聴覚過敏の子の習い事|音がつらい子が続けやすい教室の選び方と環境の整え方

聴覚過敏の子の習い事|音がつらい子が続けやすい教室の選び方と環境の整え方

体育館に入ったとたん耳をふさぐ。プールの笛が鳴るたびに体が固まる。習い事から帰るとぐったりして、夕飯も食べずに寝てしまう。

活動そのものは好きそうなのに、音がつらくて続けられない子がいます。聴覚過敏は、本人のがんばりや「慣れ」で乗り越えるものではありません。作業療法士の監修のもと、音に敏感な子が習い事でつらくなりやすい場面と、続けやすい教室の選び方、環境の整え方をまとめます。

この記事でわかること

  • 聴覚過敏の子が習い事でつらくなりやすい音の場面
  • 音がつらい子が続けやすい教室の5つの条件
  • イヤーマフや席の工夫など、家庭と教室でできること
  • 音を自分で調整できるオンライン習い事の使い方
目次

聴覚過敏とは?「わがまま」ではなく音の感じ方の違い

聴覚過敏は、多くの人が気にならない音を、苦痛や痛みとして感じてしまう状態です。発達特性のある人には、聴覚や視覚などの感覚刺激に敏感な人が多いとされています(埼玉県 発達障害総合支援センター「感覚過敏のある人に対する優しい社会環境づくり」)。

つらくなる音は「大きな音」だけではありません。

  • ガヤガヤした話し声や、体育館・プールの反響音
  • 笛・ピストル・タイマーなど、突然鳴る音
  • 掃除機やエアコン、換気扇のように鳴り続ける機械音
  • 鉛筆の音や食べる音など、特定の小さな音

同じ子でも、疲れている日や不安が強い日は、いつもより音がつらくなりやすいものです。「昨日は平気だったのに」は、わがままではなく、その日の体調による変動と考えてください。

「慣れさせる」は近道になりません

苦手な感覚を無理に克服させようとすると、本人にはいっそうの苦痛やストレスになり、それが感覚過敏の悪化にもつながるとされています。まず音を減らす・避ける工夫をして、安心して過ごせる状態をつくることが先です。なお、刺激への反応が鈍い「感覚鈍麻」の子もいて、感じ方は一人ひとり違います。

WHO・厚生労働省は、感覚の過敏さをどう捉えているか

感覚の過敏さには、「本人が慣れる」より「環境の側を調整する」。これは、公的機関が示している方向とも重なります。

  • WHO(世界保健機関):自閉スペクトラム症の特徴のひとつに、感覚に対する通常と異なる反応を挙げています。そのうえで、本人への支援は、地域や社会の側を利用しやすく、受け入れやすくしていく取り組みとあわせて行う必要があるとしています。
  • 厚生労働省:福祉事業者向けのガイドラインで、自閉症スペクトラムの特性として音や気温などの感覚刺激への敏感さを挙げ、対応として音・肌触り・室温など感覚面の調整を行うことを示しています。

感覚の過敏さは、自閉スペクトラム症のある人だけに見られるものではありません。また、このガイドラインは福祉サービスの事業者に向けたもので、習い事の教室を直接の対象にしたものではありません。ただ、「刺激を減らす方向で環境を整える」という考え方は、習い事の場でもそのまま参考になります。

出典:WHO「Autism」ファクトシート(英語)/厚生労働省「障害者差別解消法 福祉事業者向けガイドライン」

習い事でつらくなりやすい音の場面

同じ習い事でも、教室の広さや人数で音の環境は大きく変わります。種類ごとの「つらくなりやすい音」と、見学のときに確かめたい点を整理しました。

習い事つらくなりやすい音見学で確かめたいこと
スイミングプールの反響、笛、水しぶき、更衣室の声人数の少ない時間帯があるか、笛を使う頻度
体操・ダンス・武道体育館の反響、音楽の音量、号令やかけ声音楽の音量を下げてもらえるか、スピーカーの位置
音楽教室複数の楽器が同時に鳴る、隣の部屋の音個人レッスンがあるか、防音の程度
学習塾・そろばん珠をはじく音、ページをめくる音、タイマー、隣の声席を選べるか、個別ブースの有無
サッカー・野球ホイッスル、コーチの大声、保護者の声援コーチの声かけのトーン、試合の頻度
オンライン習い事ほかの参加者のマイク音、通知音参加者のミュート運用、1回の人数

屋内で天井が高く床が硬い場所(体育館、プール)は音が響きやすく、聴覚過敏の子には負担が大きくなりがちです。同じ運動系でも、屋外や畳・マットの部屋では感じ方が変わることがあります。

音がつらい子が続けやすい教室の5つの条件

  1. 少人数、または個別で受けられる
    人数が減ると、話し声と動く音がまとめて減ります。同じ教室でも、空いている曜日・時間帯を選ぶだけで変わることがあります。
  2. 部屋が響きにくい
    カーペットやマットのある部屋、仕切りのある小さめの部屋は、反響が少なくなります。
  3. 突然の音が少ない、または予告がある
    「今から笛を鳴らすよ」「次は音楽をかけるよ」と一言あるだけで、身構える準備ができます。
  4. イヤーマフなどの使用と、途中の休憩が認められている
    道具を使うこと、つらいときに部屋の外で休むことを、最初から「いいよ」と言ってもらえる教室は安心です。
  5. 先生の声が穏やかで、指示が目でも分かる
    大きな声での指示が中心の教室より、見本やホワイトボードで伝える教室のほうが、音の負担も聞き取りの負担も軽くなります。

体験レッスンでどこを見ればよいかは、発達特性のある子の習い事体験レッスン|チェックポイントと質問リストで詳しくまとめています。

家庭と教室でできる環境の整え方

イヤーマフ・耳栓などの道具を使う

イヤーマフ、耳栓、ノイズキャンセリング機能のあるイヤホンは、音を和らげる助けになります。ただし、音をすべて消す道具ではなく、先生の声も小さくなります。

  • 説明を聞くときは外す、片耳だけにするなど、使い方を先生と決めておく
  • 家で試してから教室に持っていく(締めつけ感が苦手な子もいます)
  • 「つけたい」と本人が言える合図を決めておく

どの場面でどのくらい使うかに迷うときは、主治医や作業療法士などの専門職に相談してください。

ヘッドホンをつけて机でノートを書く子ども

席や時間帯を選ぶ

  • スピーカーや出入口、エアコンから離れた席にしてもらう
  • 端の席や、先生に近い席にしてもらう
  • ほかの子より少し早く入室して、静かなうちに場所に慣れる

音の「予告」と「逃げ場」を用意する

いつ鳴るか分からない音は、同じ大きさでも負担が大きくなります。大きな音の前に合図をもらうこと、つらくなったら行ける場所(廊下、受付の椅子など)を決めておくことを、先生にお願いしてみてください。伝え方の例文は習い事の先生に発達特性をどう伝える?にあります。

習い事の前後を詰め込まない

学校で一日過ごしたあとは、音への余裕がすでに減っています。学校のあとすぐの時間帯がつらいなら、休日の午前に変える、習い事の前に静かな休憩をはさむ、といった調整が役に立ちます。

音を自分で調整できる「オンライン習い事」という選択肢

オンラインの習い事は、音量を手元で下げられる、使い慣れたヘッドホンを使える、つらくなったら席を離れられる、という点で聴覚過敏の子と相性がよい面があります。

自宅でオンラインの先生と絵を描く子どもの写真調イメージ

一方で、気をつけたい点もあります。

  • ほかの参加者のマイクから生活音やハウリングが入ることがある
  • 画面を見続ける疲れは別にある
  • ヘッドホンの締めつけが苦手な子もいる

体験のときに、参加者のマイクは基本ミュートか、1回の人数は何人かを確かめておくと安心です。オンライン習い事の全体像はオンライン習い事の選び方ガイド、小学生向けの種類や料金の見方は小学生のオンライン習い事ガイドを参考にしてください。

よくある質問

少しずつ音に慣れさせたほうがいいですか?
無理に慣れさせる必要はありません。安心できる環境で好きな活動を続けるうちに、結果として過ごせる場面が広がることはありますが、それは我慢の訓練とは別のものです。
イヤーマフをつけて習い事に行くのは、先生に失礼になりませんか?
失礼にはなりません。事前に「音を和らげるために使います。説明のときは外します」と伝えておくと、先生も安心します。2024年4月からは、民間の教室を含む事業者にも、障害のある人への合理的配慮の提供が義務づけられています(内閣府リーフレット)。
どのくらいつらそうなら、専門機関に相談したほうがいいですか?
耳を痛がる、音が怖くて外出や登校ができない、眠れないなど、生活に支障が出ているときは、小児科や耳鼻咽喉科、自治体の発達相談窓口に相談してください。相談先の探し方は子どもの発達障害はどこに相談する?にまとめています。

まとめ

  • 聴覚過敏は感じ方の違いで、慣れや我慢で解決するものではない
  • 習い事は「種類」より「音の環境」(人数・反響・突然の音)で選ぶ
  • 道具・席・予告・逃げ場の4つを、先生と一緒に整える
  • 音量を自分で決められるオンラインも、選択肢のひとつ

好きなことを、安心できる音の中で続けられる場所は見つかります。感覚過敏そのものについては【完全ガイド】感覚過敏とは?もあわせてご覧ください。

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監修:佐藤仁美(作業療法士/NIJINアカデミー東金校 教室長)

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