「このままでいい」から「自分ならできる」へ。子どもの自己肯定感と自己効力感を育てる、大人の関わり方
子どもが学校に行かなくなると、大人は「何とかしなければ」と焦ります。
「朝、起きれない」「学校に行かない」「勉強しない」「ゲームばかりしている」
そんな姿を目の前にすると、「このままで大丈夫?」「学校には戻れるの?」「何をしてあげればいいんだろう?」と不安になるのは自然なことです。
でも、その「何とかしなければ」の中にいつの間にか、「学校に行けない=問題」という見方が入り込んでいないでしょうか。 文部科学省の令和6年度調査によると、小・中学校の不登校児童生徒は353,970人。12年で連続で増加し過去最多となりました。一方で文部科学省は、不登校を「取り巻く環境によっては、での児童生徒にも起こり得るもの」と捉え、不登校という問題だけで問題行動と受け取らないように配慮することが必要だとしています。また不登校への支援は『学校に登校する」という結果だけを目標にするのではなく、子どもが自らの進路を主体的に捉え、社会的に自立することを目指すことが重要だと示しています。
(※参照:文部科学省)
では、私たち大人にできることは何でしょう?
「どうしたら学校に行けるようになるか」だけでなく「この子は今、どんな状態なんだろう?」「この子には、どんな力があるんだろう?」「この子が自分らしく生きていくために、何が必要なんだろう?」そんなふうに、子どもを見る視点を少し変えてみる。ここではデータや子どもとの関わりを通して見えてきたことから、子どもの存在価値を「できる・できない」で測ることなく、その子自身の力を育てていくために、大人ができる5つのことを考えていきます。
「学校に行けない」は本当に”問題”なのか?

「学校に行けない」この事実だけを見ると、「何とかしなければ」と思ってしまうかもしれません。けれど、学校に行けないという一つの行動だけで、その子自身を判断することはできません。
大切なのは「学校に行けるか行けないか」だけを見るのではなく、
- 「この子は今、どんな状況なんだろう?」
- 「何を感じているのだろう?」
- 「どんなことなら安心してできるのだろう?」 とその子自身に目を向けることです。
そこから、その子の本当の困り事や、持っている力が見えてくることがあります。不登校を「問題」として解決しようとするのではなく、まずはその子を理解すること。それが、大人にできる最初の一歩なのではないでしょうか。
大人ができる5つのこと

1.「存在価値は変わらない」という土台をつくる
学校に行けない。 勉強ができない。 朝起きられない。 何かに挑戦して、うまくいかない。 そんなとき、子ども自身が、 「自分はダメなのかもしれない」 と思ってしまうことがあります。でも、 できることと、その人の存在価値は別のものです。 学校に行けても、行けなくても。 勉強ができても、できなくても。 成功しても、失敗しても。 その子の存在価値は変わりません。
そして、これは子どもだけの話ではありません。 子どもを支える大人も、 「学校に行かせられない自分はダメなのでは?」 「もっと何かしてあげなきゃ」 「私の関わり方が悪かったのかな」 と、自分を責めてしまうことがあります。でも、 子どもが学校に行けないことと、大人の価値も別のものです。 うまく支えられない日があっても。 言葉をかけ間違えてしまっても。 どうしたらいいのか分からない日があっても。 その大人の存在価値も変わりません。
「何かができるから価値がある」のではない。 子どもにも、大人にも、その土台があることが大切です。 「できたら認める」のではなく、 できても、できなくても、その人は大切な存在。 そんな視点を持つことが、自己肯定感の土台になるのではないでしょうか。そして、大人自身が自分を責めすぎないことも大切です。
大人の心に少し余白ができると、子どもを見る目にも余白が生まれます。2. 安心できる場所をつくる
自分の存在を否定されない。 失敗しても責められない。 無理に変えられない。 気持ちを話してもいい。そんな「安心できる場所」があることは、子どもにとって大きな支えになります。 安心できる場所は、必ずしも特別な場所である必要はありません。
家の中かもしれない。 学校の中の居場所かもしれない。 フリースクールかもしれない。 オンラインのつながりかもしれない。 地域の誰かとの関わりかもしれない。 大切なのは、 「ここにいていい」 と思えることです。「今日はどうだった?」 「今、何がつらい?」 「どうしたい?」 と、子どもの気持ちや意思を尊重することも安心につながります。
そして、安心は「何もしないこと」ではありません。 子どもが自分の気持ちを取り戻し、 「ちょっとやってみようかな」 と思えるための土台です。大人にとっても同じです。 子どもを支える大人自身が、 「ちゃんとしなくちゃ」 「私が何とかしなくちゃ」 と追い詰められていたら、安心できる関わりを続けることは難しくなります。
子どもにも、大人にも、安心できる場所が必要です。3. 心」だけではなく「身体のサイン」を見る
「学校に行きたくない」と言っている子どもを見て、 「気持ちの問題なのかな」 と考えてしまうことがあります。でも、子どもの状態を見るときには、心だけではなく身体にも目を向けてみましょう。
- 朝起きられない
- 眠れない、寝すぎる
- 食欲がない
- 頭が痛い
- お腹が痛い
- 身体がだるい
- 疲れやすい
- 何もしたくない
こうした変化があるとき、 「頑張ればできるよ」 と励ます前に、 「今、この子の身体はどんな状態なんだろう?」 と考えてみる。
大切にしたいのは、症状を「できない理由」として見るのではなく、その人の状態を知るためのサインとして見ることです。
「できないことを直す」のではなく、 「今どんな状態なのかを知る」。 そこから始める。 心と身体は切り離して考えることができません。だからこそ、「学校に行けない」という結果だけを見るのではなく、その背景にある疲れや不安、緊張、生活リズムなどにも目を向けてみる。
強い身体症状や症状が長く続く場合には、医療機関など専門機関へ相談することも大切です。4. 「自分で選ぶ」と「できている」を大切にする
子どものことを心配するほど、大人は、 「こうしたほうがいいよ」 「これをやってみたら?」 「学校に行ったほうがいいよ」 と、答えを先に渡したくなることがあります。でも、自分の人生を自分で選んでいくためには、日常の中で「自分で決める経験」を積むことも大切です。
「今日は何からやってみる?」 「どっちがいい?」 「今は休む?それとも少しやってみる?」 「どうしたい?」 大きな決断でなくていいのです。今日着る服を選ぶ。 食べたいものを選ぶ。 やってみたいことを決める。 誰に相談するか選ぶ。 休むことを選ぶ。 そんな小さな選択が、 「自分で決めてもいい」 という感覚につながっていきます。
そして、もう一つ大切なのが、「できていること」に目を向けることです。学校に行けないと、 「勉強していない」 「外に出ていない」 「何もしていない」 と、できていないことばかりが目につきます。
でも、ゲームをしている → 集中している。
絵を描いている → 表現している。
動画を見ている → 興味のある情報を集めている。
料理をしている → 生活する力を使っている。
誰かとオンラインで話している → 人とつながっている。 という見方もできます。
もちろん、何でも肯定すればいいということではありません。 大切なのは、「できていないことだけを見る」状態にならないこと。
その子がすでに持っている力に気づくことです。 「何もできていないね」ではなく、 「こんなことができているね」 と伝えてみる。 そして、 「あなたはどうしたい?」 と、選ぶ余白をつくる。 「自分で選ぶ」と「自分の力に気づく」。この二つの経験が、次の挑戦につながっていきます。
5.挑戦も失敗も「次の一歩」につなげる
安心できる場所があり、 「自分は大切な存在」と思える。 そして、自分で選び、自分の力にも気づいていく。その先には、 「ちょっとやってみようかな」 という挑戦があります。
でも、挑戦したら必ず成功するわけではありません。できたこともあれば、 「うまくいかなかった」 ということもあります。 ここで大切なのが、失敗をどう受け止めるかです。
「できなかった」→「自分はダメだ」 となってしまうと、次の挑戦が怖くなるかもしれません。 でも、「今回はうまくいかなかった」 「別の方法ならどうかな?」 「誰かに助けてもらおう」 「今はまだ難しかった」 「またやってみてもいい」 と捉えることができれば、その経験を次につなげることができます。
自己効力感を考えるうえでは、自分自身の成功・失敗などの経験が重要な情報源の一つになります。 ただし、成功すれば必ず自己効力感が高まり、失敗すれば下がる、という単純なものではありません。
その経験を本人がどう受け止めたのか。 何ができたのか。 どんな工夫をしたのか。 次に何ができそうなのか。 そこにも目を向けることが大切です。だから、大人が見つけたいのは成功だけではありません。
挑戦したこと。 自分で考えたこと。 工夫したこと。 助けを求めたこと。 失敗しても、もう一度考えたこと。 その一つひとつを認める。 そして、「うまくいかなかったね。じゃあ、次はどうしてみようか?」 と一緒に考える。 すると、 「自分にもできるかもしれない」 という感覚が生まれてきます。
これが、自己効力感につながっていきます。 失敗しても、自分を否定しない。 うまくいかなくても、また戻ってこられる。そんな経験の積み重ねが、次の挑戦への力になります。
まとめ「このままでいい」から「自分ならできる」
不登校の子どもを前にすると、 「何とかしてあげたい」 「元に戻してあげたい」 と思います。 それは、子どもを大切に思っているからこその気持ちです。でも、大人にできる最初の一歩は、
子どもを変えることではなく、子どもを見る目を変えること なのかもしれません。学校に行けても、行けなくても。 できても、できなくても。 成功しても、失敗しても。 その子の存在価値は変わりません。
そして、それは子どもを支える大人も同じです。「ちゃんとできない自分」を責めなくていい。 「何とかしなければ」と頑張り続けなくてもいい。 子どもも、大人も、存在そのものの価値は変わりません。
その安心があるから、 「やってみようかな」 と思える。 自分で選んでみる。 自分の力に気づく。 挑戦してみる。 うまくいくこともある。 失敗することもある。
それでも、 「自分はダメ」 で終わらず、 「次はどうしてみよう?」 と考える。 その繰り返しの中で、 「自分にもできるかもしれない」 という自己効力感が育っていきます。自己肯定感は、 「何かができるから、自分には価値がある」 ということではありません。 何ができても、できなくても、 「自分は大切な存在」 と思えること。
その土台があるからこそ、安心して挑戦することができます。そして、成功も失敗も含めた経験を重ねながら、 「自分ならできるかもしれない」 という力を育てていく。
学校に戻ることだけが、子どもの成長ではありません。 その子に合った学び方や居場所を見つけ、自分らしく生きていくことも、その子の大切な人生です。 大人が子どもの人生を決める必要はありません。「あなたはどうしたい?」 と問いかけ、その答えを一緒に探す。 そして大人自身も、 「今の自分にできることを、できる範囲でやればいい」
子どもも大人も、 「自分は大切な存在」 という土台から、 「自分にもできる」 という一歩へ。その先に、自分の人生を自分で選んでいく「自立」があるのではないでしょうか。

【関連記事】
不登校の初期対応で大切なこと〜子どものSOSに気づき、家庭を安心できる居場所にする方法〜
※お子さんの心に寄り添い、家庭内での安心感を高めるための具体的なステップや接し方について詳しく解説しています。
本人が興味を持ったタイミングですぐに調べられるよう、図鑑やWebサイト、解説動画(YouTubeやドキュメンタリー番組など)にアクセスしやすい環境を一緒に整えてあげるのがおすすめです。
また、遠くの有名な動物園や水族館でなくても構いません。近所の公園での虫観察や、ベランダでのメダカ飼育など、身近な「本物の命」に触れる体験が、子どもの観察力や思考力をぐっと研ぎ澄ませます。
【関連記事】
「好き」から始まる新しい学び〜教科書を超えた探究学習と家庭でのサポート術〜
※学校の枠組みにとらわれず、子どもの興味・関心を軸にして学びを深めていくヒントや事例をまとめています。
保護者の方だけで抱え込まず、外部のサポートを活用することも大切です。同じように「好きなこと」に熱中する仲間や、子どもの興味を伸ばしてくれる大人の存在があることで、子どもの世界はさらに広がっていきます。
【関連記事】
一人で抱え込まないで。不登校・行き渋りを支える相談窓口と多様な学びの選択肢
※ご家庭だけで悩まず、外部のフリースクールやオンライン学習、専門の相談機関を活用する方法について紹介しています。
5つのことを、1枚の表にまとめました
| やること | 具体的な行動 | 避けたいこと |
|---|---|---|
| ① 存在価値は変わらないという土台をつくる | 「行っても行かなくても、あなたが大事」と言葉にして伝える | 登校できた日だけほめる |
| ② 安心できる場所をつくる | 家の中に、責められない時間と場所を確保する | 部屋にこもることを一律に止める |
| ③ 心だけでなく身体のサインを見る | 睡眠・食事・頭痛や腹痛を記録し、続くなら受診する | 「気のせい」で片づける |
| ④ 「自分で選ぶ」と「できている」を大切にする | 小さな選択(今日の予定、食べるもの)を本人に決めてもらう | よかれと思って先回りして決める |
| ⑤ 挑戦も失敗も次の一歩につなげる | うまくいかなかったときに「やってみたこと」を認める | 結果だけを評価する |
学校の外にも、学びと居場所の選択肢があります
気持ちの支えと並行して、学びを止めない場所を確保しておくと、子どもの選択肢は狭まりません。自治体が設置する教育支援センター(適応指導教室)は原則無料で使えます。国の方針は文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」に「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す」と示されています(COCOLOプラン)。
相談窓口
つらい気持ちが強いときは、ひとりで抱えずに 24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(文部科学省・年中無休・無料)へ。保護者の方も利用できます。自治体別の相談先はこども家庭庁「相談窓口」から探せます。この記事は一般的な情報の整理であり、医学的な診断や個別の判断に代わるものではありません。
どう関わればいいか迷ったら、一度話してみませんか
NIJINアカデミーの無料オンライン相談では、家庭での関わり方や学びの場の選び方についても話せます。入会が前提ではありません。

