二学期になって行き渋りが増えたのは、夏休みでいったん緩んだ心と体を、学校の速いペースへ戻す負荷が大きいからかもしれません。
特に発達障害のある子は、生活リズムの切り替え、予定の変化、感覚刺激、人間関係、学習の難しさが重なると、「行きたくない」「お腹が痛い」「起きられない」といった形で限界が表れることがあります。
大切なのは、朝に説得して登校させることだけではありません。何が負担になっているかを見つけ、二学期の過ごし方そのものを調整することです。
夏休み明け・二学期に「学校に行きたくない」が増えるのはなぜ?
「行き渋り」は医学的な診断名ではありません。一般には、学校へ行くことに抵抗を示す状態を指します。
例えば、次のような姿です。
- 朝になると「学校に行きたくない」と言う
- 起こしても布団から出られない
- 登校前に腹痛、頭痛、吐き気を訴える
- 着替えや朝食の途中で動けなくなる
- 玄関や校門の前で泣く、固まる
- 月曜日や特定の授業がある日だけ行けない
- 遅刻や早退が増える
- 学校へは行けても、帰宅後に荒れる、眠り込む
夏休み明けにこうした変化が見られても、それだけで発達障害と判断することはできません。いじめ、学習のつまずき、友人関係、睡眠不足、体調不良、家庭環境の変化など、さまざまな理由が考えられます。
また、すべての子どもが二学期に行き渋るわけでもありません。「二学期だから仕方がない」と決めつけず、その子にとって何が変わったのかを見ることが大切です。
発達障害の子が二学期に行き渋る6つの原因
低学年で、行き渋りの中心が「保護者と離れること」にある場合は、母子分離不安とは?年齢別の特徴と対応もあわせてご覧ください。
1.発達障害の子は夏休みから学校生活への切り替えに疲れやすい
夏休みは、起きる時間、着替える時間、食事、外出、人と関わる量を比較的自分のペースに合わせられます。しかし二学期が始まると、決まった時間に起き、準備し、家を出て、集団の流れに合わせる生活へ一気に戻ります。
ASDのある子は、慣れた予定や手順の変更に強い不安を感じることがあります。ADHDのある子は、眠気や気持ちを切り替えながら複数の準備を進めること、時間を見積もって動くことに負荷がかかる場合があります。
「夏休み中は元気だったのに、学校が始まったら急に行けなくなった」というときは、休み中に問題がなかったのではなく、自分に合ったペースなら力を発揮できていた可能性があります。
2.夏休み明けに睡眠リズムが戻らず、朝起きられない
夏休み中に就寝時刻と起床時刻が遅くなると、始業日に合わせて急に早起きしようとしても、体内時計はすぐには戻りません。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生は9〜12時間、中学生・高校生は8〜10時間を参考に、必要な睡眠時間を確保することが勧められています。睡眠時間には個人差がありますが、朝起きられない子を「やる気がない」と捉える前に、就寝時刻、夜中に目が覚めていないか、起きたときに疲れが残っていないかを確認しましょう。
夜更かしだけが原因とは限りません。学校への不安が強く、前日の夜から眠れなくなっていることもあります。
3.二学期の運動会・行事・予定変更が不安を高める
二学期には、運動会、文化祭、校外学習、合唱、発表、係活動などが入る学校もあります。通常授業とは違う時間割、練習場所、服装、集団、音、待ち時間が増えるため、見通しを持つことが苦手な子にとって大きな負担になります。
「運動会が嫌」と言葉にできる子ばかりではありません。本人にも理由が分からないまま、行事の話が出た頃から腹痛や行き渋りが増えることがあります。
予定表や写真で先の流れを見えるようにする方法は、予測可能性を高める助けになります。自閉スペクトラム症のある人への視覚的支援を扱った研究でも、視覚的な情報は、不安の軽減やコミュニケーション、生活への参加を支える方法として位置づけられています。ただし、予定を見せれば必ず登校できるわけではなく、負荷そのものを減らす調整と組み合わせる必要があります。
4.二学期は授業が難しくなり、発達障害の学習のつまずきが表れやすい
二学期は、一学期に学んだ内容を前提に授業が進みます。文章問題が増える、漢字が難しくなる、ノートに書く量が増える、複数の手順を覚えて作業するといった変化により、それまで見えにくかった困難が表れることがあります。
読み書きに困難がある子、ワーキングメモリに負荷がかかりやすい子、手先の不器用さがある子は、理解していても授業の速度についていけない場合があります。
「勉強が嫌い」ではなく、毎時間「できないかもしれない」「また遅れるかもしれない」と緊張している可能性があります。行き渋りが時間割によって変わる場合は、教科、板書量、発表、テスト、体育、給食など、場面を分けて確認してください。
5.教室の音・光・暑さで感覚過敏の疲れがたまる
夏休み中は、苦手な音や光、人混みを避けられていた子も、学校が始まると長時間の感覚刺激にさらされます。
- 教室の話し声や椅子を動かす音
- チャイムや放送、行事練習の音
- 蛍光灯の光や掲示物の多さ
- 人との距離の近さ
- 制服、帽子、名札の肌触り
- 残暑の暑さや汗、教室のにおい
その場では我慢できても、一日ごとに疲れが積み重なり、数日後や週末明けに行けなくなることがあります。厚生労働省も発達障害のある人への配慮として、音、肌触り、室温などの感覚面を調整することを挙げています。
6.一学期に頑張りすぎた疲れと不安が二学期に表れる
一学期に問題なく通えていたとしても、本当に余裕があったとは限りません。周囲に合わせるために、分からなくても聞かない、音がつらくても我慢する、休み時間も友達に合わせるといった努力を続けていた可能性があります。
夏休みに緊張がいったん緩んだことで、心と体が「以前と同じ頑張り方には戻れない」と反応することもあります。
海外の研究では、自閉スペクトラム症のある子どもの学校欠席には複数の要因が関わり、なかでも不安が強く関連すること、感覚処理の違いなども欠席の種類によって関連することが報告されています。ただし、これは「発達障害なら行き渋る」という意味ではありません。学校、本人、家庭の要因を個別に見る必要があるということです。
発達障害の子が「学校に行きたくない」と言った朝の対応
1.朝に説得や質問を重ねない
子どもが泣いている、固まっている、腹痛を訴えているときに、登校の必要性を長く説明しても、言葉を受け取れないことがあります。
「行けば楽しいよ」「みんな頑張っているよ」「今日休んだら明日も行けないよ」と説得を重ねるより、まず状態を短く確認します。
- 「お腹と頭、どちらがつらい?」
- 「話すのは今と後、どちらがいい?」
- 「今日は教室、別室、家で休むのどれならできそう?」
- 「先生には大人から伝えるね」
選択肢は二つか三つに絞ります。答えられないときは、無理に理由を言わせなくて大丈夫です。
2.登校か欠席かの二択にしない
毎日、朝から最後まで教室で過ごすことだけを成功にすると、ハードルが高くなります。
学校と相談しながら、次のような段階を用意できます。
- 遅れて登校する
- 好きな授業だけ参加する
- 保健室や別室から始める
- 人の少ない時間に校舎へ入る
- 行事練習は一部だけ参加する
- 給食前や午後から参加する
- 短時間で帰宅する
- 自宅でプリントやオンライン学習に取り組む
大切なのは、少しでも学校へ近づけることではなく、本人が安全を感じながら学びや人とのつながりを保てる形を探すことです。
3.学校を休むと決めたら朝の交渉を終わらせる
休むと決めた後も「やっぱり二時間目から行く?」「給食だけでもどう?」と何度も確認すると、子どもは一日中登校への緊張を抱えます。
学校への連絡は大人が行い、まず心と体を休める時間を確保します。休んだ直後に宿題や反省会を始める必要はありません。落ち着いてから、困っていたことを短く振り返ります。
休息はごほうびでも罰でもありません。国連の子どもの権利条約にも、子どもが自分に関わることについて意見を伝える権利と、休息や遊びの権利が示されています。大人だけで登校方法を決めず、「何ならできそうか」「何は避けたいか」を本人と一緒に考えます。
夏休み明け・二学期の行き渋りを減らす7つの対策
1.二学期の予定を視覚化し、見通しをつくる
一か月分を細かく示すと不安が強くなる子もいるため、まずは一週間程度から始めます。
- 登校する日と休む日
- 行事や時間割変更
- 苦手な授業がある日
- 早退できる時間
- 帰宅後に休める時間
- 楽しみにしている予定
「全部こなす予定表」ではなく、変えられる予定には「変更あり」「参加方法を相談できる」と書いておきます。
2.夏休み明けの生活リズムは少しずつ戻す
寝る時刻だけを急に早めても、眠れないことがあります。まずは起床後にカーテンを開けて光を浴びる、朝食をとる、日中に軽く体を動かすなど、朝から昼の過ごし方を整えます。
就寝時刻は15分から30分ずつ動かし、夜に学校の話し合いを長く続けないようにします。十分に寝ているのに起きられない、立つとめまいや動悸がある、午前中に強い不調が続く場合は、生活習慣だけの問題と決めつけず、小児科などへ相談してください。
3.帰宅後に疲れを回復する「何もしない時間」をつくる
登校できた日は、すぐに学校の話、宿題、習い事を詰め込まず、回復する時間を確保します。
静かな部屋で一人になる、動画を見る、毛布にくるまる、体を動かすなど、落ち着き方は子どもによって異なります。「学校へ行けたのだから宿題もできる」と考えず、残っているエネルギーに合わせます。
4.学校で疲れ切る前に休める環境をつくる
学校では、次のような配慮を相談できます。
- 静かな場所で短く休む
- 休憩カードや合図を使う
- 朝の会に間に合わなくても入室できるようにする
- 行事の予定や変更を早めに伝える
- イヤーマフや帽子などを使う
- 課題や板書の量を減らす
- 発表方法を選べるようにする
- 混雑する移動や給食の時間をずらす
- 安心して話せる先生を決める
限界になってから別室へ移動するのではなく、本人がまだ落ち着いて見える段階で休めることが大切です。
5.登校できたかではなく、子どもにかかった負荷を記録する
一日登校できたかどうかだけで判断すると、無理をしているサインを見落とします。
次の内容を一〜二週間記録すると、負荷が高い条件を見つけやすくなります。
- 行き渋りが始まった時刻
- 前日の睡眠と朝の体調
- その日の時間割や行事
- 登校できた後の学校での様子
- 帰宅後の疲れ、怒り、睡眠
- 休日に回復できているか
- 本人が「嫌だった」「楽だった」と話したこと
6.「学校に行きたくない理由」を選択肢で聞く
「なぜ行きたくないの?」と聞かれても、複数の負担を整理して説明することが難しい子がいます。
「音・勉強・友達・行事ならどれが一番つらい?」「教室・別室・家ならどこが楽?」のように選択肢を使ったり、負担を0〜5の数字で表したりすると伝えやすくなることがあります。
言葉で説明できなくても、腹痛、固まる、泣く、帰宅後に荒れることは重要な情報です。
7.発達障害の子だけでなく、学校の環境も変える
行き渋りを「我慢する力の不足」だけで捉えると、登校練習ばかりになってしまいます。WHOのICF(国際生活機能分類)では、生活上の困難を本人の心身機能だけでなく、活動、参加、周囲の環境との関係から捉えます。
「どうすれば毎日行けるか」だけでなく、「どの時間、場所、活動で負荷が高いか」「何を変えれば参加しやすいか」を考えることが必要です。
二学期の行き渋りを学校に相談するときの伝え方【例文】
学校へは、「朝になると行きたくないと言います」だけでなく、頻度、体の症状、前後の出来事、家庭での回復まで具体的に伝えます。
二学期が始まってから、週3日ほど登校前に腹痛を訴え、玄関で動けなくなることがあります。登校できた日は教室では落ち着いているようですが、帰宅後に2時間ほど眠ったり、ささいなことで泣いたりします。特に行事練習と時間割変更のある日に強く出ています。本人は教室の音と予定が分からないことがつらいと話しています。まず2週間、行事予定を事前に伝えること、朝は別室から始めること、休憩の合図を決めることを試し、家庭での様子も合わせて振り返りたいです。
「学校では元気です」と言われた場合は、学校の見立てを否定するのではなく、「学校で頑張った反動が家庭に出ている可能性も含めて見てほしい」と伝えます。担任だけでなく、養護教諭、スクールカウンセラー、特別支援教育コーディネーターとも情報を共有できると安心です。
二学期の行き渋りが続くときは、オンライン学習・ダブルスクールも選択肢
家庭と学校で調整しても、登校による疲れや不安が強い場合があります。そのときは、「毎日学校へ行く」か「学びをすべて止める」かの二択にしなくてもかまいません。
学校へ行く日、休息を優先する日、自宅から学ぶ日を分ける方法もあります。オンライン学習やフリースクールを併用するときも、予定を増やすことが目的ではありません。一週間全体の負荷を下げながら、本人に合う学びと人とのつながりを残すことが目的です。
文部科学省も、不登校への支援は「学校に登校する」という結果だけを目標にせず、本人と保護者の意思を尊重し、社会的自立を目指すことが必要だと示しています。また、学校外の施設や自宅でのICT学習について、一定の要件のもとで出席扱いにできる仕組みもあります。詳しくは文部科学省の不登校対策・出席扱いに関する案内を確認し、在籍校へ相談してください。
NIJINアカデミーで見える、行き渋りから回復する3つのステップ
私は小児領域の作業療法士として10年以上、またNIJINアカデミー東金校の教室長として子どもたちと関わっています。そこで感じるのは、行き渋りからの回復は、必ずしも「翌日から毎日、朝から学校へ行けるようになること」ではないということです。
家からオンライン空間に入れた。顔を出さずに先生とつながれた。好きな活動だけ参加できた。安心できる友達ができた。こうした小さな変化も、子どもが社会や学びとのつながりを取り戻す大切な一歩です。
1.顔出し・声出しなし、先生との1対1から始める
NIJINアカデミーでは、子どもの状態に合わせて、最初から教室へ入り、みんなの前で話す以外の始め方も選べます。カメラや音声をオフにしたまま見学したり、先生との1対1を中心に過ごしたりする方法があります。
NIJINアカデミーの専任サポートで紹介されている事例では、顔出し・声出しなしから関わり始めた子が、先生と小さな挑戦を重ね、やがてプロジェクトの発表へ進んでいます。大切なのは、発表できた結果だけではなく、本人が安心できる段階から始められたことです。
2.生活リズムと「好き」に合わせて、人とのつながりをつくる
朝に起きられない子へ、毎日同じ時間の参加を求めると、オンライン学習も新たな負担になります。NIJINアカデミーの専任サポートでは、睡眠サイクルが変化する子について、本人と家庭の状態に合わせ、毎週「いつなら会えそうか」を相談して時間を決めている例があります。
また、好きなゲームの話を先生とすることから始め、少しずつメタバース校舎のオープンスペースでほかの子と関わるようになった例もあります。勉強を始める前に、安心できる人と、好きなことを通してつながることが回復の土台になる場合があります。
3.在籍校とオンラインスクールのどちらか一つに決めない
学校へ行ける日がある子も、「通えているのだから支援は必要ない」とは限りません。学校とオンラインスクールを組み合わせ、体調や学びたい内容に合わせて居場所を使い分ける方法もあります。
NIJINアカデミーで紹介されている小学生の事例では、オンライン授業を受けながら、在籍する小学校へ週1回、別室登校しています。本人は、小学校では漢字や算数、NIJINアカデミーではメタバースでの発表など、それぞれの場所の良さを感じています。
学校かオンラインかを大人が決めるのではなく、本人が「今日はどこなら安心して学べるか」を選べることが大切です。
ただし、疲れている日にオンライン授業を詰め込めば、さらに負担が増えることがあります。まず休息を確保し、本人が参加したい時間や活動を一緒に選びましょう。
二学期の行き渋りが続くときの相談・受診の目安
行き渋りは、子どもが負荷を伝える大切なサインです。次のような状態がある場合は、家庭だけで抱えず、学校、スクールカウンセラー、教育支援センター、小児科、発達外来、地域の相談機関などへ早めに相談してください。
- 頭痛、腹痛、吐き気、めまいが続く
- 睡眠や食事が大きく崩れている
- 休日も疲れが取れず、好きなことができない
- 行き渋りの頻度や強さが増している
- 学校の話題だけで強い恐怖や混乱が起きる
- いじめや人間関係のトラブルが疑われる
- 自分や家族を傷つける行動がある
- 「消えたい」「いなくなりたい」などの言葉がある
- 家族だけでは安全を保つことが難しい
急に強い症状が出た場合は、発達特性だけで説明せず、身体の病気や学校での出来事も確認する必要があります。本人や家族に差し迫った危険があるときは、ためらわず緊急機関へ助けを求めてください。
まとめ|二学期の行き渋りは、発達障害の子からの「負荷を見直して」というサイン
二学期になって行き渋りが増えたとき、「夏休みに怠けたから」「休み癖がついたから」と決めつけると、子どもが抱えている負荷を見落としてしまいます。
生活リズム、予定変更、行事、学習、人間関係、感覚刺激など、二学期には複数の変化が重なります。発達障害のある子は、その変化に適応するため、周囲から見える以上のエネルギーを使っていることがあります。
大切なのは、昨日までと同じように登校させることではありません。
今日の子どもが、どのくらいなら安心して参加できるかを一緒に探すことです。
行き渋りを子どもだけの問題にせず、家庭、学校、学び方、休み方を調整するきっかけとして捉えていきましょう。

