「習い事に行くと、音がつらくて耳をふさいでしまう」「集団のペースについていけない」「説明を聞いても、次に何をするか分からない」。お子さんに、こんな様子はありませんか?
好きなことを楽しませてあげたいのに、注意されることが増えたり、行きたがらなくなったりすると、保護者も悩みますよね。
感覚過敏、ASD、ADHDなどの発達特性がある子の習い事では、活動への興味だけでなく、環境や教え方との相性も大切です。この記事では、習い事で困りやすい具体的な場面と、お子さんに合う習い事の選び方をまとめます。
「好きなのに続かない」習い事で、こんなことはありませんか?
体験では「やりたい!」と言っていたのに、通い始めると行き渋る。先生から「話を聞いていない」「みんなと同じようにできない」と言われてしまう。家では楽しそうにやっているのに、教室ではうまくいかない。
「この子に合う習い事はないのかな」「また続かなかったらどうしよう」。そんな迷いを抱えながら教室を探している保護者もいるのではないでしょうか。活動への興味があっても、音、人数、説明の仕方などが合わず、参加しづらいことがあります。
まず見たいのは、何ができないかだけでなく、どんな場面で困っているかです。

発達特性のある子が習い事で困りやすい10の場面
以下は習い事で起こりうる場面の例です。すべてが当てはまるわけではありません。「うちの子はこのときにつらそうだった」と思う場面から読んでみてください。
1.教室の音がつらく、活動に集中できない
ピアノやダンスの音楽、体育館に響く声、ほかの子のおしゃべり。周りには気にならない音でも、お子さんには強い負担になることがあります。「うるさい」と耳をふさいだり、教室の外に出たがったりすると、活動を楽しむ余裕がなくなります。
確認したいこと:音の大きさ、重なり方、響き方のどれがつらいのかを確かめ、静かな時間帯や休憩できる場所を相談しましょう。
2.人が多いと疲れてしまう
習い事を楽しみにしていたのに、教室に入ると表情が硬くなる。帰宅してからぐったりする。人の声や動きが多い場所では、活動以外のことにも気を配り、疲れてしまう子がいます。
確認したいこと:人数の少ないクラスや、落ち着いて過ごせる席・スペースがあるかを確認します。
3.順番を待つことや、じっと座ることが難しい
自分の番が来る前に動いてしまう。説明の途中で席を立つ。「待って」「ちゃんと座って」と言われる場面が続くと、本人も保護者も習い事に行くことがつらくなります。
確認したいこと:待つ時間を短くする、順番を目で分かるようにする、体を動かす休憩を入れるなどの工夫を相談しましょう。
4.集団のペースについていけない
まだ準備しているのに練習が始まる。手順を確かめている間に次の課題へ進む。周りと同じ速さを求められると、好きな活動でも「自分だけできない」と感じてしまうことがあります。
確認したいこと:本人のペースで取り組めるか、先生が途中で理解を確かめてくれるかを見てみましょう。
5.長い説明や、いくつもの指示を覚えきれない
「道具を出して、ここに並べて、その後に始めてね」。聞いていたはずなのに、動き始めると次にすることが分からなくなる。聞いたことを覚えながら作業する場面で、手が止まることがあります。
確認したいこと:指示を一つずつ伝える、写真や番号で手順を残すなど、覚えておく情報を減らす方法を相談できます。
6.一度の説明では分からず、聞き返せない
お手本を一度見ただけでは、動きや操作が分からない。それでも「もう一回教えて」と言えず、周りをまねして何とかやり過ごす。説明についていけないまま、取り残された気持ちになる場合があります。
確認したいこと:短い説明と実演を組み合わせる、見本を手元に置く、個別に確認する時間をつくるなどが考えられます。
7.初めての場所や、急な変更が不安
体験の日、入口で立ち止まってしまう。いつもの先生が休みだったり、練習の順番が変わったりすると参加しにくくなる。「何が起こるか分からない」ことが大きな負担になる子もいます。
確認したいこと:教室の写真、先生の紹介、当日の流れを先に見せてもらい、変更はできるだけ事前に伝えてもらいましょう。
8.友達とのやりとりや、人前での発表が苦手
ペアを組む、相手に合わせる、みんなの前で答える。活動そのものは好きでも、人とのやりとりが加わると緊張してしまうことがあります。困っていても助けを求められず、黙っている場合もあります。
確認したいこと:急な指名を避ける、発表の予定を先に知らせる、先生に合図で伝えるなど、安心できる方法を一緒に考えましょう。
9.移動や着替え、道具の感触だけで疲れてしまう
教室までの人混みや移動で疲れる。ユニフォームのタグ、靴、道具の感触が気になる。始まる前の準備に負担がかかり、活動に使う元気が残らないこともあります。
確認したいこと:活動中だけでなく、出発から帰宅までを振り返ります。服装や道具の変更、準備時間の余裕について相談してみましょう。
10.うまくできない経験が重なり、行きたくなくなる
「また注意されるかも」「みんなより遅いから嫌だ」。繰り返し注意されたり、周りと比べられたりすると、最初は好きだった習い事に行き渋ることがあります。
確認したいこと:できたことや楽しかった場面を確かめ、難しさに合った課題に調整できるか考えます。本人のつらさが続くときは休むことも選択肢です。
「やる気がない」だけでは説明できないことがあります
感覚過敏があると、音や感触が負担になることも
音や光、におい、服や道具の感触など、負担になる刺激は子どもによって異なります。周囲が平気だからといって、本人も平気とは限りません。「少し我慢すれば」と促す前に、どの刺激がつらいのかを聞いてみましょう。
ASDのある子では、見通しややりとりが気になる場合も
予定が分かると安心して取り組める子、曖昧な説明や相手に合わせる活動で困る子などがいます。「いつもと違う」「次に何をするか分からない」という不安がないか、本人の様子と合わせて考えます。
ADHDのある子では、注意や待つ時間に工夫が必要な場合も
周囲の動きに気を取られる、順番が来るまで待つことが難しい、説明の途中で動きたくなるなど、参加の仕方に工夫が必要なことがあります。説明を短く区切る、待ち時間を見えるようにするなど、取り組みやすい条件を探します。
同じ診断名でも困りごとや得意なことは異なり、複数の難しさが重なる場合もあります。診断のない子も、困っている場面に合わせた工夫を相談できます。ここに挙げた様子だけでASDやADHDと判断することはできません。
特性の理解には、国立障害者リハビリテーションセンター・発達障害情報・支援センターの情報も参考になります。
発達特性のある子に合う習い事を選ぶ5つのポイント
1.本人が「やってみたい」と思える内容から選ぶ
絵、音楽、ものづくり、運動、ゲームづくりなど、本人の興味を入口にします。苦手なことを克服する目的だけで選ぶと負担が大きくなる場合があります。「何が好き?」「どんなことをやってみたい?」を聞くところから始めましょう。
2.音・人数・場所が本人に合っているかを見る
種目が同じでも教室の環境は違います。静かな個室か、声が響く広い場所か。大人数か、少人数か。体験では内容だけでなく、本人が落ち着いて過ごせるかを確かめましょう。

3.説明の仕方と進む速さを確認する
口頭だけで説明するのか、実演や写真も使うのか。分からないときにもう一度聞けるのか。個別指導や少人数でも対応は教室ごとに違うため、実際の進め方を確認します。
4.困りごとを相談できる先生・教室を選ぶ
「発達特性があります」だけでなく、「大きな音が重なると耳をふさぎます」「指示が続くと手が止まります」と具体的に伝えます。本人の困りごとを一緒に考え、どんな調整ができるか話し合えるかが大切です。
5.体験中と、帰宅後の様子を合わせて見る
その場では頑張れていても、帰宅後に疲れが出ることがあります。「楽しかった?」だけでなく「どこが大変だった?」「次もやってみたい?」と聞いてみましょう。一度で決めず、調整して試せるかも確認します。
先生に伝えるときは「困る場面」と「助かる工夫」をセットに
次は相談の言い方の例です。お子さんの様子に合わせて使ってください。
音がつらいとき
「音楽と複数の話し声が重なると、耳をふさいでしまいます。音源から離れた場所で参加したり、静かな場所で休んだりできますか?」
説明についていけないとき
「一度にいくつも指示を聞くと、次にすることが分からなくなります。一つずつ伝えるか、手順を写真や番号で見せていただけますか?」
待つことや切り替えが難しいとき
「順番が分からないと動き出してしまうことがあります。あと何人か、次に何をするかを先に知らせていただけると助かります。」
「好き」を楽しめる環境から、習い事を選ぼう
習い事が続かないとき、活動が嫌いになったとは限りません。音がつらい、集団のペースが速い、説明が分からないなど、楽しむ前に負担がかかっている場合があります。
本人の興味と困る場面を整理し、人数、説明、時間、場所を調整できる教室を探してみましょう。本人が「楽しかった」「またやりたい」と感じられる形を見つけることも大切です。
教室での負担が大きい子には、オンラインの習い事という選択肢も
「好きなことは続けたい。でも、教室の音や人の多さがつらい」「通うだけで疲れてしまう」。そんなときは、自宅から参加できるオンラインの習い事も候補になります。パソコンやタブレットを使い、画面越しに先生と学ぶ方法です。イラスト、プログラミング、英会話、探究やものづくりなどの活動があります。
教室に通うことが難しくても、興味のある活動に取り組む入口をつくれるのが魅力です。
慣れた場所で、音や周囲の刺激を調整しやすい
自宅なら参加する部屋や端末の音量を選べます。移動の負担も減らせるため、活動に使う元気を残しやすくなります。教室の音や人混みが負担だった子には、この違いが参加のしやすさにつながる場合があります。
説明や参加方法が合うクラスを探せる
個別形式なら進む速さを相談する、手順を画面に残してもらう、声で伝えにくいときはチャットや合図を使うなど、教室によって工夫ができます。録画や教材を見直せる講座もあります。希望する対応があるか、体験前に確かめましょう。

好きな活動を、通える範囲に縛られず探せる
近くに合う教室がなくても、本人が興味を持つテーマの先生やクラスを探せます。「絵を描きたい」「ゲームをつくってみたい」という気持ちから始めやすいことも、オンラインの良さです。
体験では、画面や音の負担と先生の対応を確認する
オンラインでも画面のまぶしさ、配信音、操作が負担になることはあります。カメラ・マイクのルール、人数、休憩、保護者の補助、質問方法を確認し、本人が安心して取り組めるか試してみてください。
オンラインで「好き」を広げる活動を見てみよう
NIJINアカデミー放課後プロジェクトスクールの公式HPでは、イラスト制作やオンラインのプロジェクト発表などが紹介されています。どんな活動に興味があるか、お子さんと一緒に見てみるのもよいでしょう。

写真は活動の紹介で、参加者の発達特性を示すものではありません。音、説明、発言などに希望がある場合は、対応できる範囲を申し込み前に相談してください。

お子さんの「やってみたい」を、参加しやすい形で。
教室の音や人の多さが負担でも、好きな活動を楽しむ入口は探せます。イラストやゲームづくりなど、興味を持てる活動を親子で見てみませんか。
音、説明、発言などで気になることは、体験前に対応可能な範囲を相談してください。
写真:放課後プロジェクトスクール公式HP。最新の募集や参加条件は公式案内をご確認ください。
監修
佐藤仁美(作業療法士/NIJINアカデミー東金校 教室長)
児童発達支援・放課後等デイサービスで10年以上、発達に特性のある子どもたちの支援に携わる。現在はNIJINアカデミー東金校の教室長として、不登校の子どもの学びと保護者を支えている。
発達支援、感覚統合、認知機能(注意機能・ワーキングメモリ・実行機能など)の評価と支援、学習支援を専門とする。医療と教育の視点から、一人ひとりの特性に合う支援に取り組んでいる。
紹介文参考:ワーキングメモリとは?

