あまり知られていませんが、小学校入学と小学3年生の終わりに、公的な支援が立て続けに切れます。時短だけの話ではありません。この記事では、どの制度がいつまで使えるのかを法令と公表資料で確認したうえで、切れたあとの放課後をどうするかまで整理します。
小学校に入学すると、時短勤務を会社に義務づける法律はなくなります。育児・介護休業法が事業主に義務づけているのは小学校就学前まで。小学生になってから時短を続けられるかどうかは、勤務先が独自に制度を延長しているかどうかだけで決まります。唯一残るのは子の看護等休暇で、これも小学3年生の修了までです。まず就業規則で「小学校就学後」の記載を確認してください。
法律が守るのは「小学校就学前」まで

| 制度 | いつまで | 会社の義務 |
|---|---|---|
| 短時間勤務制度(時短) | 子が3歳になるまで | 義務 |
| 所定外労働の制限(残業免除) | 小学校就学前まで | 義務(2025年4月に拡大) |
| 柔軟な働き方を実現するための措置 | 3歳〜小学校就学前 | 義務(2025年10月から) |
| 子の看護等休暇 | 小学3年生修了まで | 義務(2025年4月に拡大) |
| ベビーシッター派遣事業の割引券 | 小学3年生まで | 勤務先が事業に参加している場合 |
| 放課後児童クラブ(学童) | 制度上は小学6年生まで | — |
この表の意味するところは、はっきりしています。小学校入学で「残業免除」と「柔軟な働き方の措置」が切れ、小3の終わりで「子の看護等休暇」と「シッター割引券」が切れます。
「小1の壁」「小4の壁」と呼ばれてきたものは、気の持ちようの話ではありませんでした。制度の切れ目が、実際にそこにあります。
小学校に入ると、働き方の制度はほぼ終わります
小学校に入学すると、育児・介護休業法が事業主に義務づける働き方の措置は、原則としてなくなります。
これが「小1の壁」の制度的な正体です。保育園のあいだは残業免除も柔軟な働き方の措置も法律で守られていたのに、小学校に入った瞬間、その義務がなくなります。しかも子どもの帰宅は保育園のお迎えより早くなる。預ける時間が短くなるのに、働き方の支えだけが先に外れる。ここに落差が生まれます。
残るのは子の看護等休暇(小学3年生修了まで)だけです。日々の勤務時間そのものを短くする仕組みは、法律上は用意されていません。
ここから先、時短やフレックスを続けられるかどうかは、会社が独自に制度を延長しているかどうかだけで決まります。実際、独自に「小学校卒業まで」「小学3年生まで」と延長している企業はあります。ただしそれは会社の判断であって、権利ではありません。

小3の終わりに、もう2つ切れる
子の看護等休暇
2025年4月の改正で、子の看護休暇は「子の看護等休暇」に名前が変わり、対象が小学校就学前から小学3年生修了までに広がりました。拡大された制度です。ただし裏を返せば、小4になると使えなくなります。
| 対象 | 小学3年生修了まで(改正前は小学校就学前) |
|---|---|
| 日数 | 年5日、子が2人以上なら年10日(改正前後で変更なし) |
| 取得事由 | ①病気・けが ②予防接種・健康診断 ③感染症に伴う学級閉鎖等 ④入園(入学)式、卒園式(③④が2025年4月に追加) |
| 対象者 | 継続雇用6か月未満を労使協定で除外する規定は廃止。週の所定労働日数2日以下の人のみ除外可 |
③の学級閉鎖が事由に加わったのは大きいと思います。インフルエンザで学級閉鎖になったとき、子ども本人は元気でも家にいることになる。これまでは有給を使うしかなかった場面で、看護等休暇が使えます。小3までのあいだは、遠慮なく使ってください。
ベビーシッター派遣事業の割引券
こども家庭庁の「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」の割引券です。金額を見ると、かなり大きな支援だとわかります。
| 対象児童 | 乳幼児または小学3年生までの児童 (障害者手帳・療育手帳等の交付を受けている場合は小学6年生まで) |
|---|---|
| 金額 | 1回の利用で1人あたり4,600円(2,300円×2枚) |
| 上限 | 1家庭あたり1か月24枚=55,200円まで |
| 使える人 | 承認事業主に直接雇用されている労働者(=勤務先がこの事業に参加していること) |
月に5万円以上の補助です。使っていた家庭にとって、小4でこれが消えるのは家計に直接響きます。
そして「勤務先が事業に参加していること」が条件なので、自営業・フリーランスの人はそもそも対象外です。ここは大企業に勤めている人の優位点であると同時に、切れたときの落差が大きい理由でもあります。
企業ごとに年度の上限枚数があり、その範囲内で個人の上限も決まります。使いたい月に枚数が残っているかは、勤務先の担当部署に確認してください。
会社の制度を確認する5つのポイント
法律の最低ラインはここまでです。ここから先は会社ごとに違うので、就業規則(育児・介護休業規程)を実際に開いて確認するのがいちばん早いです。見るところは5つです。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| ①短時間勤務の対象年齢 | 「3歳に満たない子」で止まっているか、「小学校就学前」「小学3年生」「小学校卒業」まで延ばしているか |
| ②柔軟な働き方の措置で何を選んだか | 5つのうち会社が選んだ2つ以上が書かれています。短時間勤務が入っているかどうかが分岐点 |
| ③テレワークの条件 | 月何日まで使えるか。出社義務日が固定されていないか |
| ④子の看護等休暇の日数と単位 | 法定は年5日(2人以上10日)。上乗せしている会社もある。時間単位で取れるか |
| ⑤シッター割引券の有無 | 福利厚生の案内に「ベビーシッター派遣事業」「割引券」があるか。カフェテリアプランに含まれていることも |
大企業ほど、制度はあるのに社内で知られていないということが起こります。とくに⑤の割引券は、人事の福利厚生ページの奥にあって気づかれていないケースが多いです。
時短勤務が切れたあと、放課後に何が起きるか
制度が切れると、退勤時刻が後ろにずれます。すると次にぶつかるのが、子どもの放課後をどうするかです。
ここで学童保育が受け皿になれば話は早いのですが、こども家庭庁の調査では、そう単純ではありません。
学童に申し込んで利用できなかった子どもは全国で1万6,330人。そのうち小学4年生が5,589人で、全体の34.2%を占めます(2025年5月1日時点)。制度上は小学6年生まで使えて、実施する1,633市町村のうち96.0%が対象を「6年生まで」と定めているのに、定員を超えると低学年が優先されるためです。
つまり小4では、働き方の制度と預け先が同時に細ります。
もうひとつ、覚えておいてほしい数字があります。国が待機児童の保護者1,865人に聞いたアンケートで、待機になったことで生活に変化があったと答えた人は59%。その内訳は、就労時間を変えた572件、就労形態を変えた78件、転職36件、仕事を辞めた32件でした。
放課後の問題は、そのまま働き方の問題に戻ってきます。

時短が戻らないなら、オンライン学童という手があります
制度が切れて退勤が19時になると、放課後に3時間の空白ができます。子どもが帰宅する16時から、親が帰る19時までです。
この3時間を埋める方法はいくつもありますが、学童も民間学童も習い事も、共通して「誰かが連れて行く」必要があります。時短が切れた家庭でいちばん詰まるのは、預け先そのものより送迎する人がいないことです。
そこで現実的になるのが、自宅から参加するオンラインの放課後です。「オンライン学童」と呼ばれることもあります。

| できること | 中身 |
|---|---|
| 送迎がゼロになる | 自宅が会場なので、連れて行く人がいらない |
| 週1回から使える | 曜日を全部埋めなくていい。放課後子供教室や習い事と組み合わせやすい |
| 学年で分けられない | 学年ではなく興味でグループが分かれるので、高学年が嫌がる「低学年と一緒が恥ずかしい」が起きにくい |
| 参加したかどうかが見える | 児童館や図書館と違い、記録が残り、大人が画面越しに見守っている |
国のアンケートでは、学童の待機になった子の63.9%が放課後を自宅で留守番して過ごしています。どのみち家にいるのなら、その時間の中身を変えられないか、という発想です。
ただし正直に書いておくと、身体は家にひとりのままです。火の元や来客、体調不良への物理的な対応はできません。ひとりで留守番ができることが前提で、それが難しい年齢・状況なら、民間学童やファミリー・サポート・センターを先に検討してください。どうしても手が空かない日の預け先は、仕事を休めない日の見守り候補と相談先にまとめています。
逆に、「留守番はできる。でも、やることがなくて結局ずっとYouTubeを見ている」という状態なら、相性のいい選択肢です。実際にどう過ごしているのかは、マイクラ好きの小学生向けオンラインサークルの記事で紹介しています。
選ぶときに確認したいのは4つです。①週に何回参加できるか ②見守る大人が常にいるか ③長期休みの日中も開いているか ④機材(パソコン・タブレット)は何が必要か。

放課後の選択肢の全体像は、小4の壁とは?学童に入れなくなった放課後をどうするかで、7つを費用と時間帯つきで比較しています。
よくある質問
小学生になっても時短勤務は使えますか?
法律上、会社に義務はありません。育児・介護休業法が事業主に義務づけているのは小学校就学前までです。小学生になってから時短を続けられるかどうかは、勤務先が独自に対象年齢を延長しているかどうかで決まります。就業規則の育児・介護休業規程で「小学校就学後」の記載を確認してください。
小学校に入ったら、もう何も使えないのですか?
子の看護等休暇は小学3年生修了まで使えます。年5日(子が2人以上なら10日)で、2025年4月からは感染症による学級閉鎖や入学式・卒園式も取得事由になりました。日々の勤務時間を短くする制度については、法律上の義務はなくなります。
子の看護等休暇は何に使えますか?
病気・けが、予防接種・健康診断に加えて、2025年4月から感染症に伴う学級閉鎖等と、入園(入学)式・卒園式が取得事由に加わりました。学級閉鎖で子どもが家にいる日にも使えます。対象は小学3年生修了までです。
ベビーシッターの割引券は誰でも使えますか?
使えません。勤務先がこども家庭庁の事業に参加している(承認事業主である)ことが条件で、そこに直接雇用されている労働者が対象です。自営業・フリーランスの方は対象外です。対象の子どもは小学3年生まで(障害者手帳・療育手帳等がある場合は小学6年生まで)です。
時短が終わると収入は戻りますか?
所定労働時間が戻れば、時短分の減額はなくなります。ただし放課後の預け先を民間学童などで確保すると、月3万〜6万円程度の支出が新たに発生することがあります。収入が戻っても手元が楽にならない、という声はよく聞きます。無料で使える放課後子供教室や児童館を先に確認してください。
会社に制度の延長を相談してもいいですか?
相談して構いません。小学校就学後の時短は法律上の義務ではないぶん、会社の判断で決まります。すでに独自に「小学3年生まで」「小学校卒業まで」と延長している企業もあるため、まず自社の規程を確認したうえで人事に相談してください。
まとめ
小学校入学で、働き方に関する法律上の義務は終わります。そこから先の時短やフレックスは、会社が独自に延長しているかどうかだけで決まります。
そして小3の終わりに、子の看護等休暇とベビーシッター割引券が切れます。小4は、働き方の制度と預け先が同時に細る学年です。
やることは3つだけです。就業規則で会社の制度を確認する。小3のうちに使えるものを使い切る。そのうえで、残る時間の埋め方を決める。制度は自動的には教えてもらえません。こちらから取りにいく必要があります。
この記事について
文:佐藤仁美(にじいろ編集部 記者)
厚生労働省・こども家庭庁の公表資料をもとに構成しました。制度は改正されることがあります。実際の適用にあたっては、勤務先の就業規則および都道府県労働局へご確認ください。
出典
- 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(令和7年4月1日から段階的に施行)PDF
- 厚生労働省「育児・介護休業法について」
- こども家庭庁・全国保育サービス協会「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業 ベビーシッター派遣事業 案内ガイド」PDF
- こども家庭庁「令和7年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(令和7年5月1日現在)」(2025年12月23日公表)PDF
- こども家庭庁「放課後のこどもの過ごし方に関する保護者アンケート(調査時点:令和7年7月1日・回答1,865件)結果」PDF

