結論:先生との関係は、不登校のきっかけや関連要因の一つになり得ます。
文部科学省の調査研究では、令和4年度に不登校だった調査対象の児童生徒の35.9%が「先生と合わなかった」と回答しました。不登校でなかった児童生徒では14.3%です。
一方で、不登校には友人関係、学習、学校の決まり、心身の不調、生活リズム、家庭環境など、複数の要因が重なることがあります。
「全部先生のせい」と決めつける必要も、「先生は悪くない」と子どもの訴えを打ち消す必要もありません。
大切なのは、わが子が何に苦しんでいるのかを具体的に確かめ、必要なら先生との関係や学ぶ環境そのものを調整することです。
「先生が怖いから学校に行きたくない」「担任と合わなくなってから朝になるとお腹が痛い」「先生のせいで不登校になったのでは?」
子どもからこう言われると、保護者は迷います。
先生へ伝えていいのか。大げさにしない方がいいのか。子どもの話だけを信じていいのか。それとも、少し様子を見るべきなのか。
この記事では、文部科学省の不登校要因調査などの一次資料をもとに、不登校と先生との関係、見逃したくないサイン、子どもへの聞き方、学校への相談方法、環境を変える選択肢まで整理します。
後半では、元小学校教員でNIJINアカデミー校長の星野達郎が考える「先生個人ではなく、学校の構造まで見る」という視点も紹介します。
元小学校教員。学校が合わない小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長。
学校の内外から教育に関わり、子どもを既存の環境へ合わせるだけでなく、一人ひとりの主体や可能性が生きる教育環境をつくることに取り組んでいる。
にじいろは株式会社NIJINが運営し、この記事で紹介するNIJINアカデミーも同社の事業です。
不登校の原因は先生?文科省調査では35.9%が「先生と合わなかった」
「先生との関係が原因で不登校になることはあるのか」という疑問に対しては、「あり得る」というのが公的調査から読み取れる答えです。
文部科学省が公表している「不登校の要因分析に関する調査研究」では、令和4年度に不登校だった児童生徒と、不登校でなかった児童生徒を比較しています。
「先生と合わなかった」
「先生と合わなかった」
「厳しく怒られた・体罰」
「厳しく怒られた・体罰」
「先生と合わなかった」は、不登校だった児童生徒35.9%に対し、不登校でなかった児童生徒では14.3%でした。
また、「先生から厳しく怒られた・体罰」と回答した割合も、不登校だった児童生徒では16.7%、不登校でなかった児童生徒では7.5%でした。
報告書では、これらの結果を踏まえて、教師の態度や指導方法が不登校の要因になっている可能性にも触れています。
ただし、「不登校の35.9%は先生が原因」という意味ではありません。
35.9%は、この調査で令和4年度に不登校だった児童生徒が「先生と合わなかった」に該当すると回答した割合です。
不登校には複数の要因が重なることがあり、「先生との合わなさ」だけで一人ひとりの不登校を説明できるわけではありません。
参考: 文部科学省|不登校の要因分析に関する調査研究 報告書
以前の調査でも、小学生では「先生のこと」が上位
令和2年度の文部科学省「不登校児童生徒の実態調査」でも、小学生が「最初に学校に行きづらいと感じ始めたきっかけ」として挙げた項目では、「先生のこと」が29.7%でした。
つまり、先生との関係は一部の特殊なケースだけではなく、不登校を考える上で無視できないテーマです。
参考: 文部科学省|令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要
学校が見る原因と、子ども本人が感じる原因は違うことがある
不登校について考えるときに知っておきたいのが、大人から見える理由と、子ども本人が感じている理由は必ずしも同じではないことです。
文部科学省の不登校要因調査では、いじめ、教職員との関係、叱責、体調不良、不安・抑うつなどについて、教師と児童生徒・保護者の回答に違いが確認されています。
例えば、子どもは「先生が怖い」と感じていても、学校側には「最近やる気が出ていない」「朝起きられない」という表面的な変化だけが見えていることがあります。
反対に、学校では友人関係が原因だと思われていても、本人にとって一番苦しいのは先生とのやりとりだった、ということもあり得ます。
だから、原因を早く一つに決めることより、「本人にはどう見えているか」を聞くことが重要です。
「学校はこう言っているから」「先生はそんなつもりじゃないから」で終わらせず、子どもの感覚も一つの重要な情報として扱いましょう。
NIJINアカデミーでは、先生と1対1で話せる時間があります。
「なぜ行けないの?」と答えを急がず、本人のペースで今の気持ちや「何ならできそうか」を整理します。
1対1の専任サポートを見る →「先生が原因かも」と考えたい7つのサイン
一つのサインだけで「先生が原因」と判断することはできません。
ただし、次のような変化が先生・授業・学校との関係に連動している場合は、丁寧に状況を確認する価値があります。
進級・クラス替え・担当変更の前後で明確な変化がある場合です。
強い叱責を受けた経験だけでなく、他の子が叱られている場面を怖がる場合もあります。
特定の先生と関わる日や授業の前に腹痛・頭痛・強い不安が出るケースです。
相談したい一方で、知られた後の関係悪化を怖がっている可能性があります。
注意や評価の言葉を何度も口にし、自分を否定する言葉が増えている場合があります。
学校で緊張を続け、安心できる家庭で感情が一気に出ていることがあります。
別室、休み時間、休日、校外の居場所では比較的元気になる場合です。
強い恐怖、体罰、人格を否定する言葉、継続的な威圧などが疑われる場合は、「相性」の一言で済ませないでください。
子どもの安全を優先し、担任本人だけでなく、学年主任・管理職・教育委員会など別の窓口にも相談しましょう。
「先生が嫌い」と「先生が不登校の主な要因」は同じではない
子どもが「先生嫌い」と言ったからといって、その先生が不登校の主な要因とは限りません。
逆に、「別に先生は嫌いじゃない」と話していても、先生から評価されることへの強い緊張や、教室の雰囲気が負担になっていることもあります。
次のように整理すると、状況を考えやすくなります。
| 状況 | 先生との関係 | 考え方 |
|---|---|---|
| 先生が変わった時期と行き渋りが一致する | 関連を確認したい | 何が変わったのか、具体的な場面を聞きます。 |
| その先生の授業だけ強い不調が出る | 関連が強い可能性 | 授業内容・指導・人間関係を分けて確認します。 |
| 先生は嫌いだが、学校では友達と楽しく過ごせる | 一要因かもしれない | 関係調整や授業時の配慮で改善できる可能性があります。 |
| 先生、友達、勉強、音、集団など複数がつらい | 複数要因 | 「原因探し」より負担を一つずつ減らします。 |
| 先生が変わっても強い不調が続く | 先生以外も確認 | 心身の状態、友人関係、学習、生活リズムなども見ます。 |
| 本人も何が嫌なのか分からない | 決めつけない | 原因を答えさせるより、現在の負担を減らすことを優先します。 |
先生が原因か分からないとき|子どもにはどう聞けばいい?
「先生に何をされたの?」「先生が原因なんでしょ?」と聞くと、子どもが答えを誘導されているように感じることがあります。
反対に「先生はそんな人じゃないよ」「あなたにも悪いところがあったんじゃない?」と先に否定すると、本当に困っていても話さなくなります。
原因を当てる質問ではなく、負担がどこにあるのかを一緒に探す質問が向いています。
子ども自身にも、なぜ学校へ行けないのか分からないことがあります。
原因を言語化できないことを責めず、「今どこが一番つらいか」「何ならできそうか」から始めても大丈夫です。
NIJINアカデミーのクラスは8〜10人ほどの少人数・異年齢。
顔出し・声出しだけを参加とせず、チャットや「見るだけ」から始めることもできます。
少人数×異年齢クラスを見る →先生と合わない・先生が怖いとき|親ができる5ステップ
先生との関係が学校に行けない理由の一つかもしれないと感じたら、次の順番で整理していきます。
- 子どもの感情をいったんそのまま受け止める 「怖かったんだね」「それは嫌だったね」と、まず本人の感じ方を否定しません。先生の意図がどうだったかを判断するのは、その後で構いません。
- 事実と気持ちを分けて記録する いつ、どこで、誰が、何を言った・したのか。そのとき本人はどう感じたのかを分けてメモします。
- 学校側から見えている状況も確認する 責任追及から始めず、「家庭ではこう話しています。学校ではどのような様子でしょうか」と確認します。
- 担任だけで難しければ相談先を広げる 学年主任、養護教諭、スクールカウンセラー、教頭・校長など、子どもが話しやすい大人につなぎます。
- 関係調整で改善しなければ環境自体を変える 別室、時間を限定した登校、教育支援センター、フリースクール、オンラインなど、本人が安心できる環境も検討します。
NIJINでは、1対1、少人数クラス、オンライン、リアル教室など複数の接点があります。
一つの場所や先生が合わない日も、別の関係が受け止められる環境をつくっています。
ニジアカ生の1日を見る →学校にはどう伝える?先生との関係を相談する文例
「先生のせいです」と断定して伝えると、事実確認よりも「誰が悪いか」という話になりやすくなります。
最初は、子どもに起きている変化+本人の言葉+相談したいことの3つを伝えるのがおすすめです。
いつもお世話になっております。
最近、家庭で「先生に怒られるのが怖い」「○○の授業に行きたくない」と話すことが増えています。
特に○曜日の朝に腹痛を訴えることが続いており、本人も学校での過ごし方に負担を感じているようです。
家庭からは見えていないこともあると思いますので、学校ではどのような様子か教えていただけますでしょうか。
本人が安心して過ごせる方法を、一緒に考えさせていただければと思っています。
担任本人に相談しづらいとき
○年○組の○○の保護者です。
担任の先生との関係について、本人が強い不安を感じているためご相談したく連絡しました。
本人は「先生には直接伝えないでほしい」と話しており、現時点で担任の先生ご本人へ直接相談することに不安があります。
まずは家庭で把握している状況を共有し、今後どのような対応が可能かご相談させていただけますでしょうか。
「誰が悪いか」ではなく、「子どもが安心して学べる状態をどうつくるか」を共通の目的にすると、話し合いを進めやすくなります。
担任を変えてもらうことはできる?相談先を広げる方法
「先生が原因なら、担任を変えてほしい」と考える保護者もいるでしょう。
ただ、保護者が希望すれば自動的に担任が変更されるわけではなく、対応方法や時期は学校・教育委員会などによって異なります。
担任変更だけに絞らず、まずは「子どもがその先生との関係でどのような負担を受けているか」を伝え、利用できる調整方法を相談します。
文部科学省の通知でも、不登校児童生徒への支援は「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではないとされています。
さらに、教育機会確保法では、学校以外の場で行う多様な学習活動の重要性や、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえた支援が定められています。
タツロー校長の問題提起|本当に「先生個人」だけの問題なのか
ここまでは、文部科学省の調査や支援方針をもとに「不登校と先生との関係」を見てきました。
ここからは、元小学校教員である星野達郎の教育現場での経験をもとにした一つの問題提起です。
星野は、不登校と先生との関係を考えるとき、問題を「良い先生・悪い先生」という個人評価だけで終わらせるべきではないと考えています。
タツロー校長
先生一人を責めるだけでは、同じことがまた起きます。「どんな人が先生になり、どんな環境で働き、子どもと出会っているのか」まで見る必要があると思っています。
学校に合わない子が生まれる背景を「構造」から見る
先生にも一人ひとり異なる経験や得意分野があります。すべての子どもの興味・思考・特性を、一人の教師だけで理解することには限界があります。
学校生活への適応経験が異なる大人と子どもでは、「普通」「当たり前」「頑張ればできる」の基準がずれることがあります。
学校の中で学ぶ知識だけでなく、実際に社会で使う経験があることで、同じ学びが別の意味を持つことがあります。
星野が動画で使っているのが、「具体と抽象を行き来する」という考え方です。
例えば「1+1=2」という知識を覚えるだけでなく、実際の社会や仕事の中で数字を使い、そこで得た経験をまた学問へ戻していく。
学校の中だけでは見つからなかった子どもの得意が、社会へ出たときに初めて価値として認められることもあります。
学級人数、時間割、評価方法、役割分担、校内の意思決定など、教師個人では変えにくい条件もあります。子どもとのミスマッチを「先生一人の力量」に還元しない視点も必要です。
ここで注意したいのは、「先生は○○な人ばかり」「特定の属性の教師は子どもを理解できない」と一般化しないことです。
教師には多様な経歴・専門性・教育観を持つ人がいます。星野の主張は、個々の教師の能力を断定するものではなく、子ども側だけを変えようとせず、教育環境や人材の多様性まで問い直そうという問題提起として捉えます。
NIJINでは、企業・地域・専門家と実際の課題に挑む「社会共創」を行っています。
学校では見えにくかった発想やプレゼンの力が、社会では強みになることも。一人の先生の評価だけで可能性を決めないための学びです。
NIJINの社会共創を見る →「いい先生」より、わが子に合う先生・環境を考える
同じ先生でも、ある子にとっては安心でき、別の子にとっては強い緊張を感じることがあります。
これは、どちらかが間違っているとは限りません。
重要なのは、
- 安心して質問できるか
- 間違えても大丈夫と思えるか
- 自分の考えを言えるか
- 困ったときに助けを求められるか
- 自分の得意や興味を否定されないか
- 学校へ行った後、自分を嫌いになっていないか
という、その先生・環境と一緒にいるときの子どもの姿です。
「いい先生かどうか」を大人だけで採点するより、「その先生といるとき、わが子がどんな自分でいられるか」を見てみてください。
先生との関係だけで苦しみ続けなくていい|環境を変えるという選択肢
先生との関係がうまくいかないとき、選択肢は「我慢して通う」か「完全に学校を辞める」かの二択ではありません。
例えば、
- 別室で過ごす
- 登校する時間を調整する
- 特定の授業だけ別の場所で受ける
- 教育支援センターを利用する
- フリースクールを併用する
- オンラインで学ぶ
- 学校外の大人・専門家とつながる
など、学校との距離を調整しながら学びを続ける方法があります。
文部科学省も、不登校支援について「登校という結果のみ」を目標にするのではなく、子どもが自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立することを目指す必要があるとしています。
「学校へ戻せるか」だけではなく、「この子が安心し、また自分の力を使える環境はどこか」を考えてみてください。
今の学校との関係を残しながら、別の環境を比較してみることもできます。
不登校と先生についてのよくある質問
まとめ|「先生が悪いか」より、子どもが安心して学べるかを見る
不登校と先生との関係は、決して無視できるものではありません。
文部科学省の調査では、不登校だった児童生徒の35.9%が「先生と合わなかった」と回答し、不登校でなかった児童生徒より高い割合でした。
だからといって、すべてを先生個人の責任にする必要もありません。
大切なのは、
- 子どもの言葉を否定しない
- 先生との関係がいつ・どこで負担になっているかを見る
- 先生以外の要因も一緒に確認する
- 担任一人だけに相談先を限定しない
- 必要なら学校との距離や学ぶ環境を変える
ことです。
タツロー校長
先生がいいか悪いかだけではなく、「この環境で、わが子は自分らしく生きられているか」を見てほしいと思います。合わないなら、環境を選び直すことも教育です。
先生と合わないことは、子どもの能力や性格の問題ではありません。
そして、一人の先生との関係だけで、子どもが学校や学びそのものを嫌いになる必要もありません。
「この子を今の環境へどう合わせるか」だけでなく、「この子に合う環境はどこか」も、同時に考えてみてください。
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動画でも詳しく|不登校の原因は先生なのか?
株式会社NIJIN代表取締役・NIJINアカデミー校長の星野達郎が、「不登校の原因を先生個人だけに求めるのではなく、教師が育ち、働く学校の構造まで見る必要があるのではないか」という視点から解説しています。
動画には、星野個人の経験や問題提起として強い表現も含まれています。本記事では、それらと公的調査で確認できる事実を分け、保護者が実際にどう動けばよいかまで整理しました。
参考・一次資料
- 文部科学省|不登校の要因分析に関する調査研究 報告書
- 文部科学省|令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要
- 文部科学省|不登校児童生徒への支援の在り方について
- 文部科学省|令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査
- e-Gov法令検索|教育機会確保法
- NIJINアカデミー|教育モデル
- NIJINアカデミー|専任サポート
- NIJINアカデミー|少人数×異年齢クラス
- NIJINアカデミー|社会共創
最終確認:2026年10月
本記事は一般的な情報提供を目的としています。強い不安、継続する身体症状、心身の安全に関わる状況がある場合は、学校の相談窓口、スクールカウンセラー、医療機関等の専門機関にもご相談ください。


