「不登校=通信制高校」だけじゃない!広がる進路の選択肢
中学時代に学校へ行きづらかったお子さんの進路を考えるとき、「やっぱり次のステップは通信制高校かな」と、まず頭に浮かぶ保護者の方は多いと思います。今の通信制高校はさまざまな特色があり、とても魅力的な進路です。
しかし、道はそれだけではありません。お子さんによっては、進路を考えるなかで「あの高校の○○科で学びたい」「この部活をやりたい!」と、全日制高校への具体的な目標が見つかることもあります。「中学は休みがちだったけれど、高校からは全日制でがんばりたい」という我が子の前向きな姿を見たら、親としては全力で応援してあげたいですよね。
「不登校は受験に圧倒的に不利」は、もう過去の常識
同時に、「でも、中学での欠席の多さが、入試で不利になるのでは…」と不安がよぎるのも、親として当然のことです。
けれども安心してください。実は今、日本の教育全体で「学校の教室」という場所だけにこだわらず、多様な環境での学習成果や、高校での学びへの意欲を正当に評価する改革が進んでいます。
これまで不登校のお子さんの前に立ちはだかっていた入試のハードルをなくす動きは、すでに全国的な流れです。「不登校だから高校受験は圧倒的に不利」というこれまでの常識は、もう過去のものになりつつあるのです。
具体的に高校入試ではどのような評価・配慮があるのか、そして生徒や保護者が知っておくべき課題をまとめました。
💡 入試での「配慮」3つのポイント
文部科学省から出された通知では、高校側が受験生を評価するときに守るべき「配慮」が、具体的に示されています。
1.「欠席日数」だけで不合格にしない
「欠席日数が多いから」という理由だけで、出願を制限したり、一律に不利に扱ったりすることはしない。
2.「学校の外でのがんばり」と「高校で学ぶ意欲」を評価する
学校に行けなくても、教育支援センターやフリースクール等民間施設、自宅でのオンライン学習などで前向きに学んできた姿勢を、入試で適切に評価する。生徒自身が書く「自己申告書」などを活用し、学びの意欲やポテンシャルを多角的に見る。
3.受験しやすい工夫をする
不登校の生徒が「これなら自分も受けてみよう」と思えるよう、募集内容を整える。
これらの配慮によって、高校入試で中学時代の欠席日数が不利になることはありません。それどころか、学校の外で前向きに学んできたことやがんばってきた経験を、入試のときに自分の強みとして堂々とアピールすることすらできるようになっています。
(参考)文部科学省「高等学校入学者選抜等における配慮事項について(通知)」(令和8年6月30日)https://www.mext.go.jp/content/20260630-mxt_koukou01-000026790_01.pdf
📝 すでに始まっている具体的な対応の例
地域や学校によっては、すでに以下のような柔軟な対応が行われています。
「自己申告書」の活用
欠席が多くなった理由や、学校外(フリースクールや自宅)でどんな風に前向きに過ごしてきたかを自分で書き、内申書のマイナスを補う材料にしてもらいます。
「不登校経験者向けの特別枠」の設置
一律のテストや内申点だけで判断せず、面接や作文、実技などを重視して合否を決める特別な受験枠を設ける高校が増えています。
内申点(調査書)の柔軟な扱い
「3年間のうち、一番状態が良かった学年の成績を見る」「不登校期間の成績は空欄(評価なし)とし、当日のテストや面接を重視する」といった緩和措置をとるケースもあります。
チャレンジスクールの充実
不登校経験のある生徒を積極的に受け入れている公立高校(チャレンジスクールなど)で、さらに受験しやすい工夫が進んでいます。
⚠️ 高校受験に向けて「今から気をつけるべき」ポイント
文部科学省の示した新しいルールによって、学校以外の場所でのがんばりも評価してもらえるチャンスが広がりました。しかし、「仕組みが変わったからもう安心」と油断してしまうのは禁物です。
希望する全日制高校へ進学し、そこで楽しく充実した日々を送るために、生徒自身が今のうちから意識して準備すべきポイントをまとめました。
1.今いる場所で「自分なりのテーマ」を持って過ごすこと
フリースクールや自宅でのオンライン学習など、今過ごしている場所が、ただ「心を休めるだけの居場所」になっていないか見つめ直す必要があります。心を休める時期を過ぎたら、一歩進んで「これをがんばった」「こんなことができるようになった」と、入試のときに自信を持って言えるような勉強や活動の記録を、少しずつ作っていくことが大切です。
2.自分の「がんばり」を、周りの大人に伝える努力をすること
学校以外の場所や自宅でどれだけ努力をしていても、それが中学校や高校の先生に伝わらなければ、入試で正しく評価してもらうことは難しくなります。中学校で作成される調査書や、「自己申告書」などの書類に、自分がどんな風に前向きに取り組んできたかを具体的に示せるよう、日頃から活動のメモを残したり、サポート施設の先生に相談したりして、周囲にアピールできる準備を進めておく必要があります。
3.入学後も「自分に必要な配慮やサポート」があるかをあらかじめ調べること
入試のときだけでなく、高校へ「入学した後に受けられるサポート」についても事前に確認しておくことが非常に重要です。例えば、体調に合わせて保健室登校ができるか、スクールカウンセラーに相談しやすい環境か、勉強の遅れを個別にフォローしてもらえるかなど、その高校の受け入れ態勢や理解度を学校見学や相談会で自ら確かめておく必要があります。
4.高校へ入った「その先」を見据えて、生活リズムや体力を整えること
入試で配慮してもらって合格できても、そこはゴールではなく「新しいスタート」です。特に全日制高校は、出席日数やテストの点数(赤点)のルールが厳しく定められています。「せっかく入学したのに、毎日の通学に体力がもたない」「授業についていけない」という事態を防ぐためにも、今から無理のない範囲で、中学の勉強の遅れを取り戻す習慣や、朝決まった時間に起きる生活リズムを作っていくことが不可欠です。
「全日制高校に挑戦したい」という前向きな意欲を持つ生徒を応援する仕組みは、今、国を挙げて整えられつつあります。だからこそ、受験生自身が今の自分のペースを大切にしながらも、こうした現実的な準備を一つずつ積み重ねていくことが、未来の可能性を広げる鍵になります。
最後に
あせらず、我が子の「今」と「これから」のペースを信じて
これまでの常識が変わり、不登校のお子さんが「全日制高校でがんばりたい」と願ったとき、その思いを国や社会が応援してくれる時代が始まっています。これは本当に心強い変化です。
だからこそ、親として「早く生活リズムを戻させなきゃ」「何かアピールできる実績を作らせなきゃ」と、あせってしまうこともあるかもしれません。しかし、一番大切なのは、お子さん自身の「行きたい」という前向きなエネルギーそのものです。
制度の大きな変化を味方につけながら、まずは今の体調や本人なりのペースを最優先に。そして、一歩一歩「進学したその先」を見据えた準備を、親子で楽しみながら進めていきましょう。
一人で抱え込まず、周囲を頼りながら未来へ
その道のりで、不安なときは決して一人で抱え込まず、中学校や専門の相談機関、フリースクールの先生などを大いに頼ってください。周囲の力を借りながら、お子さんが自分らしく輝ける進路へ向かって確かな一歩を踏み出せるよう、その「がんばってみたい」というきらきらした意思を、ぜひ一緒に信じて応援していきましょう。
【監修】水谷 和佳奈(元 公立高校教諭)
19年間、公立高校教諭として大学・短大・専門学校への進学や高卒就職など、幅広い進路指導に従事。その中で、高校卒業時ではなく中学までの進路選択のあり方に社会的な課題を見出す。地方都市における学びの選択肢の少なさを解消すべく、NIJINアカデミー熊本八代校の教室長に就任。地域産業に密着した学びを通じ、自己理解・社会理解を深め、主体的な進路実現に向かう教室を運営している。
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学校以外にも、その子に合う学びの場があります
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無料体験に申し込む ▶家庭でいまできること
制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
学校に伝えるときの文例
言いたいことは決まっていても、いざ書こうとすると手が止まる——という声をよく聞きます。そのまま使える形にしました。丁寧すぎる必要はありません。事実と、してほしいことが伝われば十分です。
① しばらく休むことを伝える
本人の体調と気持ちの状態から、しばらく学校をお休みさせていただきます。
毎朝のご連絡が負担になっているため、こちらから連絡がない日は欠席としてお取り扱いいただけますでしょうか。状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。
毎朝の欠席連絡は、家庭にとっても学校にとっても負担です。先にこの一文で合意しておくと、朝の消耗がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
② 配慮をお願いする
つきましては、登校できた日は保健室や別室で過ごさせていただくことは可能でしょうか。
また、給食の時間だけ別室にする、掃除の時間は無理をさせない、といった形でもかまいません。
本人が続けられる形を一緒に考えていただけると助かります。
「配慮してください」だけでは学校も動きにくいので、場面と具体的な対処をセットで書くのがコツです。診断名は必須ではありません。
③ 出席扱いについて相談する
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)に、学校外の施設で相談・指導を受けた場合や、自宅でICT等を活用した学習を行った場合の指導要録上の出席扱いについて定めがあると伺いました。
本校ではどのような運用になっていますでしょうか。また、要件を満たすために家庭で用意すべきものがあれば教えてください。
ポイントは「認めてください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞くことです。学校側も判断材料を求めています。要件の全文は教育支援センターとはの記事に原文どおり掲載しています。
④ 面談のあとに送る確認メール
確認させていただいた内容を念のためお送りします。
・当面は◯◯(別室/午後のみ など)で対応いただく
・◯◯(教育支援センター等)への通所を検討し、決まり次第ご連絡する
・出席の取り扱いについては、◯月◯日までにご回答いただく
認識に相違がありましたらお知らせください。
口頭の合意は、担任が変わると消えてしまいます。短くていいので記録に残しておくと、翌年度も引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
伝える相手の順番
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 欠席が多いと高校に行けませんか?
A. 行けます。出席日数を選抜に使わない高校は増えており、通信制高校では欠席日数を問わないところがほとんどです。中学校卒業程度認定試験や高等学校卒業程度認定試験という道もあります。
Q. フリースクールに通うと出席扱いになりますか?
A. 要件を満たせば校長の判断で出席扱いにできます。ただし文部科学省の通知では教育支援センター等の公的機関が第一に想定されており、民間施設は「公的機関に通えない場合」に考慮される位置づけです。詳しくは教育支援センターとはをご覧ください。
Q. 費用が心配です
A. 教育支援センターは原則無料です。民間のフリースクールについては、利用料の補助制度を設けている自治体が増えています。就学援助もあわせて教育委員会に確認してください。
Q. 学校に戻ることを目標にしなくていいのですか?
A. はい。文部科学省の通知が「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく、社会的に自立することを目指す」と明記しています。学校復帰は選択肢のひとつであって、唯一のゴールではありません。
Q. 近くに通える場所がありません
A. ①校内の別室、②教育支援センターの訪問型支援、③自宅でのICT学習を出席扱いにする道(別記2)、④オンライン——の順で確認するのが現実的です。地域に選択肢がないことは、家庭の責任ではありません。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。

