学びの多様化学校はやめたほうがいい?費用・転籍・授業内容など選ぶ前に知っておきたい注意点を解説

結論(早見):学びの多様化学校は、不登校の子どもに配慮した特別な教育課程を組める公的な学校(一条校)です。全国で増えており、素敵な先生や学校があるのも事実。一方でタツロー校長は、「学校に合わなかった子に、少し薄めた学校の学びを続けてもらう」構造になりやすい点に注意を促しています。検討する場合は、必ず見学に行き、「この先生の前なら自分を出せる」とお子さん自身が思えるかを確かめるのがおすすめです。

「学びの多様化学校が全国で増えているらしい。うちの子にも合うのだろうか」——不登校の選択肢を調べる中で、こうした疑問を持つ保護者が増えています。文部科学省の調査では、令和6年度の小・中学校の不登校児童生徒数は全国で約35万4千人と過去最多を更新しました。学校に行きづらい子が増える中で、公的な「もう一つの学校」への期待が高まっているのは自然な流れです。

そこで本記事では、「学びの多様化学校」について、制度の成り立ちから通い方、そして知っておきたい注意点までをじっくり解説します。語るのは、オルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の星野達郎(タツロー校長)。元公立小学校の教員として学校現場を知り、いまは民間で教育を作る立場から、本音で語ってもらいました。

【読む前にお伝えしたいこと】本記事の評価は、あくまでタツロー校長個人の見解です。学びの多様化学校の中には、強い思いを持って運営されている素敵な学校や先生がいることも前提としています。すべての学校に当てはまる話ではありません。

星野 達郎
星野 達郎 Tatsuro Hoshino
株式会社NIJIN 代表取締役 / NIJINアカデミー 校長

全国900名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長を務める傍ら、2つの教師団体を主宰。これまで累計1,200名以上の教員向けに研修を実施し、学校の中と外、両面から教育課題の解決に取り組む。

その独自の教育実践はNHKやテレビ朝日など多くのメディアで特集され、「青年版国民栄誉賞」や「内閣総理大臣奨励賞」を受賞するなど、各方面から高く評価されている。

確かな実績と熱い教育信念を持つ一方で、普段は生徒たちから気さくにいじられる「愛されキャラ」の校長として、日々子どもたちと本音で向き合っている。

目次

学びの多様化学校とは?不登校特例校との違い

学びの多様化学校は、不登校の児童生徒の実態に配慮して、学習指導要領などの基準によらない特別な教育課程を組むことが認められた学校です。もともとは2005年の学校教育法施行規則の改正で「不登校特例校」として創設された制度で、2023年8月に現在の名称へ変わりました。名称は、全国の該当校の児童生徒や教職員から募集した案をもとに、より子どもの目線に立ったものとして決まっています(参考:リセマム「不登校特例校の新名称『学びの多様化学校』に決定」、文部科学省「不登校対策推進本部(第2回)」)。この動きは、国が不登校対策としてまとめた「COCOLOプラン」の一環として進められています。

学びの多様化学校のポイント

全国84校
公立59校・私立25校
(2026年8月時点)
公立は「転籍」
在籍する学校を移す形
私立も一条校
修学支援金の対象
国の目標は300校
最終的な設置目標

校数や制度は変わる可能性があります。最新情報は各自治体・文部科学省の公式情報でご確認ください。

設置数は急速に増えています。文部科学省の資料では、令和5年2月に21校だった学びの多様化学校は、令和6年8月には35校になったと報告されています(文部科学省「不登校対策推進本部(第4回)」)。国は、2027年度までにすべての都道府県と政令市に少なくとも1校の設置を目指し、最終的には全国300校を掲げています(参考:教育新聞「学びの多様化学校(不登校特例校)とは?」)。設置校の一覧は文部科学省「学びの多様化学校の設置者一覧」で確認できます。

設置の形にもいくつか種類があり、学校全体が対象の「本校型」、既存の学校の一部が分かれた「分校型」「分教室型」、学校内の一部のコースだけが対象の「コース指定型」があります(参考:スララ「学びの多様化学校とは?特徴・課題・実践事例」)。たとえば千葉県では、浦安市が県内初となる「浦安中学校分教室(UMI)」を2025年4月に開校しました(浦安市公式)。なお、校数は着実に増えている一方で、設置が1校もない県も残っており、「通える範囲にそもそもない」という家庭も少なくありません。くわしい校数や地域別の状況は、学びの多様化学校とは?全国の一覧・費用・転入の流れでまとめています。

通い方と費用:公立は「転籍」、私立は修学支援金

公立の学びの多様化学校に通う場合は、現在の学校に籍を置いたまま通うのではなく、転校(転籍)する形になります。たとえば第一中学校に在籍していた子が通うなら、籍が学びの多様化学校に移ります。

私立の学びの多様化学校も学校教育法第一条に定められた「一条校」にあたります。高校段階の私立校であれば、世帯年収などの要件を満たすことで高等学校等就学支援金の対象になります。タツロー校長によると、学費が年間100万円ほど(月約10万円)かかる学校でも、支援金によって実質数万円で通えるところが多いそうです。ただし、支援金が使えるのは高校段階で、小中学校段階の費用や補助は学校や自治体によって異なります。高額な学校もあるため、費用は必ず事前に確認してください。

また、通える学校がまだ少ないぶん、希望者が多い学校では選考が行われることもあります(参考:教育新聞「第7回 学びの多様化学校」)。「通いたいと思っても、すぐに入れるとは限らない」ことも知っておきたいポイントです。

タツロー校長が、あまり好きではない理由

タツロー校長

「正直に言うと、私は学びの多様化学校があまり好きではありません。そもそも学びは多様なものなのに、わざわざ『学びの多様化学校』と名づけて分けるなら、普通の学校は画一的なのか、多様ではないのかという話になってしまいますよね。」

制度の出発点にも、タツロー校長は違和感を持っています。「不登校の子のために配慮した教育課程」という考え方の裏には、大人の側から見て、その子を「足りていない」「基準に達していない」と測ってしまう視点があるのではないか、という疑問です。

タツロー校長

「元気がない、無気力だ、社会不適合だ、かわいそうな子だ。そうやって大人の視点で評価して、だからカリキュラムを柔軟にしてあげよう、場所を作ってあげよう、という発想。私が好きになれないタイプの考え方なんです。」

そのうえで、具体的に挙げているのが次の3つの理由です。

理由①:人事異動は、普通の学校と同じ

公立の学校の先生は地方公務員で、人事異動によって配属が決まります。学びの多様化学校に配属される先生も、これまで普通の学校で教えてきた先生であることが多く、指導書に基づいて「本時の目標」を達成するという学校文化が、色濃く残りやすいといいます。

タツロー校長

「組織は人です。人が変わらなければ、文化も変わりません。私の知っている先生も学びの多様化学校に異動していますが、やはり学校の先生なんです。指導する、単元をしっかりやる、という意識が根づいている。だから私には、シンプルに単純化された『ジェネリック版の学校』に見えてしまうんです。」

先生の入れ替わりが早い点も見逃せません。長くても6〜8年、校長は1〜3年で交代することも多く、せっかく相性の良い先生や校長と出会えても、ずっと続くとは限らないのです。もともと普通の学校の先生や校長を務めていた人が着任すれば、どうしても普通の学校に近づきやすい、というのがタツロー校長の見立てです。

理由②:学習指導要領を10〜30%削減した内容

一条校である以上、学習指導要領はカバーする必要があります。そのうえで、不登校に配慮した教育課程として、内容や時間数を10〜30%ほど圧縮することが認められています(学習指導要領に縛られない教育活動が可能な点は、教育新聞の解説でも触れられています)。100の内容を90や70にして提供するイメージで、内容そのものを減らす学校もあれば、内容は同じでも進め方や時間を変えて圧縮する学校もあります。

登校時間を8時から9時半に遅らせたり、オンラインで受けてもよいことにしたりと、一見すると負担が軽くなり、朝が苦手な子やオンラインで受けたい子には良さそうに見えます。しかしタツロー校長は、その中身に目を向けてほしいと言います。

タツロー校長

「たとえるなら、音楽が得意な子に『サッカーは苦手でも、練習を少し減らしてあげるから、君もサッカーをやろうね』と言っているようなものです。苦手なことを、負担を減らしながら続けさせる。苦手なことをやらせ続けるのは、虐待や拷問に近いとすら思ってしまうんです。」

理由③:オンライン対応は、受動的になりやすい

オンラインで授業を受けられる学校もあります。しかしタツロー校長の見立てでは、実態は、先生が指導書どおりに行う授業を、画面越しに視聴する形が中心になりがちです。少人数で対面で受ける子もいれば、その様子を見ているオンラインの子もいる、というイメージで、予備校の映像授業に近いといいます。

NIJINアカデミーのように、オンライン上で子ども同士が対話しながら進めていく教育は、まだ珍しい存在です。タツロー校長によれば、オーストラリアのビクトリア州やシリコンバレー、ケンブリッジなど、日本より教育水準が高いとされる地域の教育者に見せても、「こんなにコミュニケーションするのか」と驚かれるそうです。

タツロー校長

「普通の公務員の授業を黙って聞いているだけなら、YouTubeやNetflixで一流の表現者や役者の演技を見た方が、よっぽどマシだと思ってしまいます。受動的に受け続けて、その子の個性が花開くかというと、そんなことは絶対にありえない。つまらない教育システムだと思うんです。」

根本にあるのは「土俵を変える」という発想

3つの理由の根っこにあるのは、「既存の土俵のまま戦わせる」という発想への違和感です。

タツロー校長

「相撲の土俵で私とスタッフが戦ったら、私が勝ちますよね。体格が違うのだから当然です。それなら体重をそろえるか、土俵やゲームそのものを変えようと私は考えます。起業家ですから、構造そのものを変えたいんです。」

タツロー校長は、学び方と評価のあり方を、次のような対比で整理しています。

観点学校(単一的評価)複線的評価(NIJINの考え方)
集団同じ年齢・同じ地域の子ども異なる年代・全国や世界から集まる仲間
内容・方法同じ内容を、同じ方法で学ぶみんな違う内容・違う方法で、協力し合って学ぶ
評価5教科など、単一の基準で評価いろいろな評価のされ方ができる
前提本時の目標を達成するその子の主体を約束する

学びの多様化学校は、この左側の枠組みの中で、基準を少し薄めて戦わせる仕組みに見える——それが、タツロー校長が「もったいない」と感じる理由です。偏差値やテストの点数では測れない力については、偏差値で判断するのは古い?タツロー校長が語る「真の学力」もあわせてご覧ください。

「出る杭」が評価される場所で、子どもは伸びる

学校に合わない子の中には、頭の回転が速い、自分で表現するのが好き、といった特性を持つ子が少なくありません。たとえばNIJINアカデミーには、8歳でイラストを描き、ホームページを作り、グッズを制作してSNSで発信し、自分で売上を立てている子がいます。

タツロー校長

「ああいう子は、学校にいたら浮いてしまいますよね。『まだ習っていないから先取りしないで』『授業中にそんなに自分を表現しないで』『靴下は白』『髪型はこれ』と、出る杭は打たれがちです。でも、自分を表現して誰かが幸せになっているなら、それはものすごく良いことなんです。」

子どもの成長曲線も一人ひとり違います。早熟な子もいれば、大器晩成の子もいる。勉強は得意でなくても、仲間思いで、人の気持ちが分かり、機転が利くリーダー系の子もいます。そうした子は、将来、人の力を集めて大きなことを成し遂げることがあります。それぞれが違う方法で頑張る場所だからこそ、尖った存在も認められやすくなる、というのがタツロー校長の考えです。

教員時代、授業研究で「本時の目標」を軸に授業を磨く文化に身を置いていたタツロー校長は、いまは「本時の目標」よりも「その子の主体を約束すること」を教育の中心に置いています。文部科学省型の学び方が合う子もいれば、そうでない子もいて、それは運動が合う子もいれば音楽が合う子もいるのと同じだ、と語ります。

それでも検討するなら、見学で確かめたいこと

ここまで厳しめの見方を紹介してきましたが、タツロー校長は学びの多様化学校をすべて否定しているわけではありません。わらにもすがる思いで通っている家庭がたくさんあること、強い思いを持って運営している校長や先生がいることも知っているといいます。実際、NIJINアカデミーには、学びの多様化学校とNIJINアカデミーの両方に通っている生徒もいます。

タツロー校長

「見学に行って、素敵な先生だな、馬が合うな、この先生の前なら自分を出せる、我が子も行きたいと言う。そうなったら、通うのは全然ありな選択肢の一つだと思います。」

検討する際に、確かめておきたいポイントを整理します。

  • 必ず見学に行く:先生と話して、お子さん自身が「ここなら自分を出せそう」と感じられるかを確かめる
  • 先生の異動を前提にする:担当の先生や校長が数年で変わる可能性を知ったうえで、学校全体の方針を見る
  • 授業の中身を確認する:オンライン授業は対話型か、視聴中心か。子どもが能動的に関われる場面があるか
  • カリキュラムの圧縮の仕方を聞く:内容を削っているのか、時間や進め方を変えているのか。その子に合う形か
  • 費用を確認する:私立は学校によって幅がある。修学支援金を含めた実質の負担額を聞く
  • 通える範囲かどうか:設置校がまだ限られるため、文部科学省の設置者一覧で所在地を調べ、通学の負担や転籍の手続きも含めて確認する

ほかにも、フリースクールや民間のオルタナティブスクール、オンラインスクールなど、選択肢は一つではありません。費用や出席扱いの考え方はフリースクールとは?費用・種類・出席扱いと全国の探し方、公的な無料の支援先については教育支援センター(適応指導教室)とは?で解説しています。

「才能がないから標準的に」と、親が決めないでほしい

「うちの子には特別な才能がないから、とりあえず確率の高い、標準的な学びをさせておきたい」——そう考える気持ちは、タツロー校長も「分かる」と言います。学校的な学びを、たとえジェネリック版でもやってほしいと願う家庭があるのは自然なことです。それでも、あえて伝えたいことがあります。

タツロー校長

「その子の才能がないと、親が決めないでほしいんです。すべての子に才能があります。別に秀でる必要はなくて、自分らしく誰かを幸せにすることが人生だから。自分を消すような、コモディティ化する教育を受けさせるのは、絶対にやめたほうがいいと思っています。」

タツロー校長は、学生時代の仲間を見ていても、「とりあえずみんながやっているから」という理由で選んだ人より、「自分はどう生きたいか」から意思決定した人の方が、ずっと魅力的に映ると言います。自分で選んだ人、自分でつくった人は、いくつになっても素敵だ、と。

自身も、もし学校という既存のシステムに合わなかった自分が、配慮されて、そのシステムに当てはめられて育っていたら、今の自分はいなかったかもしれないと振り返ります。だからこそ、「伝統的なシステムに合わないことは、未来をつくる宝」だと考えているそうです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 学びの多様化学校と不登校特例校は何が違いますか? A. 同じ制度です。2005年に創設された「不登校特例校」が、2023年8月に「学びの多様化学校」へ名称変更されました(文部科学省の発表)。

Q2. 学びの多様化学校は全国にいくつありますか? A. 2026年8月時点で全国84校(公立59校・私立25校)とされています。増加傾向にあり、最新の校数や所在地は文部科学省の設置者一覧でご確認ください。

Q3. 住んでいる地域に学びの多様化学校がない場合はどうすればいいですか? A. 設置が1校もない県もあります。通える範囲に学校がない場合は、フリースクールや教育支援センター、オンラインスクールなど、他の選択肢もあわせて検討してみてください。

Q4. 公立の学びの多様化学校に通うには、どんな手続きが必要ですか? A. 在籍している学校から学びの多様化学校へ「転籍」する形になります。具体的な手続きは自治体ごとに異なるため、在籍校や教育委員会にご相談ください。

Q5. 費用はどのくらいかかりますか? A. 公立は一般の公立学校と同様です。私立は学校によって異なり、年間100万円ほどかかる学校もありますが、高校段階では高等学校等就学支援金により実質数万円で通えるところも多いとされています。小中学校段階や個別の金額は、各校・自治体にご確認ください。

Q6. 誰でも入学できますか? A. 学校によっては希望者が多く、選考が行われることがあります。入学条件や手続きは学校ごとに異なるため、見学や問い合わせの際に確認しましょう。

Q7. 学びの多様化学校のデメリットは何ですか? A. タツロー校長は、先生の人事異動で学校文化が普通の学校と変わりにくいこと、学習指導要領を一部圧縮しただけで学び方が受動的になりやすいことを挙げています。学校ごとに内容は大きく異なるため、見学で実際の様子を確かめることをおすすめします。

Q8. 学びの多様化学校とNIJINアカデミーを併用できますか? A. 併用している生徒もいます。在籍校の考え方や自治体によって扱いが異なるため、事前にご相談ください。NIJINアカデミーの学びは公式サイト、近くの教室は教室検索ページで確認できます。

まとめ:選ぶ前に、「どんな土俵か」を知っておく

学びの多様化学校は、不登校の子どもに配慮した公的な選択肢として、全国で増えています。素敵な先生や学校がある一方で、普通の学校の文化や学び方が色濃く残る側面があることも、保護者として知っておいて損はありません。

タツロー校長が伝えたかったのは、「通わないほうがいい」という結論ではなく、「同じ土俵の上で、薄めた基準で戦うことになるかもしれない」という構造を知ったうえで選んでほしいということです。そして、その土俵に合わなかったことは、決して欠点ではなく、その子らしい個性の表れかもしれません。

タツロー校長

「最終的に決めるのは、保護者であり、その子自身。それが教育だと思っています。そのうえで、私の意見としては、既存のシステムに合わないことは未来をつくる宝だから、色を薄めた赤に染めようとするのは、めちゃくちゃもったいない。そう思っています。」

大切なのは、「どこが正解か」ではなく、お子さんが自分らしくいられる場所を、一緒に選ぶこと。制度の中身を知ったうえで、複数の選択肢を見比べてみてください。NIJINアカデミーに興味を持たれた方は、無料のオンライン相談もご利用いただけます。

▶ 動画でより深く:YouTube(フル解説)

さらに、星野達郎校長が今回のテーマを動画でより熱く、詳細に解説しています。
「学び方と評価の4象限」の図解や、スタッフとのやりとりなど、記事では紹介しきれない内容はぜひ動画でご視聴ください!


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