結論(早見):癇癪持ちの子どもは、問題児でも、わがままでもありません。脳の警報装置である扁桃体が「戦え」という指令を出してしまう、脳機能のユニークさによるものです。むしろ、人一倍傷つきやすく、優しい子が多いのが特徴。「面白いな」と向き合ってくれる大人や、合った環境と出会えると、低学年なら1週間ほどで見違えるように変わることもあります。
学校で癇癪を起こしてしまい、それがきっかけで不登校になってしまう——そんな相談が、NIJINアカデミーには数多く寄せられます。「暴力的」「問題行動が多い」と誤解されがちな癇癪持ちの子どもたちですが、その実態は大きく異なります。
そこで本記事では、「癇癪持ちの子どもとの向き合い方」について解説します。オルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の星野達郎(タツロー校長)が、脳科学の仕組みと、自身の教員時代の経験から、癇癪の正体と本当に必要な対応を徹底解説します。
全国900名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長を務める傍ら、2つの教師団体を主宰。これまで累計1,200名以上の教員向けに研修を実施し、学校の中と外、両面から教育課題の解決に取り組む。
その独自の教育実践はNHKやテレビ朝日など多くのメディアで特集され、「青年版国民栄誉賞」や「内閣総理大臣奨励賞」を受賞するなど、各方面から高く評価されている。
確かな実績と熱い教育信念を持つ一方で、普段は生徒たちから気さくにいじられる「愛されキャラ」の校長として、日々子どもたちと本音で向き合っている。
癇癪持ちは「問題児」ではなく、脳機能のユニークさ

タツロー校長は、教員時代に多くの癇癪持ちの子どもと関わってきました。学校では「問題児」と扱われがちな子どもたちですが、その見方に真っ向から異を唱えます。
タツロー校長「初めて担任を持った日、『死ね死ね死ね』と叫びながら殴りかかってきた子がいました。学校中から問題児だと言われていましたが、私の目は輝きましたよ。『なんて面白いんだ』って。その後、彼はクラスのムードメーカーになっていきました。」
癇癪は、その子の性格や躾の問題ではなく、脳機能のユニークさによって起こるものだとタツロー校長は説明します。
扁桃体のアラームと「闘争逃走反応」
脳には「扁桃体」と呼ばれる警報装置があります。危険を察知すると、これが脳の司令塔である前頭前野に指令を送ります。場面緘黙や母子分離不安と、癇癪はここまでは同じ仕組みです。



「場面緘黙の子は、扁桃体がアラームを出すと、前頭前野が『固まれ』と指令を出します。だから体が動かなくなり、話せなくなる。一方で癇癪持ちの子は、前頭前野が『攻撃しろ』と指令を出してしまうんです。原理は全く同じで、指令の出し方が違うだけなんです。」
これは、生理学者キャノン博士が提唱した「闘争逃走反応」という有名なストレス反応の理論とも重なります。危険に直面したとき、人は「戦う(闘争)」か「逃げる(逃走)」のどちらかに分かれるというものです。
- 逃走タイプ:固まる、動けなくなる(場面緘黙タイプ)
- 闘争タイプ:物に当たる、手が出る、叫ぶ(癇癪タイプ)



「癇癪持ちの子は、狩人だった頃の名残なのかもしれません。アラーム機能が優れているからこそ、『戦え』という指令が強く出てしまう。決して悪いことではないんです。」


実は「全員が元・癇癪持ち」だった


2歳から4歳の「イヤイヤ期」に癇癪を起こす子どもの割合は、実に約95%にのぼるといわれています。つまり、ほとんどの人が幼少期に一度は癇癪を経験しているのです。



「2歳から4歳で起きていたことを、10歳や20歳で起こしているだけと考えると、そこまで大きな違いはないと私は思っています。感情のコントロールを身につけるタイミングは、人それぞれ違うだけなんです。」
思春期にあたる18歳頃までは、感情を司る線条体の働きが活発な一方、それを制御する機能はまだ未熟です。だからこそ、感情に振り回されやすい時期でもあるとタツロー校長は解説します。
癇癪持ちの子は、実は人一倍優しい


癇癪持ちの子の大きな特徴は、「自分の意思で行動しているわけではないのに、記憶だけは残ってしまう」ことだとタツロー校長は指摘します。



「なぜあんな行動をしてしまったのか、本人にも分からない。でも記憶だけはしっかり残っていて、感情が落ち着いた後に強い後悔に襲われます。『またやってしまった』『自分はダメなやつだ』と、周りが思う以上に、本人が一番傷ついているんです。」
そしてこの「人一倍傷ついてきた」という経験こそが、癇癪持ちの子どもたちに優しさを育んでいるとタツロー校長は語ります。



「NIJINアカデミーにいる癇癪持ちの子たちは、本当に優しくて仲間思いの子ばかりです。人一倍傷ついてきたからこそ、人に優しくしようという感覚が、当たり前のように備わっているんですよね。」
対応のポイントは「人」がすべて
癇癪持ちの子どもへの対応で、タツロー校長が最も重視しているのが「どんな大人・環境と出会うか」です。



「『面白いな、いいやつだな』と向き合ってくれる人に出会うと、癇癪持ちの子はぐんぐん伸びていきます。逆に、脳機能のユニークさを理解せずに『ちゃんとしなさい』と対応する大人や環境だと、どんどん沈んでいってしまいます。」
具体的な対応として、タツロー校長は次のようなポイントを挙げています。
- 周りに被害が及ばなければ問題ない:感情が収まるまで、安全な場所で見守る・抱きしめる
- 安全に発散できる場所を用意する:児童館やボールプールのある施設、広い公園など、思い切り体を動かせる環境
- 気持ちに寄り添う言葉をかける:「あれはしんどかったよね」「前より時間短くできたね」など、感情や過程を評価する



「暴れたって、何も問題ありません。一人が暴れたくらいでぐちゃぐちゃになる学級経営をしているなら、それは教師の力不足です。日本人はもっと暴れたっていいと、私は本気で思っています。」
環境を変えると、驚くほど早く変わる


幼稚園では楽しそうにしていたのに、小学校に入った途端に学校で癇癪を起こすようになる、あるいは学校ではいい子でも家で荒れてしまう——こうしたケースは非常に多いとタツロー校長は言います。悪いストレス(コルチゾール)が蓄積し、脳機能がうまく制御できなくなった結果です。



「合った環境に出会うと、低学年の子は早ければ1週間ほどで見違えるように変わります。高学年や中学生でも、3ヶ月から半年ほどで癇癪が落ち着いてくることが多いですね。自分を認めてくれる人、自分に合った環境に出会えるかどうかが、すべてなんです。」
1週間前、1ヶ月前と比べて良くなっているか、悪くなっているか。定点観測をして、悪化が続いているようであれば、その環境がその子に合っていないサインかもしれません。
保護者は一人で抱え込まなくていい
癇癪持ちの子どもに四六時中向き合い続けることは、保護者にとっても大きな負担です。タツロー校長は、無理に一人で抱え込まないことの大切さを強調します。



「自分の子に合った教育機関を探すというのも、立派な選択肢です。合う人・合う環境に出会えると、夕食の時間に笑顔が増えたり、幼稚園時代のようなあの子に戻ったという声を、NIJINアカデミーでも本当によく聞きます。」
学校だけでなく、放課後等デイサービスやNIJINアカデミーなど、今は様々な選択肢があります。合わない環境に無理に留まり続けるのではなく、環境を変えるという選択肢を持っておくことが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 癇癪持ちの子どもは、発達に問題があるのですか? A. タツロー校長は「問題」ではなく「脳機能のユニークさ」だと説明しています。扁桃体のアラームに対する反応の出方が、他の子と少し異なるだけです。
Q2. 癇癪と場面緘黙は何が違うのですか? A. 脳の仕組み自体は同じで、扁桃体のアラームに対して前頭前野が「固まれ」と指令を出せば場面緘黙、「攻撃しろ」と指令を出せば癇癪になります。反応の方向性が異なるだけです。
Q3. 癇癪を起こした時、どう対応すればいいですか? A. 周りに被害が及ばない場所で、感情が収まるまで見守ったり抱きしめたりすることが基本です。落ち着いた後は、「しんどかったね」など気持ちに寄り添う言葉をかけることが大切です。
Q4. 環境を変えると、本当に改善しますか? A. タツロー校長の経験では、合った環境に出会えると低学年で1週間、高学年でも3ヶ月〜半年ほどで落ち着いてくることが多いとされています。
Q5. 保護者はどう向き合えばいいですか? A. 一人で抱え込まないことが大切です。子どもに合った教育機関を探すことも一つの選択肢であり、合う環境が見つかれば親子関係にも良い変化が生まれやすくなります。
まとめ:癇癪は「悪いこと」ではなく、優しさの裏返し
癇癪持ちの子どもは、問題児でも、感情のコントロールができない子でもありません。脳の警報装置が「戦え」という指令を出してしまう、生まれ持った脳機能のユニークさによるものです。そして、人一倍傷ついてきたからこそ、人一倍優しい心を持っています。



「暴れる子を、責めないでほしいんです。それは弱さじゃなくて、優しさの裏返しだから。『君、面白いな』と向き合ってくれる、たった一人の大人がいるだけで、子どもは変わっていきます。」
もし今、我が子の癇癪に悩んでいるなら、まずはその子を責める前に「合った環境かどうか」を見つめ直してみてください。環境が変わるだけで、驚くほど早く、本来のその子の姿が戻ってくることがあります。
▶ 動画でより深く:YouTube(フル解説)
さらに、星野達郎校長が今回のテーマを動画でより熱く、詳細に解説しています。
教員時代のリアルな癇癪エピソードなど、記事では紹介しきれない内容はぜひ動画でご視聴ください!


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