GIGAスクール構想で一人一台の端末が行き渡り、学校で「デジタルドリル」を使う場面が増えました。何のために使うのか、どんな効果が報告されているのか、どんな課題があるのかを、文部科学省の公式資料と全国学力・学習状況調査の結果にもとづいて整理します。教員の方にも、家庭で「タブレットばかりで大丈夫?」と感じている保護者の方にも役立つようにまとめました。

前提|「デジタルドリル」は、公的資料では別の名前で呼ばれています
最初に押さえておきたいのが用語です。「デジタルドリル」「AIドリル」という語を定義した文部科学省の公式文書は確認できません。公的資料で使われるのは「学習者用デジタル教科書」「学習者用デジタル教材」「ICT機器」「CBT」といった言葉です。
| 現場で使われる呼び方 | 公的資料での呼ばれ方 | 中身 |
|---|---|---|
| デジタル教科書 | 学習者用デジタル教科書 | 紙の教科書の内容を電磁的に記録したもの。制度上の位置づけがある |
| デジタルドリル/AIドリル | 学習者用デジタル教材 | 教科書に準じない問題演習等の教材。制度上の「教科書」ではない |
| オンラインテスト | CBT(MEXCBT/メクビット) | 国が提供する公的なCBTシステム。学習eポータル経由で利用 |
この違いは、資料を探すときに効いてきます。「デジタルドリルの効果」を調べても公的な資料が出てこないのは、そもそも国がその語で調査していないからです。以下では、隣接する学習者用デジタル教科書・教材の調査結果を手がかりに整理します。
出典:文部科学省「学習者用デジタル教科書について」/文部科学省CBTシステム(MEXCBT)について
目的|学校がデジタルドリルを導入する4つの理由
出典:文部科学省「GIGAスクール構想について」/文部科学省CBTシステム 運用支援サイト
効果|公的調査で「報告されている」こと
ここは慎重に読む必要があります。「デジタルドリルに学力向上効果がある」と断定できる一次資料は見当たりません。公的調査が示しているのは相関(一定の関係が見られる/傾向が見られる)であって、因果ではありません。そのうえで、報告されている内容を挙げます。
| 報告されている内容 | 出典 |
|---|---|
| デジタル教科書を「いつも使う」と回答した児童生徒のグループは、他のグループに比べて授業内容の理解・主体的な学び・対話的で深い学びについて「当てはまる」と回答した割合が最も高かった | 令和6年度 学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業 成果報告書(2025年3月) |
| 教師の授業中の使用頻度は3か年で全教科において年々高まり、令和6年度は62%の児童生徒が授業の4回に1回以上の頻度で使用している | 同上 |
| ICT機器を「ほぼ毎日」「週3回以上」活用する学校は小学校97%(前年比3ポイント増)・中学校94%(同4ポイント増)。使用頻度と各教科の正答率・スコアとの間に一定の関係が見られる | 令和7年度 全国学力・学習状況調査の結果(概要) |
| 約9割の児童生徒が「分からないことがあった時にすぐ調べられる」「画像や動画、音声等の活用で学習内容がよく分かる」「友達と協力しながら学習を進められる」と考えている | 同上 |
| ICT機器を活用できると考えている児童生徒ほど、各教科の正答率・スコアが高い傾向が見られる | 同上 |
| ICT機器は、不登校児童生徒・特別な支援を要する児童生徒・外国人児童生徒等への学習活動の支援や、児童生徒の心身の状況の把握にも活用されている | 同上 |
出典:令和6年度 学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業 成果報告書(PDF)/令和7年度全国学力・学習状況調査の結果(概要)PDF/同・報告書ページ/国立教育政策研究所 報告書【質問調査】
課題|同じ資料に書かれているデメリット
効果と同じ報告書・審議まとめに、課題もはっきり書かれています。導入を検討する側が見るべきなのはむしろこちらです。
| 課題 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 個別・協働の場面で使えていない | デジタル教科書を使った学習は「一斉に取り組む学習」56%に対し、「一人一人で取り組む学習」46%、「協働的に取り組む学習」40%。一斉授業の道具に留まりがち |
| 動作面のストレス | フリーズ、エラーへの対処、ログインの手間、ページめくりの遅さなどを約47%の教師が感じている |
| アカウント設定・管理の負担 | 「学校現場の課題感として最も大きいのが、デジタル教科書の導入に係るアカウント設定・管理等の負担」と明記 |
| 探究型の使い方が少ない | PISA2022で日本の「ICTを用いた探究型の教育の頻度」指標はOECD平均を下回る。国語の授業でのデジタル・リソース利用頻度はOECD平均27.3%に対し日本15.2% |
出典:デジタル教科書推進ワーキンググループ 審議まとめ(令和7年9月24日・中央教育審議会初等中等教育分科会)PDF
国のガイドラインが挙げる「使い方の留意点」
学習者用デジタル教科書のガイドライン(平成30年12月/令和3年3月改訂)には、次の点が明記されています。デジタルドリルを使う場面でもそのまま当てはまる考え方です。
| 留意点 | ガイドラインの記載 |
|---|---|
| 手書き・体験を減らさない | 「文字を手書きすることや実験・実習等の体験的な学習活動が疎かになることは避けること」。漢字や計算等の繰り返し学習、学習内容をまとめる場面ではノートの使用を基本とすること |
| 授業と関係ない閲覧を防ぐ | 「授業と関係のない内容を閲覧して授業に集中しないことがないよう」適切に使用するよう指導すること |
| 使うこと自体を目的にしない | 単に視聴させるだけではなく、「使用に固執しないこと」 |
| 紙に戻れるようにしておく | 故障・不具合に備えて予備端末を準備し、常に紙の教科書を使用できるようにしておくこと |
| 見直しも選択肢に入れる | 効果・影響を見極めつつ、必要に応じて使用を見直すことも含め指導方法・体制の改善に努めること |
出典:学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン(PDF)/「教育の情報化に関する手引」について

健康への配慮|画面との距離・休憩・就寝前
ガイドラインには具体的な数値が示されています。学校でも家庭でもそのまま使える目安です。
| 項目 | 目安(ガイドライン記載) |
|---|---|
| 画面との距離 | 目と画面の距離を30cm以上離す |
| 休憩 | 30分に1回は、20秒以上画面から目を離して目を休める |
| 連続使用 | 見続ける一度の学習活動が長くならないようにする |
| 就寝前 | 就寝1時間前からはICT機器の利用を控えることが適切 |
| 画面の設定 | 反射・映り込み防止のため画面角度を調整する |
| 学校での確認 | 日常観察や学校健診等で学校医と連携し状況を確認。必要に応じ眼精疲労等のアンケート調査も考えられる |
出典:児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック(令和4年3月改訂版・PDF)/文部科学省「学校におけるICT環境の整備・運用について」/StuDX Style「家庭と連携した児童生徒の健康への配慮」
不登校の子にとってのデジタルドリル|「出席扱い」との関係
登校できない期間に自宅でデジタル教材を使って学習した場合、その学習を出席扱いとしてもらえる可能性があります。ただし条件があり、教材を使えば自動的に出席になるわけではありません。判断するのは在籍校の校長です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること |
| 2 | 訪問等による対面指導が定期的かつ継続的に行われることを前提とすること |
| 3 | 学習活動が、その子の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること |
| 4 | 校長が、対面指導や学習活動の状況等を十分に把握していること |
| 5 | 基本的に、学校外の公的機関や民間施設で相談・指導を受けられないような場合に行う学習活動であること |
「すららを使えば出席扱い」「このドリルなら大丈夫」といった説明を目にすることがありますが、正確ではありません。サービスの利用と、出席扱いの判断は別です。使いたい教材が決まったら、必ず在籍校に相談を通してください。
出典:文部科学省「不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについて」(別記2)/不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)令和元年10月25日・元文科初第698号/やむを得ず学校に登校できない児童生徒等へのICTを活用した学習指導等について
つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱えこまないでください。24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310(文部科学省・24時間365日・無料)は、子どもからでも保護者からでもかけられます。
主なデジタルドリル・デジタル教材(公式サイト)
ここでは評価や順位づけはせず、公式サイトを確認できたサービス名とURLのみを挙げます。学校で採用されている教材は自治体・学校ごとに異なります。
| サービス | 提供 | 公式サイト |
|---|---|---|
| navima(ナビマ) | TOPPAN | 公式ページ/※公式に2027年3月31日でのサービス終了が告知されています |
| ミライシード(ドリルパーク等) | ベネッセコーポレーション | 公式ページ |
| Qubena(キュビナ) | COMPASS | 公式サイト |
| ラインズeライブラリアドバンス | ラインズ株式会社 | 公式ページ |
| スタディサプリ(学校向け) | リクルート | 公式ページ |
| すらら | すららネット | 公式サイト |
公式サイトに「出席扱い制度への対応」を掲げているサービスもありますが、前述のとおり出席扱いの可否を決めるのは在籍校の校長です。サービスの利用が出席扱いを保証するものではありません。
校長・星野達郎の解説(YouTube)
端末や教材の話の前に。学校に行けなくなる子に何が起きているのかを解説しています。
ここまでは制度の話でした。ただ、保護者の方がいちばん知りたいのは「実際にその子はどうなったのか」だと思います。NIJINアカデミーに通う子どもたちと保護者の話を、そのまま記事にしています。
実際に通っている子どもたち・保護者の話
自宅の学習が、そのまま「学校とつながる学び」になります
NIJINアカデミーは、オンラインで先生や仲間と一緒に学ぶオルタナティブスクールです。在籍校と連携した出席認定の実績を公開しています。ドリル教材だけでは埋まらない「人とのつながり」も一緒に。まずは見学から。
NIJINアカデミー
「ALL HAPPY」を掲げる小中一貫のオルタナティブスクール。累計1,000名以上が入学し、在籍校と連携した97%の出席認定率を公表しています。
無料体験に申し込む ▶学習eポータルとMEXCBT|「ドリル」の背後にある仕組み
学校のデジタル学習を理解するうえで押さえておきたいのが、学習eポータルとMEXCBT(メクビット)の関係です。ここが分かると、「なぜ学校ごとに使う教材が違うのか」も見えてきます。
| 層 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| 学習eポータル | 子どもがログインする入口。学習記録の管理や、各教材への振り分けを担う | L-Gate、まなびポケット、スクールライフノート など |
| MEXCBT(国のCBT) | 文部科学省が提供する公的なオンライン問題システム。学習eポータル経由で利用する | 全国学力・学習状況調査の一部などで活用 |
| 民間のデジタル教材 | 日々の練習問題や個別最適化された演習。自治体・学校が個別に契約する | 本記事後半の一覧を参照 |
MEXCBTは令和6年11月現在で約2.8万校・約890万アカウントが登録されていると公表されています。一方で、日々使う「ドリル」の部分は自治体や学校ごとの契約なので、隣の学校と違う教材を使っていることは珍しくありません。転校や進学のときに「前の学校で使っていた教材が使えない」ということが起きるのはこのためです。
出典:文部科学省CBTシステム(MEXCBT)について/運用支援サイト/GIGAスクール構想の実現に向けた整備・利活用等に関する状況について
家庭で「タブレットばかりで大丈夫?」と感じたら
保護者の方からよく聞くのが、「宿題がぜんぶタブレットになった」「手を動かしていないように見える」という心配です。この心配は的外れではありません。国のガイドライン自身が、同じ懸念を留意点として書いているからです。
家庭で確認したい3つのこと
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 手書きの機会が残っているか | ガイドラインは、漢字や計算等の繰り返し学習、学習内容をまとめる場面では「ノートの使用を基本とすること」としています。家庭学習でも、書く場面を意識的に残しておくと安心です |
| 「進めた量」ではなく「わかったこと」を聞けているか | デジタル教材は進捗が数字で見えるぶん、量の話になりがちです。「今日は何をわかった?」と中身を聞くと、子ども自身も理解を確かめられます |
| 目と睡眠が守られているか | 画面と目を30cm以上離す、30分に1回は20秒以上目を休める、就寝1時間前からは利用を控える——いずれもガイドライン記載の目安です |
もうひとつ。デジタル教材が得意なのは「できるかどうか」がはっきりしている領域——計算、漢字、単語、基礎的な文法などです。逆に、書いて考える、話し合って深める、実物にさわる、といった学びは苦手です。ガイドラインが「体験的な学習活動が疎かになることは避けること」と書いているのは、まさにこの点です。家庭でも、ドリルの時間と、それ以外の時間を分けて考えると扱いやすくなります。
学校に行けない時期の使い方
不登校の時期にデジタル教材が助けになるのは、「学習が止まっていない」という事実が本人にも家族にも見えることです。学習履歴が残るので、あとから学校に説明するときの材料にもなります。
一方で、教材だけでは埋まらないものもあります。同年代とのやりとり、生活のリズム、「明日も行く場所がある」という感覚です。ドリルは学びを止めないための道具として使い、人とつながる場は別に用意する——この分け方をしておくと、復帰を考えるときにも選択肢が残ります。
よくある質問
Q. デジタルドリルには学力を上げる効果がありますか?
A. 公的調査が示しているのは相関であって因果ではありません。令和7年度の全国学力・学習状況調査では「ICT機器を使用する頻度と各教科の正答率・スコアとの間に一定の関係が見られる」と報告されていますが、「使えば上がる」と示したものではありません。
Q. 紙のドリルはもう要らないのですか?
A. 国のガイドラインは、漢字や計算等の繰り返し学習、学習内容をまとめる場面ではノートの使用を基本とすることと明記しています。手書きや体験的な学習が疎かになることは避けるべきとされています。
Q. 1日どのくらいまでなら使っていいですか?
A. 総時間の上限は示されていませんが、「30分に1回は20秒以上目を休める」「就寝1時間前からは利用を控える」といった目安がガイドラインに示されています。
Q. 学校が使っている教材を家庭でも使えますか?
A. 自治体・学校が契約している範囲によります。端末の持ち帰りルールとあわせて、担任や学校に確認してください。
Q. 不登校中にデジタルドリルで勉強すれば、出席扱いになりますか?
A. 一定の要件を満たした場合に、校長の判断で出席扱いとなる可能性があります。教材の利用だけで自動的に認められるものではありません。要件は不登校の「出席扱い」完全ガイドで詳しく解説しています。
Q. AIドリルという言葉は公的な用語ですか?
A. いいえ。文部科学省の公式文書で「AIドリル」を定義したものは確認できません。公的資料では「学習者用デジタル教科書」「学習者用デジタル教材」「ICT機器」「CBT」といった語が使われています。
🔗 あわせて読みたい
自宅学習を出席につなげる手順は不登校の「出席扱い」完全ガイドと申請の流れとそのまま使える依頼文にまとめています。オンラインの学びの場を探すならオンラインフリースクール比較、オンラインフリースクール完全ガイド。制度の全体像はフリースクールとは?完全ガイド、学年別では小学生・中学生のガイドもどうぞ。
まとめ|「使うこと」ではなく「何のために使うか」
公的資料を通して読むと、国が繰り返し書いているのはひとつです。使うこと自体を目的にしない——ガイドラインの言葉では「使用に固執しないこと」、そして「必要に応じて使用を見直すことも含め」改善に努めること。
デジタルドリルは、練習量の調整と学習履歴の可視化に強い道具です。一方で、一斉授業の道具に留まりやすいこと、動作面のストレスが約半数の教師に感じられていること、手書きや体験と組み合わせる必要があることも、同じ資料に書かれています。効果と課題は同じ文書の中にあります。導入を検討するときは、両方を同じ重さで読むところから始めるのが確実です。
