日本語補習校が近くにない場合も、子どもの日本語学習を止める必要はありません。まず近隣校の通学可能性を確認し、難しければオンラインの集団授業、個別指導、家庭学習、同世代との対話という5つの方法から、子どもの目的と生活時間に合う組み合わせを選べます。「補習校の代わり」は一つの学校名ではなく、何を補いたいかで決まります。
海外で暮らす家庭の事情は、帰国予定、現地校の宿題、家庭内の使用言語、時差によって異なります。この記事では、制度上の補習授業校と民間のオンライン学習の違いを整理し、公式情報をもとに候補を比べます。料金や募集状況は変わるため、申し込み前に各公式ページで再確認してください。
日本語補習校が近くにないとき、最初に決めるのは「学習の目的」
「日本語を続けたい」の中身を分けると、探す先がはっきりします。帰国後に日本の教科書へつなぎたい家庭と、祖父母や同世代と日本語で話す機会を増やしたい家庭では、必要な学び方が違います。教科の進度と、日常で日本語を使う場は、別々に点検しましょう。
最初の3問
- 帰国・編入の予定はあるか。あるなら、いつ、どの学年か。
- 今困っているのは、国語の読み書き・漢字・算数か、日本語で話す相手の不足か。
- 現地校のあとに無理なく確保できる曜日と時間はいつか。
保護者が日本語を話していても、学校や友達との時間が別の言語中心なら、「話せるが書くのは苦手」「教科書は読めるが同世代と話す場が少ない」など、力の偏りが生まれることがあります。いきなり週の授業数を増やす前に、本人がどんな場面で日本語を使いたいかも聞いてみてください。
教科の進度を重視する家庭には補習授業校やオンラインの国語授業、同世代との会話機会を探す家庭には対話型の学びも候補です。後者を検討する場合、ともだちじゃぱんの現在利用できる内容と開校予定を公式案内で確認できます。
まず近くの補習授業校を探す:一覧に名前があっても通学可能とは限らない
外務省は、補習授業校を現地校や国際学校に通う子どもが、土日や放課後に日本の教科書を使って国語など一部教科を学ぶ在外教育施設として説明しています。外務省の海外教育ページから、指定された施設の一覧を確認できます。一覧に掲載されていることと、自宅から無理なく通えることは別です。
同じ国でも学校まで片道数時間かかることがあります。週末の送迎、家族の予定、子どもの疲労を含めて判断してください。学校へは、対象学年、国籍や日本語力の条件、開講日、受け入れ枠、教材、費用、体験や見学の可否を直接確認します。年度ごとに校舎や曜日が変わる可能性があるため、古い一覧だけで決めないことが大切です。
| 確認項目 | 学校に聞く具体的な質問 |
|---|---|
| 通学 | 授業場所、開始・終了時刻、年間の登校日、オンライン併用の有無 |
| 学習 | 教科、使用教材、宿題、学年と日本語力の扱い |
| 費用 | 授業料以外の入学金、教材費、行事費、送迎費 |
近隣校が見つかっても、通学の負担が大きければ、オンラインを主にして季節行事や地域の日本語コミュニティだけ対面で参加する方法もあります。以下は、その判断をするための5つの選択肢です。
補習校の代替になる5つの選択肢を比較
同じ「オンライン」でも、教科の授業、個別の弱点補強、会話の居場所では役割が違います。次の表は優劣ではなく、最初に検討する入口を示したものです。費用は各運営者の条件によって変わるため、共通の相場を断定していません。
| 選択肢 | 向く目的 | 必ず確認する点 |
|---|---|---|
| ①少し遠い補習授業校 | 対面で教科と地域のつながりを持つ | 往復時間、出席条件、年間の費用 |
| ②オンライン集団授業 | 国語などを時間割に沿って学ぶ | 時差、学年・レベル、宿題、授業料 |
| ③オンライン個別指導 | 漢字・作文・帰国前の課題を絞る | 講師、時間、指導範囲、1回の費用 |
| ④教科書と家庭学習 | 短い時間を毎週積み重ねる | 教科書の受給条件、親の負担、継続方法 |
| ⑤オンラインの同世代交流 | 日本語を人との対話で使う | 見守り、活動内容、開始状況、料金 |
①〜⑤は併用できます。たとえば、教科書で音読を続けながら週1回の個別指導を受け、同世代と話す活動を別に選ぶ方法です。ただし、現地校の宿題や休息を圧迫するほど予定を詰める必要はありません。

①遠方の補習授業校を選ぶなら、年間の通学負担を先に計算する
対面の補習授業校には、先生や同年代の子と同じ空間で学ぶ価値があります。一方、往復2時間の送迎を年間40回行えば、移動だけで80時間です。これは例示の計算であり、各校の実際の授業日数ではありません。「片道何分なら続けられるか」を、子ども本人と決めてから問い合わせましょう。
見学時は、子どもの日本語力とクラスの授業言語、読む・書く課題の量、欠席時の補完方法も見てください。帰国が近い家庭には日本の教科書の進度が重要かもしれませんが、永住を考える家庭には、日本語で安心して話せる仲間がいることのほうが優先される場合もあります。年度途中の編入、現地校の行事との重なりも確認します。
②オンライン集団授業は、教科と時差が合うかで選ぶ
海外子女教育振興財団のGOALは、在外教育施設と協働し、ライブ型やアーカイブ型の授業を提供するプラットフォームです。公式一覧には、西大和学園オンライン補習校やブルーミントン日本語補習校など参画校ごとに教科・学年・曜日が示されています。「GOALならどの国でも同じ時間に同じ授業を受けられる」とは考えず、参画校ごとに確認してください。
民間の例として、こくごのじかんは、幼児・小中学生向けの少人数グループと個別コースを公式サイトで案内しています。国語の読み書き・会話を組み合わせたコース、1回の授業時間、月額料金を公開しています。Success Academyは4歳から中学生向けとして国語・算数のオンライン授業や個別レッスンを案内しています。どちらも、希望する時間帯・教科・レベルで実際に受けられるクラスを確認してから比較するのが確実です。
集団授業では、発言の順番が回る人数か、欠席したときの対応はどうか、教科書と授業の対応関係、宿題に必要な家庭の時間を聞きます。北米・欧州・アジアで現地の放課後は日本時間と異なるため、広告の「世界中から参加可能」だけで予定を組まないでください。
③個別指導は、困りごとが絞れている家庭に向く
漢字、作文、読解、帰国後の編入準備など、課題が明確なら個別指導は時間を使いやすい方法です。たとえば「毎週、国語の教科書を一緒に読み、200字の作文を見てほしい」と伝えると、指導内容を相談しやすくなります。個別指導を選ぶ前に、今できることと、3か月後に確かめたいことを一つずつ言葉にしましょう。
オンライン個別コースがある事業者でも、講師の担当範囲、授業の長さ、振替、教材費、時差対応は異なります。上述のこくごのじかんは公式料金表にプライベートコースを掲載していますが、希望の時間帯に空きがあるかは別の確認が必要です。日本語の会話を楽しむ場を求める子には、一対一だけでは同世代との接点が増えにくいこともあります。その場合は交流の場を別に用意します。

④教科書と家庭学習は、費用を抑えながら学習の軸を作れる
文部科学省は在外日本人子女への小・中学校用教科書の無償給与を案内しています。ただし、誰でも無条件に受け取れる制度ではありません。JOESの申請案内では、日本国籍、海外滞在予定、義務教育年齢などの条件と、出国前・滞在中の手続きを示しています。送料や梱包手数料がかかる場合もあります。対象条件と申請窓口は、渡航時期・滞在先に合わせて公式案内で確かめてください。
教材を手に入れた後は、毎日長く机に向かわせる必要はありません。週3回、各10〜15分程度を目安として「音読→気になった言葉を一つ使って話す→短い一文を書く」といった小さな循環を作ると、家庭でも続けやすくなります。これは家庭で試すための提案であり、制度が定める学習量ではありません。子どもが嫌がるときは、量を減らし、好きな本や家族との会話から入り直しましょう。日本語を嫌がるときの関わり方は、こちらの記事でも整理しています。
⑤同世代との対話を重視するなら、ともだちじゃぱんの現状も確認する
日本語で話す相手が家族だけになっている家庭には、同世代と関わるオンラインの場も候補です。ともだちじゃぱんの入学案内は、子ども同士の対話やプロジェクト型の学びを目指すオンライン日本語スクールと説明しています。ただし2026年10月17日時点では開校前で、本来の8人制クラスはまだ始まっていません。
現在の案内では、希望する家庭向けに先生が一人ひとりを担当する「専任サポート体験プラン」を用意しています。公式料金ページには月16,500円(税込)とありますが、これは開校前の特別プランの料金で、開校後の学費ではありません。開校時期は入学案内では「人数が集まりしだい」と説明され、別ページにパイロット予定の記載もあります。確定日と希望地域での時間割は、申し込み前に直接確認してください。
日本の同世代との交流や、好きなことを日本語で話す経験を重視する家庭には検討する価値があります。一方、日本の教科書の進度をすぐに確保したい、特定の試験対策を優先したい家庭は、授業が始まっているオンライン補習校や個別指導を先に比較するとよいでしょう。ともだちじゃぱんは日本の学校の卒業資格を出す教育課程でも、現地校の就学義務の代替でもありません。
料金と時間を同じ物差しで比べる:月額だけでは決めない
補習授業校には通学費や行事費、オンライン授業には教材や端末、個別指導には回数による増減があります。通貨が異なる事業者を比べるときは、その日の為替だけで結論を出さず、請求通貨と支払い手数料、休会・解約条件を確認しましょう。「週に何分、子どもが実際に日本語を使うか」まで含めて比較すると、月額の意味が見えてきます。
| 比較軸 | 書き出す内容 |
|---|---|
| 年間費用 | 月額×月数+入学金・教材・送迎・決済費用 |
| 家族の時間 | 授業+宿題+送迎+保護者の同席・準備 |
| 学びの中身 | 読む・書く・聞く・話す、教科、同世代との交流 |
| 変更のしやすさ | 体験、振替、休会、解約、帰国後の継続 |
なお、補習校に通わず現地校を続けながらオンラインで学ぶことは、複数の学びを組み合わせる方法です。現地校への在籍や手続きは居住地の制度に従って確認してください。並行して学ぶ負担を考える際は、ダブルスクールの選び方も参考になります。
帰国予定・永住予定・日本語を嫌がる場合で、組み合わせを変える
同じ家庭でも、子どもの状態が変われば合う方法は変わります。半年に一度、目的と負担を見直せる組み合わせにしておくと、続け方を調整できます。
- 1〜2年以内に帰国予定:日本の教科書の学年・教科と現在地を比べ、必要な科目を集団授業または個別指導で補います。帰国予定校の編入条件は学校へ確認します。
- 長期滞在・永住予定:読む・書く力に加え、日本語を使う理由や同世代との接点を重視します。家庭学習と交流の場を少量ずつ組み合わせられます。
- 日本語の学習を嫌がる:まず本人の負担や理由を聞き、ドリルの量を減らします。好きな本、ゲーム、会話など入り口を選び直し、必要なら指導者に相談します。
- 現地校で疲れている:授業数を増やす前に休息を守ります。日本語学習を「もう一つの宿題」にしないよう、曜日を固定して短く始める方法があります。
現地校になじめない、補習校でも居場所を感じにくいという悩みは、教科の不足とは別の相談が必要です。海外で子どもの居場所がないと感じるときの記事では、その点を詳しく扱っています。

申し込み前のチェックリスト:体験では子どもの反応を見る
公式サイトの説明だけでは、授業との相性まではわかりません。体験や相談ができる場合、保護者が質問を用意しつつ、子どもが安心して参加できたかを見る時間にしましょう。「よいサービスか」だけでなく、「この子の生活で続くか」を確かめることが目的です。
- 現地時間で無理のない曜日か。夏時間の切り替え時も確認したか。
- 日本語力がクラスと合うか。読み書きと会話をどう分けて見るか。
- 授業中、子どもに発言・質問の機会があるか。
- 先生が子どもの困りごとをどう把握するか。
- 体験後に年間費用、振替、休会、解約条件を確認できるか。
- 顔出し、録画、チャットなどの安全・プライバシーの扱いは明確か。
体験直後に申し込む必要はありません。子どもには「楽しかった?」だけでなく「また話したい人がいた?」「難しかったところは?」と聞くと、学習内容と居心地を分けて考えやすくなります。
よくある質問
Q1. 日本語補習校が近くにないなら、オンラインだけで十分ですか?
目的によります。国語の進度を追う授業と、同世代との対面交流は別の役割です。オンライン授業を選び、地域の日本語コミュニティや家庭での会話を組み合わせることもできます。何が足りないかを一つずつ確認してください。
Q2. オンライン補習校は、外務省指定の補習授業校と同じですか?
名前が似ていても、運営主体や制度上の位置づけは同じとは限りません。外務省指定校かどうかは公式一覧で、民間サービスの内容は各運営者の案内で確認します。
Q3. 日本の教科書は海外でも受け取れますか?
対象条件を満たす子どもには無償給与の制度があります。国籍、年齢、滞在予定などの条件があり、出国前と滞在中で窓口が異なります。JOESの最新案内を確認してください。
Q4. ひらがなをまだ読めない子は、どこから始めればいいですか?
学年だけでクラスを決めず、話す・聞く力と文字の理解を別に伝えます。遊びや絵本、会話から始められるコースがあるかを相談してください。最初から同学年の教科書進度に合わせる必要があるかも確認します。
Q5. 帰国が近い場合は、何を優先しますか?
帰国予定校・自治体に編入時の学年や必要書類を確認し、現在の国語などの学習状況を整理します。授業だけでなく、日本語で質問する・説明する場面も練習しておくと、困りごとを把握しやすくなります。
Q6. 時差が大きい地域でも参加できますか?
サービスごとに開講時間が異なります。GOALは参画校ごとに曜日・時間が異なり、民間スクールも空き枠が変わります。現地時間への換算に加え、夏時間の開始・終了時を確かめてください。
Q7. ともだちじゃぱんの8人制クラスには、今入れますか?
2026年10月17日時点の入学案内では開校前とされ、現在は専任サポート体験プランを案内しています。8人制クラスの開始日、時間割、開校後の料金は公式窓口で確認してください。
今日からできる順番:探す、比べる、短く試す
近くに補習校がないことは、日本語を学ぶ機会がないことと同じではありません。最初の一週間は、①外務省の一覧と地域の日本語コミュニティを確認、②家庭の目的を一つ決める、③候補を二つまで絞って時間・費用を問い合わせる、④子どもと短く試す、という順番で十分です。
教科書の進度を重視するならGOALの参画校やオンライン国語授業、個別の弱点補強なら個別指導、まず日本語を使う相手や楽しさが必要なら対話の場を見ます。いずれも現地校を続ける家庭の生活を基準に選び、子どもの反応を見て調整してください。
確認した一次情報
- 外務省:海外教育と補習授業校の説明・指定校一覧
- 海外子女教育振興財団:GOALの参画校・教科・対象・曜日
- 文部科学省:在外日本人子女への教科書給与/JOES:申請条件と手続き
- こくごのじかん:コースと料金/Success Academy:対象と授業形態
- ともだちじゃぱん:入学案内/料金/学び方
情報確認日:2026年10月17日。料金・募集・授業時間は変わるため、利用前に各公式ページと窓口で再確認してください。記事中の写真は学習場面を表す生成イメージです。


