「子どもが発達障害と診断されたが、実は親の自分も同じかもしれない」——そう気づく親は少なくありません。子育てには、親自身の特性への理解と工夫が欠かせない場面があります。
ADHDの基本的な特性・3つのタイプ・受診を考える目安は、ADHD(注意欠如・多動症)とは?特性の3タイプと相談の目安にまとめています。あわせてご覧ください。
「親も発達障害かもしれない」と気づいたとき
子どもが発達障害の診断を受けたとき、「もしかしたら自分も同じかもしれない」と感じる保護者は少なくありません。ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)には遺伝的な要因が関わることが知られており、親子で似た特性を持つケースは珍しくないのです。
世界保健機関(WHO)が定める国際疾病分類第11版(ICD-11)では、ADHDやASDは「神経発達症群」に分類されています。生まれつきの脳の発達の違いによって、注意・行動・対人関係などに特徴的な現れ方が生じる状態であり、育て方やしつけの結果ではないとされています。
厚生労働省も、発達障害者支援法にもとづき、子どもだけでなく大人の発達障害についても相談・支援体制を整備する必要性を示しています。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターでは、成人期の発達障害に関する情報提供や家族支援の取り組みが行われています。
親自身が発達障害の特性を持っていることは、特別なことでも珍しいことでもありません。大切なのは、その特性を正しく理解し、子育ての中でどう工夫していくかを考えることです。この記事では、ADHD・ASD傾向のある親が、子どもをサポートしながら自分たちも無理なく過ごせるための戦略を紹介します。
親の発達障害が子育てに与える影響
親自身がADHD傾向やASD傾向を持っている場合、子育てには特有の難しさが生じることがあります。ここでは、それぞれの特性が子育てにどのような影響を与えるのかを整理します。
親がADHD傾向の場合
親がADHD傾向を持っている場合、次のような困りごとが子育ての場面で表れやすくなります。
- 子どもの忘れ物・遅刻を注意しにくい(自分も同じ経験があるため)
- 予定管理や家事が後回しになりやすい
- 子どもとの約束をうっかり忘れてしまう
- 感情的になりやすく、一貫した対応が難しい
親がASD傾向の場合
親がASD傾向を持っている場合には、次のような特徴が見られることがあります。
- 子どもの心理状態(疲れ、不安など)を読み取りにくい
- 子どもが求める「柔軟な対応」が難しく感じられる
- ルール中心の関わりになりやすく、子どもが息苦しさを感じることがある
- 感覚過敏が重なると、子ども自身の感覚面のニーズを見落としやすい
共通する課題
特性の種類にかかわらず、次のような課題は共通して見られます。
- 親自身のストレスが高まりやすく、子どもに強くあたってしまうことがある
- 子どもからの「できていない」という指摘に傷つき、自己肯定感が下がりやすい
- 「自分が情報収集をしなければ」と、支援制度や学校対応を一人で抱え込みすぎてしまう
これらの困りごとは、親としての愛情や努力が足りないために起こるのではありません。特性による「感じ方・捉え方の違い」が背景にあることを理解しておくことが大切です。

親も子も「特性のある状態」を受け入れる
発達障害は、親の養育方法によって生じるものではありません。同時に、親自身の「自分のせいだ」という自責感は、子育てをより重く、苦しいものにしてしまいます。
WHOのICD-11をはじめとする国際的な診断基準においても、発達障害は生まれつきの脳機能の特性として位置づけられており、しつけや愛情不足が原因ではないとされています。厚生労働省も同様に、発達障害を「特性」として理解し、環境を整えることの重要性を発信しています。
親に大切な視点として、次の3つが挙げられます。
- 「完璧な親になる」ことを目指すのではなく「今できることを続ける」という姿勢を持つ
- 子どもと似た特性を持つことは、その子の気持ちを理解しやすいという強みにもなり得る
- 子ども自身が「親も工夫しながら生きている姿」を見ることは、将来の自己肯定感につながる
親も子も、それぞれの特性を「悪いもの」として否定せず、「工夫すればうまく付き合えるもの」として捉え直すことが、家庭全体の安心につながります。

親の発達障害がある場合の実践的なサポート戦略
ここからは、日常生活の中で取り入れやすい具体的な工夫を紹介します。
1. スケジュール・タスク管理
- スマートフォンのアラームやカレンダーに、親子の予定をまとめて入力する
- 「朝の準備チェックリスト」を壁に貼り、親子で一緒に確認する
- 子どもに「リマインダー役」をお願いすることも、良い経験になる
2. 感情調整のサポート
- 子どもに強く当たってしまったときは、「ごめんね、今疲れていたの」と素直に伝える
- 親自身が「困った」と感じたときの対処法(深呼吸する、別室へ移動する、パートナーと交代するなど)をあらかじめ決めておく
3. 支援制度の活用
- 情報収集をすべて一人で抱え込まないようにする
- スクールカウンセラーや福祉窓口の職員に「親自身も困っている」ことを伝え、必要な支援を具体的に依頼する
厚生労働省が進めるペアレントトレーニングやペアレントメンター事業など、保護者同士が支え合う仕組みも各地に整備されています。
4. パートナーシップ・家族サポート
- 配偶者やパートナーに、自分の特性と子育てで工夫していることを共有する
- 親のキャパシティを超えたときは、パートナーが「子どもの友人関係の聞き取り」など一部の役割を担う
- 親族や友人など、「子どもを理解してくれる大人」を家庭の外にも確保しておく
一つの工夫がすべての家庭に合うわけではありません。無理のない範囲で、できることから少しずつ取り入れていくことが、長く続けるコツです。

参考記事:「家族崩壊の理由と乗り越え方」──タツロー校長が語る、”不登校”と”夫婦関係”のリアル
▶ 【不登校で夫婦関係に危機7割】不登校が家族崩壊に繋がりやすい理由と乗り越え方を解説します|日本最大級のフリースクール校長が解説(タツロー校長 公式YouTube)
子ども側の理解と親子で育つ関係
子どもが親の特性を理解することも、家庭の安心につながります。年齢に応じた伝え方を工夫することが大切です。
- 「お母さんは忘れやすい脳を持っているから、リマインダーが必要なんだよ」など、年齢に応じてわかりやすく説明する
- 「親にも得意なことと苦手なことがあって、工夫しながら生きている」という姿を日常の中で示す
- 親が失敗したときは、責め合うのではなく「一緒に工夫を考える」経験を積み重ねる
厚生労働省の発達障害者支援施策においても、家族全体を支援の対象としてとらえる視点が重視されています。親子がそれぞれの特性を認め合いながら育っていくことは、特別なことではなく、多くの家庭で取り組まれている工夫の一つです。
「うまくいかないことがあっても、工夫すれば大丈夫」という親の姿そのものが、子どもにとって大きな安心材料になります。
親自身のケアと支援の活用
子育てをしながら、自分自身の発達特性とも向き合うことは、想像以上に大きな負担になります。親自身が心身の余裕を保つことも、子育てを続けるうえで欠かせない要素です。
具体的には、次のような支援を活用することができます。
- 成人期の発達障害の診断・相談(医療機関での相談、必要に応じた薬物療法や認知行動療法など)
- 親の会・当事者コミュニティへの参加
- 臨床心理士や公認心理師、カウンセラーへの相談
厚生労働省の発達障害情報・支援センターでは、大人の発達障害に関する情報や、全国の相談窓口の案内が提供されています。一人で抱え込まず、早めに専門機関へつながることが、親子双方の安心につながります。
「親も助けを求めていい」ということを、まず親自身が自分に許してあげることが、回復への第一歩です。

相談先・参考になる公式ホームページ(HP)
親自身の発達特性や子育てについて相談したいときは、次のような窓口が参考になります。
- お住まいの市区町村の子育て・保健窓口
- 発達障害者支援センター
- 精神科・心療内科(成人の発達障害に対応する医療機関)
- スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー
公的機関の情報として、以下のホームページ(HP)も参考にしてください。
- 厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/
- 発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター):https://www.rehab.go.jp/ddis/
- 世界保健機関(WHO)ICD-11(国際疾病分類第11版):https://icd.who.int/en
これらのホームページでは、発達障害に関する制度や相談窓口の案内、国際的な診断基準についての情報がまとめられています。
相談する際は、「どんな場面で」「どのように困っているか」を具体的にメモしておくと、状況を共有しやすくなります。一人で悩まず、まずは電話や窓口で相談してみることから始めてみましょう。

学校以外にも、その子に合う学びの場があります
「ALL HAPPY」を掲げる小中一貫のオルタナティブスクール。不登校・発達特性のある子どもたちが全国から通っています。在籍校と連携した97%の出席認定率を公表しています。
NIJINアカデミー
「ALL HAPPY」を掲げる小中一貫のオルタナティブスクール。累計1,000名以上が入学し、在籍校と連携した97%の出席認定率を公表しています。
無料体験に申し込む ▶家庭でいまできること
制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
学校に伝えるときの文例
言いたいことは決まっていても、いざ書こうとすると手が止まる——という声をよく聞きます。そのまま使える形にしました。丁寧すぎる必要はありません。事実と、してほしいことが伝われば十分です。
① しばらく休むことを伝える
本人の体調と気持ちの状態から、しばらく学校をお休みさせていただきます。
毎朝のご連絡が負担になっているため、こちらから連絡がない日は欠席としてお取り扱いいただけますでしょうか。状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。
毎朝の欠席連絡は、家庭にとっても学校にとっても負担です。先にこの一文で合意しておくと、朝の消耗がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
② 配慮をお願いする
つきましては、登校できた日は保健室や別室で過ごさせていただくことは可能でしょうか。
また、給食の時間だけ別室にする、掃除の時間は無理をさせない、といった形でもかまいません。
本人が続けられる形を一緒に考えていただけると助かります。
「配慮してください」だけでは学校も動きにくいので、場面と具体的な対処をセットで書くのがコツです。診断名は必須ではありません。
③ 出席扱いについて相談する
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)に、学校外の施設で相談・指導を受けた場合や、自宅でICT等を活用した学習を行った場合の指導要録上の出席扱いについて定めがあると伺いました。
本校ではどのような運用になっていますでしょうか。また、要件を満たすために家庭で用意すべきものがあれば教えてください。
ポイントは「認めてください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞くことです。学校側も判断材料を求めています。要件の全文は教育支援センターとはの記事に原文どおり掲載しています。
④ 面談のあとに送る確認メール
確認させていただいた内容を念のためお送りします。
・当面は◯◯(別室/午後のみ など)で対応いただく
・◯◯(教育支援センター等)への通所を検討し、決まり次第ご連絡する
・出席の取り扱いについては、◯月◯日までにご回答いただく
認識に相違がありましたらお知らせください。
口頭の合意は、担任が変わると消えてしまいます。短くていいので記録に残しておくと、翌年度も引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
伝える相手の順番
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 診断がついていなくても、支援は受けられますか?
A. 受けられます。通級指導や校内の配慮は、診断名がなくても本人の困りごとを根拠に相談できます。就学相談や教育支援センターも同様です。診断は「支援を受けるための条件」ではなく、支援の設計を助ける情報のひとつだと考えてください。
Q. 支援級に移すべきか迷っています
A. 「どちらが正解か」ではなく、いまの学級でその子が消耗しているかどうかで考えるのが現実的です。学びの内容だけでなく、人数・音・切り替えの多さといった環境要因を見てください。判断の考え方は支援級に入れるべきかにまとめています。
Q. 特性があると、進路は狭くなりますか?
A. 狭くはなりません。不登校を公表した著名人のように、学校の枠に合わなかった人が別の道で力を発揮する例は多くあります。大事なのは「合う環境を選べるかどうか」で、選択肢は年々増えています。
Q. 学校に特性を伝えると、レッテルを貼られませんか?
A. 伝え方次第です。「◯◯障害です」と診断名だけを伝えるより、「音が大きいと固まってしまうので、席を後ろにしてほしい」と具体的な場面と対処で伝えるほうが、担任も動きやすくなります。
Q. 家庭でできる工夫はありますか?
A. 一度に多くを変えないことです。予定を紙に書いて見える場所に貼る、次の行動を1つだけ先に伝える——この2つだけでも負担が変わる子は多いです。うまくいかない日があっても、やり方が悪いわけではありません。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
まとめ:工夫しながら育つ親子へ
発達障害は、親子で特性を共有することで、かえって「互いを理解しやすい親子」になれる可能性を持っています。同時に、その親子には社会的なサポートも必要です。
「完璧な親子」を目指す必要はありません。「工夫しながら育つ親子」を、家庭だけでなく、学校や医療機関、地域の支援制度も含めて社会全体で支えていくことが大切です。うまくいかない日があってもいい。少しずつ、自分たちに合ったやり方を見つけていきましょう。
【監修】佐藤 仁美(作業療法士)
児童発達支援・放課後等デイサービスで、発達に特性のある子どもへの支援に従事。現在はNIJINアカデミー東金校の教室長として、不登校の子どもたちの学びを支援している。
「子どもを変える」のではなく、「子どもが安心して過ごせる環境をつくること」を大切に、一人ひとりに寄り添った支援を実践している。

