夏休みが明けると、1学期には見られなかった変化を見せる児童生徒が増えます。「なんとなく元気がない」「保健室に来る回数が増えた」——スクールカウンセラー(SC)はこうした小さなサインを、面談やアセスメントを通じて早期にキャッチできる立場にあります。
本記事では、夏休み明けに不登校が増える心理的背景を踏まえながら、SCが夏休み前後の面談で確認しておきたいチェックリスト、発達特性やグレーゾーンの視点を加えたアセスメントの考え方、教員・保護者との連携のポイントを2026年最新情報で整理します。
写真:Vitaly Gariev(Pexels)
📝 この記事でわかること
- 夏休み明けに不登校が増える心理的な背景
- 夏休み前後の面談で確認したいチェックリスト
- 発達特性・グレーゾーンを踏まえたアセスメントの視点
- 教員・保護者との情報共有のコツ
- 学校外資源につなぐタイミングの見極め方
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結論として、夏休み明けの不登校増加には、生活リズムの崩れ・学校生活への予期不安・自己評価の低下が複合的に関わっています。
長期休業中は評価やクラスでの立ち位置から離れられる一方、休みが終わりに近づくにつれて「また同じ状況に戻る」という予期不安が強まります。特に1学期にいじめや対人関係のトラブル、学習面でのつまずきがあった児童生徒は、休み明けにその不安が再燃しやすい傾向があります。文部科学省の調査でも、長期休業明けに欠席率が上昇する傾向が繰り返し確認されています(参考:文部科学省「不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」)。
SCとしては、この時期の変化を「甘え」や「一時的なもの」と捉えず、本人なりの適応努力の限界のサインとして受け止める視点が重要です。
夏休み前にSCが準備しておきたいこと
結論として、夏休みに入る前の面談で、「気になる子」の情報を担任と共有し、休み中・休み明けの動き方を決めておくことが、初動の速さを左右します。
- 1学期の欠席・遅刻傾向の確認:保健室来室の頻度、教室に入りづらそうな様子があった児童生徒をリストアップする
- 本人・保護者との事前面談:不安が強い児童生徒には、夏休み前に一度面談を設定し、休み中の過ごし方や連絡手段を確認しておく
- 担任との引き継ぎメモ作成:短期目標(2週間)・中期目標(1〜2か月)を分けて記録し、休み明けに担任と共有できる状態にしておく
面談で見抜きたい前兆サイン|チェックリスト
結論として、行き渋りや不登校の前兆は、身体症状・言動の変化・生活リズムの3方向から観察すると見抜きやすくなります。
- 朝になると頭痛・腹痛・倦怠感などの身体症状を訴えることが増えた
- 「学校に行きたくない」とはっきり言わないが、支度が極端に遅くなっている
- 好きだった活動(部活・行事など)への興味を急に示さなくなった
- 友人関係について話す内容が減った、あるいは特定の話題を避けるようになった
- 睡眠時間や起床時間が1学期と比べて大きく崩れている
- 保護者から見て、休み中の様子と登校前の様子に落差がある
- SNSやゲームの利用時間・傾向に急な変化がある
これらは単独ではなく、複数が重なったときにリスクが高まる傾向があります。1つのサインだけで判断せず、担任からの情報と合わせて総合的にアセスメントすることが大切です。
発達特性・グレーゾーンの視点を加えたアセスメント
結論として、行き渋りの背景に発達特性やグレーゾーンの特性が関わっているケースでは、環境調整の視点を面談に加える必要があります。
写真:World Sikh Organization of Canada(Pexels)
- 感覚過敏の可能性:教室の音・光・給食のにおいなど、感覚的な負担が行き渋りの引き金になっていないかを確認する
- 見通しの持ちにくさ:長期休業明けの時間割変更や新しい行事予定が、本人にとって強い不安要素になっていないかを聞き取る
- 診断の有無にこだわらない:診断名がついていない「グレーゾーン」の児童生徒でも、環境調整によって負担が軽減される場合が多くあります
発達特性が疑われる場合も、SCが単独で診断的な判断を下すのではなく、担任・特別支援コーディネーター・保護者と情報を持ち寄り、環境面でできる工夫を一緒に検討する姿勢が重要です。
教員・保護者との情報共有のポイント
結論として、SCが得た情報は、「誰が」「いつ」「どう動くか」が具体的にわかる形で共有することで初めて対応につながります。
共有時に意識したいこと
面談内容をそのまま伝えるのではなく、「本人の状態」「考えられる背景」「次にとるべき行動」を分けて整理して伝えると、担任や管理職が動きやすくなります。守秘義務との兼ね合いについては、事前に本人・保護者へどこまで共有するかの同意を得ておくことも欠かせません。
保護者との面談では、「学校に来られるかどうか」だけを話題にするのではなく、家庭での様子や本人の言葉に耳を傾け、保護者自身の不安にも寄り添う姿勢が、信頼関係の構築につながります。
夏休み明け1週間の動き方
結論として、始業式から1週間は、「様子を見る」のではなく「積極的に確認しにいく」姿勢が予防的に機能します。
- 始業式に登校できなかった児童生徒については、担任と連携し早期に家庭連絡・面談の予定を組む
- 1学期に気になっていた児童生徒には、こちらから声をかける機会を意図的に作る
- 保健室来室が急増した児童生徒については、養護教諭と情報を突き合わせる
学校外資源につなぐタイミング
結論として、校内での対応に限界を感じた時点で、教育支援センター・学びの多様化学校・医療機関・フリースクールなど、校外資源につなぐ判断を先送りしないことが重要です。
「もう少し様子を見てから」という判断が続くと、本人の自己肯定感がさらに下がり、回復に時間がかかるケースもあります。校外資源の情報は日頃から整理しておき、必要なタイミングで迷わず提案できるようにしておきましょう(参考:全国のフリースクールを探す|にじいろ)。
動画で見る|【夏休み終了】夏休み明けに不登校が増える理由と対策について解説します!
この記事の内容を確かめるための一次資料
「怠けている」ように見える状態の裏に、医学的な背景があることは珍しくありません。とくに起立性調節障害は思春期に多く、朝起きられないことが本人の意思とは無関係に起きます。判断を家庭だけで抱えず、医療の一次情報にあたってください。
下の資料はすべて国・自治体・公的機関が出している一次情報です。学校や教育委員会と話すときは、この原文を示しながら相談すると、担当者によって対応が変わることを避けられます。
| 資料 | 何がわかるか |
|---|---|
| 厚生労働省「こころの健康」 | 子どもと保護者のメンタルヘルスの基礎情報 |
| 厚生労働省「こころの耳」 | 相談窓口とセルフチェック |
| 日本小児心身医学会 | 起立性調節障害など、子どもの心身症に関する学会情報 |
| 文部科学省「令和6年度 問題行動・不登校等調査」 | 小中の不登校353,970人。全国の最新の実数 |
| 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」 | 「登校という結果のみを目標にしない」という国の方針 |
| 同 別記1(学校外の施設で相談・指導を受ける場合) | 教育支援センター等に通った日を出席扱いにする要件 |
| 同 別記2(自宅でICT等を活用した学習) | 自宅学習を出席扱いにする7つの要件 |
| 文部科学省「欠席中に行った学習の成果に係る成績評価」 | 2024年8月の改正。学習成果を成績に反映できる3要件 |
| 文部科学省「COCOLOプラン」 | 誰一人取り残されない学びの保障に向けた国の対策 |
| 文部科学省「不登校に関する地元の相談窓口」 | 全国1,045市区町村の公式相談窓口 |
| 教育機会確保法(e-Gov法令検索) | 第13条が「休養の必要性」を条文で認めている |
| こども家庭庁「子育て支援」 | 子育て世帯が使える支援制度の全体像 |
| 国立教育政策研究所「生徒指導リーフ」 | 研究にもとづく生徒指導の考え方をまとめた資料 |
学校に相談するときの進め方
① 支援の目標をすり合わせる
「令和元年10月25日の通知にあるとおり、登校という結果だけを目標にするのではなく、社会的な自立を目指す形で相談させてください」——最初にここを共有しておくと、その後の話が噛み合いやすくなります。
② 具体的な場所を挙げる
「教育支援センターの利用を考えています」「オンラインのスクールを検討しています」と場所を具体的に伝えます。抽象的な相談より判断してもらいやすくなります。
③ 出席扱いの要件を一緒に確認する
「別記1(通所)/別記2(自宅ICT学習)の要件を満たすために、こちらで何を用意すればよいでしょうか」と聞きます。「認めてください」ではなく「何を用意すればよいか」のほうが通ります。
④ 決めたことを記録に残す
面談のあとに「本日確認したこと」をメールなどで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター(全国1,045市区町村の窓口一覧)
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
家庭でいまできること
制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
学校に伝えるときの文例
言いたいことは決まっていても、いざ書こうとすると手が止まる——という声をよく聞きます。そのまま使える形にしました。丁寧すぎる必要はありません。事実と、してほしいことが伝われば十分です。
① しばらく休むことを伝える
本人の体調と気持ちの状態から、しばらく学校をお休みさせていただきます。
毎朝のご連絡が負担になっているため、こちらから連絡がない日は欠席としてお取り扱いいただけますでしょうか。状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。
毎朝の欠席連絡は、家庭にとっても学校にとっても負担です。先にこの一文で合意しておくと、朝の消耗がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
② 配慮をお願いする
つきましては、登校できた日は保健室や別室で過ごさせていただくことは可能でしょうか。
また、給食の時間だけ別室にする、掃除の時間は無理をさせない、といった形でもかまいません。
本人が続けられる形を一緒に考えていただけると助かります。
「配慮してください」だけでは学校も動きにくいので、場面と具体的な対処をセットで書くのがコツです。診断名は必須ではありません。
③ 出席扱いについて相談する
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)に、学校外の施設で相談・指導を受けた場合や、自宅でICT等を活用した学習を行った場合の指導要録上の出席扱いについて定めがあると伺いました。
本校ではどのような運用になっていますでしょうか。また、要件を満たすために家庭で用意すべきものがあれば教えてください。
ポイントは「認めてください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞くことです。学校側も判断材料を求めています。要件の全文は教育支援センターとはの記事に原文どおり掲載しています。
④ 面談のあとに送る確認メール
確認させていただいた内容を念のためお送りします。
・当面は◯◯(別室/午後のみ など)で対応いただく
・◯◯(教育支援センター等)への通所を検討し、決まり次第ご連絡する
・出席の取り扱いについては、◯月◯日までにご回答いただく
認識に相違がありましたらお知らせください。
口頭の合意は、担任が変わると消えてしまいます。短くていいので記録に残しておくと、翌年度も引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
伝える相手の順番
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 担任と話が噛み合いません
A. 「認めてください」ではなく「要件を満たすために何を用意すればよいですか」と聞き方を変えると通りやすくなります。それでも動かない場合は、学年主任・管理職・市区町村の教育委員会(教育相談室)へ相談先を上げてください。
Q. 毎日の欠席連絡がつらいです
A. 連絡方法は相談できます。「しばらく休むので、こちらから連絡がない日は欠席とみなしてください」と最初に合意しておくと、毎朝の負担がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
Q. 保健室登校や別室登校は出席になりますか?
A. なります。校内で過ごした時間は在籍校の判断で出席として扱われるのが一般的です。保健室登校についてもあわせてご覧ください。
Q. 学習の遅れが心配です
A. 学校外での学習も、計画や内容が教育課程に照らし適切と判断されれば成績評価に反映できることが2024年8月の制度改正で明確になりました。詳しくは教育機会確保法の記事にまとめています。
Q. 面談で何を話せばいいですか?
A. ①いまの状態、②してほしい配慮を具体的に、③出席扱いの取り扱い、の3点に絞ると進みます。面談後に「本日確認したこと」をメールで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
本人が「大丈夫」としか言わない場合、どう面談を進めればよいですか?
言葉での表現を無理に引き出そうとせず、行動面の変化(表情、姿勢、話す速度など)から状態を推測することも有効です。安心できる関係性を少しずつ築きながら、話したくなったときに話せる場であり続けることを優先しましょう。
担任と保護者の見立てが食い違う場合、SCとしてどう調整すればよいですか?
どちらが正しいかを決めるのではなく、それぞれが見ている場面が異なることを前提に、情報を持ち寄る場を設定することが有効です。SCは中立的な立場から、両者の情報を整理して共有する役割を担えます。
発達特性が疑われるが保護者がまだ受け止められていない場合、どう伝えればよいですか?
診断や特性という言葉を急いで使うのではなく、「本人が困っていること」「環境を調整すると楽になる可能性があること」から伝え始めると、保護者も受け止めやすくなります。段階を踏んで、専門機関の情報を提供していく姿勢が大切です。
まとめ|「小さな違和感」を逃さない視点を
結論として、夏休み明けの不登校予防でSCに求められるのは、身体症状・言動・生活リズムの小さな変化を見逃さず、担任・保護者と情報を持ち寄って早期に動くことです。
発達特性やグレーゾーンの視点を面談に加えることで、これまで見過ごされてきたサインに気づける場合もあります。校内だけで抱え込まず、教育支援センターや学びの多様化学校、フリースクールなど校外資源につなぐタイミングを逃さないようにしましょう。

