「療育に通っているなら、習い事はいらない?」「習い事で運動しているから、療育はやめてもいい?」。放課後の時間が限られる中で、どちらを優先するか迷う保護者は少なくありません。
療育と習い事は、目的も、制度も、関わる人も違います。どちらが上ということはなく、役割が違うものです。この記事では、放課後等デイサービスなど子どもの発達支援に関わってきた作業療法士の監修のもと、2つの違いと、併用するときの考え方を整理します。
この記事でわかること
- 療育(放課後等デイサービス)と習い事の違い
- どちらを選ぶか迷ったときの考え方
- 併用するときに気をつけたい3つのこと
- 療育先と習い事をつなぐ情報共有のしかた
療育と習い事の違い
ここでは、小学生以上の子が利用する「放課後等デイサービス」を療育の代表として比べます。
| 項目 | 放課後等デイサービス | 習い事 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 児童福祉法に基づく福祉サービス | 民間の教室・サービス |
| 目的 | 生活能力の向上に必要な支援、社会との交流の促進 | 特定の技能や知識を身につける、楽しむ |
| 対象 | 学校(幼稚園・大学を除く)に就学している、障害のある子ども | 誰でも |
| 利用の手続き | 市区町村に申請し、通所受給者証の交付を受ける | 教室に申し込む |
| 計画 | 一人ひとりに個別支援計画を作成し、定期的に見直す | 教室のカリキュラムに沿う |
| 費用 | 原則1割負担。世帯の所得に応じて月額の上限がある | 月謝は全額自己負担 |
| 活動の決め方 | その子の課題や目標に合わせて組み立てる | 習う内容が先に決まっている |
放課後等デイサービスの支援は、国のガイドラインで「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」の5つの領域から組み立てることとされています(こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」放課後等デイサービスガイドライン)。
費用の違い
放課後等デイサービスの利用者負担には、世帯の所得に応じた月額の上限があります。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割28万円未満) | 4,600円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
出典:厚生労働省「障害者福祉:障害児の利用者負担」。通所施設を利用する場合の金額です。おやつ代や教材費などの実費は別にかかります。自治体によっては独自の軽減制度があります。
利用できる日数は、受給者証に記載された支給量の範囲内です。申請に必要な書類は自治体によって異なり、障害者手帳がなくても、医師の意見書などで利用できる場合があります。くわしくはお住まいの市区町村の障害福祉担当課に確認してください。
WHOのICFで見る、療育と習い事の役割
WHO(世界保健機関)が2001年に採択した国際生活機能分類(ICF)は、人の生活を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つで捉え、そこに「環境因子」が影響すると考えます。厚生労働省はICFの日本語版を公表し、マイナス面ではなく「生活機能」というプラス面からみる視点に転換したこと、環境因子の観点が加わったことを説明しています。
この枠組みで見ると、2つの役割の違いが整理できます。
- 療育:その子の「活動」のしやすさを育て、環境や関わり方を整える
- 習い事:好きなことを通じて、家庭や学校の外に「参加」の場を持つ
またWHOは、自閉スペクトラム症のある子について、根拠のある心理社会的な支援に早くつながることが、コミュニケーションや人との関わりの助けになるとしています。同時に、必要な支援は一人ひとり違い、時間とともに変わるものだともしています。併用のしかたや回数は、一度決めたら終わりではなく、子どもの今の状態に合わせて見直してください。
出典:厚生労働省「『国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-』(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について」/WHO「International Classification of Functioning, Disability and Health (ICF)」(英語)/WHO「Autism」ファクトシート(英語)
「どっち?」と迷ったときの考え方
2つは競合するものではありません。次のように整理すると、選びやすくなります。
| 今の子どもの状況 | 考え方 |
|---|---|
| 生活や学校の中で困りごとが大きい | まず療育や相談機関につながり、困りごとへの支援を整える |
| やりたいこと・好きなことがはっきりしている | 習い事で「好き」を伸ばす。必要な配慮を教室に相談する |
| 集団での経験を積ませたいが、不安が大きい | 支援のある場(療育)で経験を重ね、様子を見て習い事を足す |
| 療育には通っているが、本人が物足りなそう | 興味のある分野の習い事を1つ加える |
療育は「困りごとに合わせて環境と関わりを整える場」、習い事は「好きなことを選んで取り組む場」。そう捉えると、両方に意味があることが分かります。

相談先を探している場合は、子どもの発達障害はどこに相談する?相談先・学校支援・利用できる制度のガイドをご覧ください。
併用するときに気をつけたい3つのこと
1. 1週間の予定を詰め込みすぎない
学校、療育、習い事。どれも子どもにとっては「外でがんばる時間」です。何もない放課後が週に1〜2日はあるか、確かめてみてください。予定を紙に書き出して、子どもと一緒に見るのもおすすめです。
2. 習い事を「訓練」にしない
「体幹を鍛えるために体操」「集中力をつけるために習字」。こうした選び方が悪いわけではありません。ただ、本人が楽しめていないのに、苦手を克服する目的だけで続けると、習い事が負担になります。習い事の軸は「本人がやりたいかどうか」に置いてください。

3. 疲れのサインを見る
- 朝起きにくくなった
- 帰宅後に荒れる、または何もしなくなる
- 好きだったことをやらなくなった
こうした様子が出てきたら、どれかを減らす合図です。考え方は習い事に行きたがらない・続かないときにまとめています。
療育先と習い事をつなぐ
療育の場でうまくいっている関わり方は、習い事でも役に立ちます。
- 療育の担当者に聞く:「習い事の先生に伝えるなら、どんなことを伝えるとよいですか」
- 個別支援計画を見返す:今の目標と、効果のあった支援方法が書かれています
- 習い事の先生に渡す:習い事に関係する部分だけを、1枚にまとめる
まとめ方のひな形は習い事の先生に発達特性をどう伝える?|例文つきサポートシートにあります。逆に、習い事で見つけた「好き」や「できた」を療育の担当者に伝えると、支援の内容に生かしてもらえることがあります。
習い事に近い活動をしている事業所もあります
運動、音楽、プログラミングなど、特定の活動に力を入れている放課後等デイサービスもあります。ただし、制度上の目的はあくまで一人ひとりの発達支援です。見学のときは、活動の内容に加えて、個別支援計画がどのように作られ、見直されているかも聞いてみてください。
よくある質問
- 療育に通っていることを、習い事の先生に伝えるべきですか?
- 伝える義務はありません。ただ、「療育ではこの方法がうまくいっています」と具体的な関わり方を共有できると、先生も対応しやすくなります。
- 習い事を始めたら、療育は減らしたほうがいいですか?
- 子どもの疲れ具合によります。始めて1〜2か月は様子を見て、負担が大きそうなら、療育の担当者と相談して日数を調整してください。
- 療育を「卒業」して、習い事だけにする目安はありますか?
- 決まった目安はありません。困りごとが減り、学校や家庭で落ち着いて過ごせている、本人が習い事を楽しめている、という状態が続いていれば、担当者と相談しながら回数を減らしていく方法があります。必要になれば、また利用を相談できます。
まとめ
- 療育は福祉サービス、習い事は民間の教室。目的も手続きも費用のしくみも違う
- どちらかを選ぶものではなく、役割の違うものとして組み合わせられる
- 併用するときは、予定を詰め込みすぎず、何もない放課後を残す
- 療育でうまくいっている関わり方を、習い事の先生にも共有する
「好き」から始める放課後の学び
NIJIN放課後プロジェクトスクールは、子どもの好き・興味をプロジェクトにして、社会へつなげていく学びの場です。平日の放課後に、オンラインで全国の仲間とつながれます。
放課後プロジェクトスクールを見る監修:佐藤仁美(作業療法士/NIJINアカデミー東金校 教室長)

