない」ではなく「今の方法ではこの場面がつらい」と具体的に伝え、短時間・場所の調整などを一つ提案してみます。難しければ学年主任や養護教諭などと一緒に話す機会をお願いし、利用できる支援を確認しましょう。
今日すべてを決める必要はありません。まず本人が話せることを一つ聞き、先生に共有するところから。行事が終わった後も安心して過ごせるように、家庭と学校で選択肢を考えていきましょう。


