教室の入口で足が止まる。みんなが輪になっているのに、ひとりだけ壁ぎわにいる。帰り道に「もう行きたくない」と言う。
集団が苦手な子にとって、習い事は「活動の内容」より先に「人の多さ」でつまずくことがあります。集団に入れないのは、やる気や性格の問題とは限りません。この記事では、集団が苦手な理由を整理したうえで、個別・少人数・オンラインの3つの形を比べ、子どもに合う選び方をまとめます。
この記事でわかること
- 「集団が苦手」に隠れている4つの理由
- 個別・少人数・オンラインの違いと向いている子
- 集団が苦手な子が取り組みやすい活動の特徴
- 集団の習い事を続けるときに先生へお願いできること
「集団が苦手」の理由はひとつではありません
同じ「集団が苦手」でも、何がつらいのかは子どもによって違います。理由が分かると、選ぶ形も変わります。
| つらさの中身 | よく見られる様子 | 合いやすい形 |
|---|---|---|
| 音・人の動きなど刺激が多い | 耳をふさぐ、終わるとぐったりする | 個別、少人数、オンライン |
| 次に何をするか分からない | きょろきょろする、動き出しが遅れる | 流れが毎回同じ教室、個別 |
| みんなのペースに合わせるのが難しい | 待てない、または置いていかれる | 個別、自分のペースで進む教室 |
| 人との距離感ややりとりに気を使う | ペア活動や自由時間を嫌がる | ひとりで取り組む活動、オンライン |
複数が重なっていることも多いので、きっちり分ける必要はありません。「何がいちばんしんどそうか」を、習い事のあとの様子から探ってみてください。音がつらい子については聴覚過敏の子の習い事、説明についていけない子については先生の指示が通らない子の習い事で詳しく書いています。
WHOの「ICF」から考える|困りごとは環境との組み合わせで決まる
WHO(世界保健機関)が2001年に採択した国際生活機能分類(ICF)は、人の生活を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つで捉え、そこに「環境因子」が影響すると考えます。環境因子には、物的な環境だけでなく、社会的な環境や、周囲の人の態度も含まれます。
厚生労働省はICFの日本語版を公表し、マイナス面ではなく「生活機能」というプラス面からみる視点に転換したこと、環境因子の観点が加わったことを説明しています。
この考え方に立つと、「集団が苦手」は本人だけの問題ではなく、人数・音・進め方といった環境との組み合わせで起きていることになります。個別・少人数・オンラインという「形」を選ぶのは、環境因子を変えて「参加」しやすくすることです。
またWHOは、自閉スペクトラム症のある人の力や必要な支援は一人ひとり違い、時間とともに変わりうるとしています。今は個別が合う子が、この先もずっとそうとは限りません。
出典:厚生労働省「『国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-』(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について」/WHO「International Classification of Functioning, Disability and Health (ICF)」(英語)/WHO「Autism」ファクトシート(英語)
個別・少人数・オンラインの違い
| 形 | よいところ | 気をつけたいところ | 向いている子 |
|---|---|---|---|
| 個別(1対1) | ペースも内容も合わせてもらえる。刺激が少ない | 費用が高くなりやすい。先生との相性の影響が大きい | 人が多いだけで疲れてしまう子、最初の一歩を踏み出したい子 |
| 少人数(2〜5人程度) | ほかの子の様子が見える。ゆるやかなやりとりが生まれる | メンバーとの相性で居心地が変わる | 大人数はつらいが、友だちはほしい子 |
| オンライン | 自宅から参加できる。カメラや発言の加減を調整しやすい | 画面越しの疲れがある。体を動かす活動には不向き | 外出や教室に入ること自体が負担の子 |
どれが上、という順番はありません。個別から始めて少人数に移る子もいれば、ずっと個別が合う子もいます。
集団が苦手な子が取り組みやすい活動の特徴
習い事の「種類」よりも、活動の「つくり」に注目すると選びやすくなります。
- 自分の作品や課題に向かう時間が長い(絵、工作、プログラミング、書道など)
- ほかの子と動きをそろえなくてよい(進度別の教室、個人種目)
- 毎回の流れが決まっている(始まり方・終わり方が同じ)
- 勝ち負けや順位が前面に出ない
- ペアやグループを自分たちで組ませない(先生が決めてくれる)
反対に、チームで動きを合わせる競技や、自由時間が長い教室は、負担が大きくなることがあります。とはいえ、本人が「やりたい」と言う活動なら、環境を整えて試す価値は十分あります。

集団の習い事を続けたいときに、先生へお願いできること
仲のよい友だちがいる、その競技が好き、という理由で集団の習い事を続けたい子もいます。その場合は、次のような調整を相談してみてください。
- 最初の5分は見ているだけでもよいことにしてもらう
- 並ぶ位置を端や先生の近くにしてもらう
- ペアやグループは先生に決めてもらう
- 疲れたときに休める場所と、戻るタイミングを決めておく
- その日の流れを始めに一言で伝えてもらう
伝え方に迷うときは、習い事の先生に発達特性をどう伝える?の例文を使ってください。
「集団に慣れさせるために習い事」は順番が逆になりやすい
集団が苦手だからこそ集団の習い事に、という考え方もあります。ただ、安心できない場所では、人と関わる力を試す余裕が生まれません。まず「ここなら大丈夫」と思える場所をひとつ持つこと。人との関わりは、その安心の上に少しずつ広がっていきます。
オンラインは「集団の練習」にもなる
オンラインの習い事には、人との距離を自分で決められるという特徴があります。

- 最初はカメラオフ・チャットだけで参加する
- 慣れてきたら声で発言する
- 同じ「好き」を持つ子と、作品や画面を見せ合う
同じ空間にいなくても、共通の話題があるとやりとりは生まれやすくなります。ゲームやものづくりが好きな子なら、ゲーム好きな子のオンライン習い事も参考になります。
オンライン習い事の受け方(リアルタイム型・動画型・プロジェクト型)の違いは、オンライン習い事の選び方ガイドで整理しています。
よくある質問
- 個別ばかりだと、社会性が育たないのではと心配です。
- 1対1のやりとりも、人と関わる経験です。先生と話す、質問する、できたことを見せる。こうした経験を重ねて自信がつくと、次に少人数を試す土台になります。
- 体験では楽しそうだったのに、入会したら行きたがりません。
- 体験は短時間で、人数も少ないことが多いためです。入会後に人数や流れが変わっていないか確かめてみてください。対応の考え方は習い事に行きたがらない・続かないときにまとめています。
- 学校でも集団がつらそうです。習い事は減らしたほうがいいですか?
- 学校で力を使い切っている時期は、習い事を減らす・休むのもひとつの方法です。一方で、習い事が「安心できる場所」になっている子もいます。終わったあとの表情を目安にしてください。
まとめ
- 「集団が苦手」の中身は、刺激・見通し・ペース・人との距離など、子どもによって違う
- 個別・少人数・オンラインに優劣はなく、今のその子に合う形を選ぶ
- 種類よりも、活動のつくり(自分の課題に向かえるか、流れが決まっているか)を見る
- 安心できる場所がひとつあると、人との関わりはそこから広がる
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放課後プロジェクトスクールを見る監修:佐藤仁美(作業療法士/NIJINアカデミー東金校 教室長)

