通信制高校で「退学・転学・卒業の人数」まで公表しているのは323校中103校(31.9%)。文科省の実態調査で見る、学校の情報公開【データ・転載可】

通信制高校を選ぶとき、保護者がいちばん知りたいのは「入った生徒が、その後どうなっているか」ではないでしょうか。文部科学省が2026年8月31日の検討会議に出した「令和7年度通信制高等学校実態調査」には、各校がその情報をどこまで公表しているかの数字が入っています。
入学・退学・転学・卒業などの状況を「公表している」と答えたのは、323校中103校(31.9%)でした。生徒が実際に通う「通信教育連携協力施設」(学習センター等)単位では、4,341か所中658か所(15.2%)です。資料や記事でお使いになる場合は、末尾の転載条件をご確認ください。

1. どんな調査の、どの数字か

資料名令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について(文部科学省 初等中等教育局高等学校振興課、資料の日付 令和8年8月31日)
どこで出たか通信教育の適正な実施・運営の確保のための基本的な指針等に関する検討会議(第1回)の【参考資料3】
調査方法書面(アンケート)
対象通信制課程を置く高等学校 323校(公立81・私立227・株式会社立15)
調査時点令和7年5月1日現在(実施は令和7年7月〜8月)
注意資料に「調査結果の内容は、調査において各調査対象から報告された内容による」とあります。学校の自己申告です

この記事で使うのは、全90ページのうち「スクール・ポリシー」「自己評価・学校関係者評価」「情報公開」の部分(資料のスライド番号79〜89)です。入学者のうち中学3年時に不登校だった生徒の割合(57.0%)や、相談体制・通学コースの数字は、9月21日の記事で扱っています。

2. 学校が公表することになっている9つの項目

高等学校通信教育規程の第14条は、通信制高校(実施校)が次の情報を「公表するものとする」と定めています。第4号から第9号は、連携協力施設ごとの状況も含めて公表する対象です(資料に掲載された条文の抄録で確認)。

号公表する内容(条文の要旨)保護者にとって
1学科の組織、学科・連携協力施設ごとの定員その施設に何人まで入るか
2通信教育を行う区域どの都道府県から入学できるか
3連携協力施設ごとの名称・位置通う場所が学校として登録された施設か
4教員・職員の数、教職員組織先生が何人いるか
5入学・退学・転学・休学・卒業(入学者数、在籍生徒数、退学・転学・卒業者数、進学・就職の状況を含む)入った生徒がその後どうなっているか
6通信教育実施計画添削・面接指導・試験の年間の予定
7校地・校舎等の施設・設備、教育環境どんな場所で学ぶか
8授業料・入学料その他の費用いくらかかるか
9学習活動・進路選択・心身の健康等に係る支援困ったときに何をしてもらえるか

出典:文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」に掲載された高等学校通信教育規程(抄)第14条。右列は編集部による言い換えです。

3. 本校の公表状況:9項目のうち、いちばん低いのは「第5号」

323校が「公表している」と答えた割合を、項目ごとに並べました(第3号のみ、連携協力施設を置いていない149校を除く174校が分母)。

第8号 費用85.1%
第2号 区域74.9%
第3号 施設名・位置73.6%
第7号 施設・設備68.1%
第1号 定員64.7%
第9号 支援58.8%
第4号 教職員数56.0%
第6号 実施計画46.1%
第5号 退学・卒業等31.9%

「公表している」の割合のみ。「一部公表している」は含みません。

項目公表している一部公表公表していない合計(校)
第1号 定員209(64.7%)63(19.5%)51(15.8%)323
第2号 区域242(74.9%)17(5.3%)64(19.8%)323
第3号 施設名・位置128(73.6%)18(10.3%)28(16.1%)174
第4号 教職員数181(56.0%)38(11.8%)104(32.2%)323
第5号 退学・卒業等103(31.9%)135(41.8%)85(26.3%)323
第6号 実施計画149(46.1%)34(10.5%)140(43.3%)323
第7号 施設・設備220(68.1%)53(16.4%)50(15.5%)323
第8号 費用275(85.1%)31(9.6%)17(5.3%)323
第9号 支援190(58.8%)90(27.9%)43(13.3%)323

出典:同資料「13.情報公開の状況(本校)」。割合は資料の記載どおりで、編集部でも学校数から再計算して一致を確認しています。

費用(第8号)は85.1%が公表している一方、退学・転学・卒業などの状況(第5号)を全部公表しているのは31.9%でした。第5号は「一部公表している」が41.8%と多く、何かしら出してはいるけれど、条文が挙げる項目がそろっていない学校が多い、という形です。

設置者別に見ると、第5号を「公表していない」のは公立81校中1校(1.2%)、私立227校中82校(36.1%)、株式会社立15校中2校(13.3%)。私立では、第4号(教職員数)を公表していない学校が94校(41.4%)、第6号(実施計画)を公表していない学校が117校(51.5%)ありました。

4. 実際に通う「連携協力施設」ごとでは、公表はさらに少ない

広域の通信制高校では、生徒の多くが本校ではなく、全国にある通信教育連携協力施設(面接指導等実施施設・学習等支援施設)に通います。資料によると、その数は4,341か所(面接指導等実施施設2,024・学習等支援施設2,317)です。第4〜9号について、施設ごとの公表状況は次のとおりでした。

第8号 費用27.3%
第7号 施設・設備23.3%
第9号 支援19.1%
第6号 実施計画17.4%
第5号 退学・卒業等15.2%
第4号 教職員数11.5%

「公表している」の割合のみ。分母は施設数4,341か所。

項目(施設ごと)公表している一部公表公表していない
第4号 教職員数500(11.5%)136(3.1%)3,705(85.3%)
第5号 退学・卒業等658(15.2%)273(6.3%)3,410(78.6%)
第6号 実施計画755(17.4%)88(2.0%)3,498(80.6%)
第7号 施設・設備1,011(23.3%)255(5.9%)3,075(70.8%)
第8号 費用1,183(27.3%)149(3.4%)3,009(69.3%)
第9号 支援828(19.1%)480(11.1%)3,033(69.9%)

出典:同資料「15.情報公開の状況(通信教育連携協力施設)」。資料の表の見出しは「(学校数)」ですが、合計がいずれも施設数4,341と一致するため、施設数として掲載しています。

本校では85.1%が公表していた費用も、施設ごとに見ると27.3%です。「学校のサイトには載っているが、自分が通う予定の施設の情報は載っていない」ということが、数字の上では多く起こりうることになります。

5. 学校が自分で行う「評価」の実施状況

学校教育法施行規則は、学校が自らの運営を評価して結果を公表すること(自己評価)を「するものとする」、保護者など学校関係者による評価(学校関係者評価)を行って公表することを「努めるものとする」と定め、高等学校に準用しています(資料に掲載された条文の抄録で確認)。連携協力施設についても、高等学校通信教育規程第13条が、施設ごとに評価を行い結果を公表する「ものとする」と定めています。

評価の種類実施しているうち結果を公表分母
本校の自己評価253校(86.1%)189校(74.7%)294校(令和7年度開校の29校を除く)
本校の学校関係者評価184校(62.6%)127校(69.0%)294校(同上)
連携協力施設の自己評価1,740か所(42.0%)1,384か所(79.5%)4,138か所(令和7年度開校の本校と連携する203施設を除く)

出典:同資料「12.自己評価及び学校関係者評価の実施・公表・報告状況(本校)」「14.自己評価及び学校関係者評価の実施状況等(通信教育連携協力施設)」。「うち結果を公表」の割合は、実施している学校・施設が分母です。

設置者別では、本校の自己評価を実施している割合は公立98.7%・私立80.2%・株式会社立100%。学校関係者評価は公立97.4%・私立48.5%・株式会社立73.3%。連携協力施設の自己評価は公立58.6%・私立38.3%・株式会社立78.0%でした。

6. 「スクール・ポリシー」は9割弱が策定

卒業までに育てたい力(グラデュエーション・ポリシー)、教育課程の方針(カリキュラム・ポリシー)、入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)の3つです。

方針策定しているうち公表している
グラデュエーション・ポリシー284校(87.9%)241校(84.9%)
カリキュラム・ポリシー282校(87.3%)236校(83.7%)
アドミッション・ポリシー283校(87.6%)242校(85.5%)

出典:同資料「11.スクール・ポリシーの策定・公表状況(本校)」。策定の分母は323校、公表の分母は策定している学校。公立81校はいずれも3つとも策定・公表しています。

7. ★ここは誤解されやすい

★ここは誤解されやすい

① 「公表していない」=「隠している」「問題のある学校」ではありません。この調査は学校の自己申告で、どの媒体でどこまで出していれば「公表」と答えたのか、判断の基準は資料からは分かりません。紙のパンフレットや説明会で個別に示している学校もありえます。

② 施設の数字は「施設数」で数えています。1つの学校が数百の施設を持つこともあるため、少数の学校の方針が施設の数字を大きく動かしている可能性があります。学校ごとの内訳は資料に載っていません。

③ 「一部公表」の中身は分かりません。第5号なら「卒業者数は出しているが退学者数は出していない」のか、その逆なのか、資料には書かれていません。

④ 公立と私立は、学校数が違います。公立81校・私立227校・株式会社立15校で、割合だけを並べて比べると、株式会社立の1校の差が6.7ポイントに相当します。

8. いま、できること/しなくていいこと

いま、できること

・学校のサイトで、第2章の9項目がそろっているかを見てみる。とくに第5号(退学・転学・卒業の人数、進学・就職の状況)と第9号(支援)は、この調査で公表が少なかった項目です。

・実際に通う施設(学習センター等)について、同じことを聞いてみる。規程上、第4〜9号は施設ごとの状況も公表の対象です。「このキャンパスの先生は何人ですか」「このキャンパスの昨年度の卒業者数と退学者数は」と、施設単位で聞いてかまいません。

・学校評価の結果が公表されているか確認する。自己評価・学校関係者評価の結果には、学校が自分で見つけた課題が書かれていることがあります。

しなくていいこと

・この記事の割合で、特定の学校の良し悪しを決めること。学校ごとの内訳は公表されていません。気になる学校があれば、その学校に直接確かめるのが確実です。

・サイトに載っていないことを、聞かずにあきらめること。載っていない情報も、説明会や個別相談で尋ねれば答えてもらえる場合があります。

9. これから

この調査は、通信制高校の管理運営などについて国の基本指針をつくる検討会議に出された資料です。検討会議で挙がっている論点はこちらの記事で整理しています。第2回会議は令和8年9月29日に予定されており(文部科学省の開催案内)、資料が公開されたら、にじいろでも続報をお伝えします。

10. この記事に書かなかったこと

  • 前年度との比較。比較できる前年度の同じ調査を確認できなかったため、増えた・減ったとは書いていません。
  • 公表の方法(ウェブサイト、パンフレットなど)の内訳。資料に記載を見つけられませんでした。
  • 自己評価を実施していない理由。資料に記載がありません。
  • 連携協力施設の学校関係者評価、施設の収容定員・在籍生徒数別の内訳(資料のスライド番号76〜78・86)。本記事では扱っていません。
  • 個別の学校名。資料には学校別のデータは載っていません。
転載について

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表記例:
出典:にじいろ「通信制高校の情報公開の実態|令和7年度通信制高等学校実態調査」(https://nijin.jp/news-data-tsushinsei-joho-kokai-r7/)/原典:文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」

数値そのものの原典は文部科学省です。可能であれば文部科学省の資料も併せてご参照ください。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご連絡ください。訂正はページ末尾に明記します。

出典(一次情報)

本文の数値は、上記PDFの本文・表を編集部が直接読み、学校数・施設数から割合を再計算して資料の記載と一致することを確認したものです。条文は、同資料に掲載された高等学校通信教育規程・学校教育法施行規則の抄録によります。

文責:にじいろ編集部
公開日:2026年9月22日 / 最終更新:2026年9月22日
この記事は、にじいろ編集部が一次情報にあたって作成しています。編集の考え方は編集体制・編集方針をご覧ください。誤りが判明した場合は、記事を書き換えるのではなく、末尾に訂正を追記します。
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