結論:「義務教育=子どもが毎日学校へ行く義務」と考えるのは正確ではありません。
日本国憲法と教育基本法が定めているのは、保護者が子どもに「普通教育を受けさせる義務」です。
教育基本法第5条は、普通教育について「能力を伸ばすこと」「社会で自立して生きる基礎を培うこと」「社会の形成者として必要な資質を養うこと」を目的に掲げています。学ぶ場所を「学校の教室だけ」と定めているわけではありません。
その理念を具体的な学校制度として定めているのが学校教育法で、保護者に小学校・中学校等へ子どもを就学させる義務を課しています。
そして現在は、教育機会確保法によって、不登校の子どもが学校以外の場で行う多様で適切な学習活動も支援すべきものとして法律に位置づけられています。
学校に在籍することと、実際に毎日どこで学ぶかは、必ずしも同じではありません。
「義務教育なんだから、学校には行かないといけない」
不登校の子どもや保護者が、一度は聞いたことのある言葉かもしれません。
では、この「義務」は一体誰の義務なのでしょうか。
小学生・中学生本人に、毎日学校へ登校する法的な義務があるのでしょうか。
フリースクールやオンラインスクール、自宅などで学ぶことは、「義務教育から外れる」ことなのでしょうか。
この疑問を解く鍵は、日本国憲法 → 教育基本法 → 学校教育法 → 教育機会確保法を、それぞれの役割を分けて読むことです。
元小学校教員。全国の小中学生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」を運営し、学校に合わない子どもたちの新しい教育機会づくりに取り組む。
学校・教育委員会とも連携しながら、学校外での学習を在籍校につなぎ、子どもの学び・社会とのつながり・進路を支えている。
まず結論|「義務教育」の義務を負っているのは子どもではない
最初に、「義務教育」という言葉そのものを整理しましょう。
教育を受ける権利を持つ。
子どもに普通教育を受けさせる義務を負う。
義務教育の機会と水準を保障する責任を持つ。
日本国憲法第26条は、国民に教育を受ける権利があることを定めています。
そして保護者側には、子どもへ普通教育を受けさせる義務を定めています。
つまり、
「子どもが学校へ行く義務」ではなく、「保護者が子どもの教育を保障する義務」
から制度は始まっています。
タツロー校長
「義務教育だから学校に行かないといけない」と子どもに義務を負わせるのではなく、まず誰が、何を義務づけられているのかを正しく知ることが大切です。
参考: 文部科学省|教育基本法
教育基本法には「学校へ毎日行かせなさい」とは書かれていない
今回、一番押さえておきたいポイントです。
教育基本法第5条第1項が保護者に求めているのは、
子どもに普通教育を受けさせること
です。
さらに第2項では、その「普通教育」の目的を、
- 一人ひとりの能力を伸ばす
- 社会で自立して生きるための基礎を培う
- 国家・社会の形成者として必要な基本的資質を養う
ことだとしています。
教育基本法第5条が示している中心は、「どの建物へ通うか」ではなく「どんな教育を保障するか」です。
そして第3項では、国・地方公共団体に義務教育の機会と水準を保障する責任を定めています。
第4項で、公立学校で行われる義務教育の授業料を徴収しないことが定められています。
つまり、教育基本法の義務教育規定を読むと、中心に置かれているのは普通教育を保障することです。
教育基本法は教育法制の「基本」を定める法律
文部科学省は教育基本法について、教育の根本的な理念や原則を定める法律と説明しています。
歴史的な文部省資料では、教育基本法について「教育関係法一般の上位に立つ基本法の性格」を持つとも説明されています。
ただし、これは憲法と法律のような形式上の法的な上下関係という意味ではありません。
教育基本法と学校教育法はどちらも法律ですが、役割が違います。
教育基本法=教育全体の理念・原則
学校教育法=学校制度を具体的に動かすルール
と考えると分かりやすいでしょう。
学校教育法が「学校への就学」を具体化している
では、なぜ現在の日本では、小中学生は学校に籍を置くのでしょうか。
それを具体的に定めているのが学校教育法です。
学校教育法第16条は、保護者に子どもへ9年間の普通教育を受けさせる義務を定めています。
続く第17条で、保護者が小学校・中学校等へ子どもを「就学させる義務」を定めています。
ここを混ぜないことが重要です。
教育基本法が「普通教育を受けさせる」という大きな原則を示し、学校教育法が現在の学校制度として「小中学校等へ就学させる」という具体的な仕組みにしています。
教育基本法第5条自体にも、普通教育について「別に法律で定めるところにより」という文言があります。
つまり、教育基本法だけを読んで「学校籍まで自由に外していい」と考えるのも正確ではありません。
一方で、学校教育法第17条だけを見て、
「義務教育=子どもが毎日学校の教室へ通い続けなければならない」
と考えるのも、現在の不登校支援制度全体を十分に捉えていません。
図解|4つの法律を見ると「学校」と「学び」の違いがわかる
教育を受ける権利 / 保護者が普通教育を受けさせる義務
普通教育の目的・義務教育の機会保障・国と自治体の責任
9年間の普通教育と、小学校・中学校等への「就学」を具体化
不登校の子どもの、学校以外での多様で適切な学習活動を支援
現在の制度を一言で表すなら、
「学校への在籍・就学制度を基本としながら、実際の学びは学校の外にも広がっている」
と整理できます。
教育機会確保法|「学校以外で学ぶ」ことが法律に書かれた
この理解を大きく変えたのが、2016年に成立した教育機会確保法です。
正式名称は、
「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」
です。
第13条では、不登校の子どもが学校以外の場で行う「多様で適切な学習活動」の重要性を踏まえて、国・自治体が必要な情報提供や助言などの支援を行うよう定めています。
つまり、「学校へ行けないなら学べない」という制度ではありません。
学校以外で学んでいる不登校の子どもの教育機会も、保障・支援していくことが法律に位置づけられています。
文部科学省の教育機会確保法の案内でも、
- 教育支援センター
- フリースクール
- 学校外の民間施設
- 自宅でのICT学習
- 学びの多様化学校
など、教室以外にも複数の学び方が示されています。
参考: 文部科学省|教育機会確保法
「学校に在籍する」と「毎日学校で学ぶ」は同じではない
ここまで読むと、現在の不登校支援の形がかなり見えてきます。
| 考えること | 現在の制度 |
|---|---|
| 学校への在籍 | 義務教育段階では、小中学校等へ就学する制度が基本 |
| 実際に学ぶ場所 | 学校、別室、教育支援センター、フリースクール、自宅など複数の選択肢がある |
| 学ぶ方法 | 対面、オンライン、ICT教材、体験活動などを組み合わせられる |
| 出席扱い | 一定の要件を満たせば、学校外・自宅での学習も校長判断で出席扱いにできる |
| 成績評価 | 学校外や自宅で行った学習成果も、一定の要件で成績評価に反映できる |
つまり、
「学校に籍がある=毎日その学校の教室で学ばなければならない」ではありません。
学校とのつながりを維持しながら、本人の状態に応じて学ぶ場所を変えることができます。
学校とフリースクールを曜日や時間帯によって併用する「Wスクール」という形もあります。
学校じゃない場所でも、子どもはこんなに学べる
「学校外の学び」と聞くと、家で一人で勉強する姿だけを想像するかもしれません。
しかし、実際の学び方はもっと多様です。
NIJINアカデミーの子どもたちは、JR東日本スタートアップのコワーキングスペースを学びの場にして、地域課題をテーマにプロジェクトへ取り組みました。
子どもたちは、
- 地域留学の企画を考える
- アンケートを設計・分析する
- 地域の大人へ取材する
- 動画を制作する
- 企業担当者と一緒に議論する
などの活動に取り組みました。
そしてその成果を、国内最大級の教育展示会EDIX東京で企業・教育関係者に向けて発表しました。
教育基本法が掲げる、
「能力を伸ばす」「社会で自立する基礎を培う」「社会の形成者として必要な資質を養う」
という観点から見ても、学びは教室の中だけで起きるものではありません。
では、フリースクールへ通うのは「義務教育違反」なのか?
不登校の子どもが在籍校に籍を置きながらフリースクール等で学ぶことを、単純に「義務教育違反」と考えるのは正確ではありません。
一方で、一般的なフリースクールは学校教育法第1条に定める「学校」ではありません。
そのため、フリースクールへ通うだけで在籍校が自動的にフリースクールへ変わったり、学校教育法上の就学制度そのものがなくなったりするわけではありません。
ここでも、
「学校への在籍」と「どこで日々学ぶか」を分けて考える
ことが重要です。
不登校によって学校に行くことが困難な子どもについては、フリースクール等で学んでいること自体を「保護者が義務を怠っている」と単純に考えるものではありません。
国会でも、心理的な要因などで学校へ行けない不登校児童生徒について、保護者が学校へ出席させないことには「正当な事由」がある場合があるとの政府答弁がされています。
フリースクールは学校の「出席扱い」にできる
さらに重要なのが出席扱いです。
不登校の子どもがフリースクールなど学校外の施設で学んだ場合でも、一定の要件を満たし、在籍校の校長が認めれば、指導要録上の「出席」として扱うことができます。
自宅でICT等を使って学習した場合にも、要件を満たせば出席扱いにする仕組みがあります。
2026年4月には、文部科学省が学校・教育委員会向けに、学校外・自宅での学習について出席扱い・成績評価の具体例を改めて整理しました。
出席扱い=「学校の外で学んだ努力も、学校が正式に評価できる」という仕組みです。
フリースクールに通えば自動的に出席になるわけではなく、在籍校との連携や学習状況の把握などが必要です。
出席扱いで特に大切なのは「学校との連携」
代表的なポイントは、
- 保護者と学校が連携している
- フリースクール等の活動内容を学校が把握できる
- 学習や活動の記録が残っている
- 本人の状況を継続的に確認できる
ことです。
NIJINアカデミーの実例|「学校に籍を置き、学校外で学ぶ」
この仕組みを具体化している一例が、NIJINアカデミーです。
NIJINアカデミーに通う小中学生も、在籍する小学校・中学校とのつながりを残しながら、メタバース校舎やリアル教室で学んでいます。
出席認定を希望する家庭には、毎週「学びのポートフォリオ」を発行。
その週の、
- 学習した教科・内容
- 授業への参加
- 活動の様子
- 担任からの所見
などを記録し、在籍校へ学びが伝わるようサポートしています。
2026年現在、NIJINアカデミーでは出席認定を希望した家庭の97%が、在籍校から出席扱いを認められています。
大切なのは数字だけではありません。
学校を切り離すのではなく、学校外の学びを学校へつなぎ直していることです。
タツロー校長
学校に行っているかどうかだけではなく、その子が学び、人とつながり、自分の力を伸ばしているかを見ることが大切です。
「学校に行けない」ではなく
「どこなら学べるか」から考えてみませんか?
不登校になったとき、選択肢は一つではありません。 フリースクール、教育支援センター、オンライン、学校との併用など、 お子さんに合う学び方をまず知るところから始められます。
- 近くのフリースクール
- 公的な支援先
- 学校と併用できる学び場
いきなり転校や入学を決める必要はありません。まずは複数の選択肢を知り、子ども本人が安心できる場所を探してみてください。
不登校になったら、保護者は何をすればいい?
法律を難しく考えすぎる必要はありません。
学校へ無理に戻すことより、子どもの状態に合った教育機会を止めないことが大切です。
- まずは子どもの状態を見る 今は休養が必要なのか、学びたい気持ちはあるのか、誰かと関わりたいのかを見ます。
- 在籍校との連絡は細くても残す 「登校させるため」ではなく、学校外での学びや本人の状態を共有するためです。
- 学校以外の選択肢を知る 教育支援センター、フリースクール、オンラインスクール、リアルな居場所などを比較します。
- 実際に子ども本人が体験する 親にとってよい場所と、子ども本人が安心できる場所は必ずしも同じではありません。
- 出席扱いを希望するなら早めに学校へ相談する 利用先の活動内容や学習記録を学校へ共有できる仕組みがあるかも確認しましょう。
学校とフリースクール、どちらか一つに決めなくてもいい
不登校の選択肢を、
「学校へ戻る」か「学校を捨てる」か
の二択にする必要はありません。
たとえば、
- 月曜日は学校
- 火〜木曜日はオンラインスクール
- 金曜日はリアルなフリースクール
という形もあり得ます。
朝だけ学校へ行き、午後は自宅からオンラインで学ぶ子もいます。
学校行事だけ参加し、日常の学習は別の場所で行う子もいます。
学ぶ場所を一つに固定しなくていい。
これも、教育機会が多様化した現在だからこそ可能になってきた考え方です。
「普通教育」の目的に戻ると、見え方が変わる
ここで、もう一度教育基本法へ戻ってみましょう。
義務教育として行う普通教育の目的は、
- その子の能力を伸ばすこと
- 社会で自立して生きる基礎を培うこと
- 社会の形成者として必要な資質を養うこと
です。
「年間何日校舎へ登校できたか」だけが、その目的ではありません。
だからこそ、
この子は今、どこなら安心して学べるのか。
どこなら人と関われるのか。
どんな環境なら能力を伸ばせるのか。
という問いを持つことが大切です。
学校とは違う学び方を、
まずは体験してみませんか?
NIJINアカデミーでは、自宅からメタバース校舎に入り、 全国の仲間や教師とつながって学べます。 授業だけでなく、ホームルーム、プロジェクト、サークル活動など、 家にいながら社会とのつながりをつくります。
- 自宅から参加
- 全国の仲間と学ぶ
- 在籍校との連携
- 出席認定もサポート
最初から入学を決める必要はありません。まずは子ども本人が「ここなら学べそう」と感じるか、実際の雰囲気を体験してみてください。
よくある質問(FAQ)
まとめ|義務教育の目的は「学校という建物へ通うこと」だけではない
義務教育を法律から整理すると、次のことが分かります。
- 子どもには教育を受ける権利がある
- 保護者には普通教育を受けさせる義務がある
- 教育基本法は、普通教育の目的を「能力」「自立」「社会の形成者」として示している
- 学校教育法は、その制度を小中学校等への就学として具体化している
- 教育機会確保法は、不登校の子どもの学校外での多様な学習活動を支援している
- 学校外・自宅での学びも、一定の要件で出席扱いや成績評価につなげられる
タツロー校長
義務教育だから学校に行く。それだけではなく、この子にとって普通教育とは何か、どこならその子の力を伸ばせるのかを考えることが大事だと思っています。
学校は、今も大切な教育の場です。
でも、学校だけが学びの場ではありません。
学校に行けない日にも、家で学べる。
フリースクールで友達と出会える。
地域や企業の中で社会について学べる。
オンラインで全国の教師や仲間とつながれる。
「学校へ行けない=教育を受けられない」ではない。
学ぶ場所を増やし、その学びを学校や社会へつないでいくこと。それが、現在の不登校支援が向かっている方向です。
あわせて読みたい
動画でも詳しく|義務教育と「学校に行く義務」を考える
株式会社NIJIN代表取締役・NIJINアカデミー校長の星野達郎が、日本国憲法・教育基本法・学校教育法を読みながら、義務教育とは何かを解説しています。
この動画は現在より前に公開されたもので、その後、教育機会確保法に基づく不登校支援や、学校外・自宅での学習の出席扱い・成績評価について運用がさらに整理されています。現在の制度については、この記事の内容と合わせてご覧ください。
参考・一次資料
- 文部科学省|教育基本法
- 文部科学省|教育基本法の位置づけ・概説
- 文部科学省|小・中学校等への就学について
- 文部科学省|教育機会確保法
- 文部科学省|不登校児童生徒への支援の在り方について
- 文部科学省|学校外の施設で学ぶ不登校児童生徒の出席扱い
- 文部科学省|自宅でICT等を活用した学習の出席扱い
- 文部科学省|不登校児童生徒の出席扱い・成績評価について(2026年)
- NIJINアカデミー|出席認定の仕組み
- NIJINアカデミー|JR東日本スタートアップとの社会共創
画像:NIJINアカデミー公式サイト掲載画像

