結論:「行きたくない」は説得の合図ではなく、休ませて聞く合図
不登校の小中学生は35万3,970人(2024年度)で過去最多。12年連続の増加です。この数字を受けて、元小学校教員で帝京平成大学准教授の鈴木邦明氏は、リセマムの相談Q&Aで「子どもが学校に行くのは当たり前ではない」という意識を学校側が持つべきだと提起しました。
この記事は、9月4日に公開されたそのQ&Aと文部科学省の最新調査をもとに、数字が示していることを整理したうえで、「学校に行きたくない」と言われたときの親の対応を、最初の朝から順に書きます。
「学校に行くのは当たり前ではない」——リセマムのQ&Aが提起したこと
リセマムの連載「相談対応Q&A」第296回のテーマは「学校に行きたくない」でした。回答したのは、神奈川県横浜市と埼玉県深谷市の公立小学校に22年間勤め、2018年から教員養成に携わる鈴木邦明氏(帝京平成大学人文社会学部児童学科 准教授)です。
鈴木氏は冒頭で、不登校が約35万人で過去最多であることを示したうえで、社会状況の変化により「学校に行かない」という選択がしやすい環境が整ってきたと指摘し、「子どもが学校に行くのは当たり前ではない」という考えを学校関係者が持つべきだと述べています。教員向けの連載であり、詳しい対応は有料部分にありますが、22年間教壇に立った人が「当たり前ではない」と書いたことに意味があります。
保護者の側から読み替えると、こうなります。「行かせなければ」という前提を、まず親が下ろす。それが、子どもの「行きたくない」を聞ける状態をつくります。
35万人という数字が示していること
文部科学省が2025年10月29日に公表した2024年度の調査結果は、次のとおりです。
| 項目 | 2024年度 | 補足 |
|---|---|---|
| 不登校の小中学生 | 35万3,970人 | 前年度34万6,482人。12年連続で増加、過去最多 |
| 増加率 | 2.2% | 前年度の増加率は15.9%。伸びは鈍化 |
| 1,000人あたり | 38.6人 | クラスに1人以上いる計算 |
| 新たに不登校になった子 | 15万3,828人 | 前年度16万5,300人。9年ぶりに減少 |
| 不登校の高校生 | 6万7,782人 | 前年度より減少 |
出典:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2025年10月29日公表)。
数字の読み方として、ふたつ押さえておいてください。ひとつは、人数は過去最多だが、増え方はゆるやかになり、新規の不登校は減ったということ。もうひとつは、1,000人あたり38.6人という割合で、どのクラスにも1人以上いる状態が「ふつう」になっていることです。「うちの子だけ」ではありません。
不登校の要因として多かったもの
調査で学校が把握した「不登校の要因」の上位は、「学校生活に対してやる気が出ない」30.1%、「生活リズムの不調」25.0%、「不安・抑うつ」24.3%でした。いじめや友人関係のような「はっきりした出来事」より、「なんとなく」「体がついていかない」が多いのが実態です。だから、理由を聞いても答えられない子が多いのです。
「なんとなく学校に行けない」子|小学生の理由・サインと親の対応理由が言えない子に、理由を聞き続けない関わり方。「行きたくない」と言われたときの親の対応|最初の朝から
最初の朝:まず休ませる。理由は聞かない
朝に「行きたくない」と言われたら、その日は休ませてかまいません。「1日休んだら癖になる」と心配になりますが、休ませなかったことで翌日から完全に行けなくなるケースのほうを、私は多く見てきました。そしてこの日は、理由を聞かないでください。「なんで?」は、子どもにとって「説明できなければ行かされる」というプレッシャーになります。
子どもに「学校行きたくない」と言われたら?親が“理由を聞く前”にすべきこと理由を聞く前にやる3つのこと。最初の1週間:生活リズムと体の様子を見る
休んだ日に、朝は起きられているか、食事はとれているか、夜は眠れているか。「生活リズムの不調」が要因の2位であるとおり、行けない子の多くは、まず体がついていきません。この1週間は、学校に戻すことより、朝起きて食べて寝る、が回っているかを見てください。学校への連絡は「体調不良で休みます」で十分です。
「学校に行きたくない」と言われたら|行き渋りの初期対応と親の初動【最初の1週間】休ませ方、学校への連絡、家での過ごし方を日ごとに。2週目以降:「行く・行かない」以外の話をする
1週間たっても行けないとき、親の頭は「いつ戻るのか」でいっぱいになります。でも子どもとの会話が「学校」の話ばかりになると、子どもは親と話すこと自体を避け始めます。ゲームの話、ごはんの話、飼っている生き物の話。学校と関係ない会話が続いていることが、この時期にいちばん大事です。
家では元気なのに学校には行けない、という姿に「仮病では」と思うこともあると思います。それは仮病ではなく、安心できる場所では元気でいられる、ということです。
不登校なのに家では元気なのはなぜ?「休むと元気」は仮病?親の対応まで解説家で元気な理由と、それを責めない関わり方。1か月:学校以外の選択肢を「親が」知っておく
1か月続いたら、学校以外の学びの場を、親が調べておく時期です。子どもに提案するためではなく、親が「学校だけではない」と知っていることで、家の中の空気が変わるからです。教育支援センター(適応指導教室)、フリースクール、オンラインのスクール、自宅学習の出席扱い。選択肢があると知っているだけで、「行かせなければ」の圧が下がります。
「学校に行くのが当たり前」を、親が先に下ろす
鈴木氏の提起は学校側に向けたものですが、家庭にもそのまま当てはまります。親が「学校に行くのが当たり前」と思っていると、子どもの「行きたくない」は「わがまま」に聞こえます。「当たり前ではない」と思っていると、同じ言葉が「何かある」に聞こえます。どちらで聞くかで、そのあとの対応がまったく変わります。
35万人、クラスに1人以上。行かない子が特別ではなくなった社会で、親に求められているのは、行かせる方法ではなく、行かない時間をどう過ごすかを一緒に考えることです。
学校以外にも、その子に合う学びの場があります
NIJINアカデミー
「行きたくない」が1か月続いたら、学校以外の学びの場を親が知っておく時期です。
NIJINアカデミーは「ALL HAPPY」を掲げる小中一貫のオルタナティブスクールです。不登校・発達特性のある子どもたちが全国から通い、在籍校と連携した97%の出席認定率を公表しています。メタバースの校舎で平日毎日クラスがあり、リアル教室のあるキャンパスもあります。
オンライン体験会は平日毎日開催しています。「行きたくない」が続いているなら、選択肢のひとつとして知っておいてください。
NIJINアカデミーを見てみるよくある質問
- Q. 「不登校」は何日休んだら該当しますか?
- A. 文科省の調査では、病気や経済的理由を除いて年間30日以上欠席した児童生徒を「不登校」として集計しています。数日休んだ段階で焦る必要はありません。
- Q. 休ませると本当に癖になりませんか?
- A. 「休ませたから行けなくなった」のではなく、「行けない状態だったから休んだ」のが実態であることがほとんどです。無理に行かせて体調を崩し、長期化するケースのほうが多く見られます。
- Q. 学校にはどう伝えればいいですか?
- A. 最初は「体調がすぐれないので休みます」で十分です。1週間以上続きそうなら、担任に「本人が学校に行きづらいと言っている」と事実だけを伝え、当面は無理に登校を促さないでほしいとお願いしてください。
まとめ|数字は「珍しくない」ことを示し、対応は「聞く」から始まる
不登校の小中学生は35万3,970人で過去最多、1,000人あたり38.6人。要因の上位は「やる気が出ない」「生活リズムの不調」「不安・抑うつ」で、はっきりした理由のないケースが多数です。「学校に行くのは当たり前ではない」という提起を、親が先に受け取ってください。最初の朝は休ませて理由を聞かない。1週間は体を見る。2週目からは学校以外の話をする。1か月たったら、学校以外の選択肢を親が知っておく。この順番で、急がずに進めてください。

