「学校には行っているけれど、朝はいつも渋っている」——そんな状態が続くと、これは不登校の始まりなのか、それとも一時的なものなのか、判断に迷いますよね。周りに相談しても「様子を見ましょう」と言われるだけで、モヤモヤが晴れないという方も多いのではないでしょうか。
「行き渋り」という言葉は、実は医学的な診断名ではなく、教育現場でよく使われる言葉です。だからこそ、正しく知っておくことで、必要以上に不安にならずに済むこともあります。
この記事では「行き渋り」という言葉の意味と、不登校との違い、早めに気づきたい初期サインについてまとめました。
📝 この記事でわかること
- 行き渋りの意味と不登校との違い
- 見逃しやすい初期サイン
- 行き渋りが起こりやすい時期
- 早期に気づくことの大切さ
低学年で「保護者と離れるとき」に強く出る場合は、母子分離不安が背景にあることがあります。年齢別のあらわれ方は母子分離不安とは?年齢別の特徴と対応にまとめています。
行き渋りとは
「行き渋り」とは、学校に行くこと自体は続けているものの、朝になると強い抵抗を示したり、渋々家を出たりする状態を指す、教育現場でよく使われる言葉です。医学的な診断名ではなく、不登校に至る手前の段階を表す言葉として使われることが多いです。
参考:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
不登校との違い
文部科学省の調査における不登校の定義は、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因や背景により、児童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にあること(病気や経済的な理由を除く)」で、かつ年間30日以上の欠席があることとされています。行き渋りはそれより手前、「登校はできているが強い抵抗がある」段階を指すことが一般的です。行き渋りが続いた結果、不登校につながるケースもあります。
見逃しやすい初期サイン
- 朝、布団から出るまでにいつも時間がかかる
- 「お腹が痛い」「頭が痛い」と体調不良を訴えるが、休日は元気
- 学校のことを聞くと、はぐらかしたり黙り込んだりする
- 日曜の夜になると機嫌が悪くなる、元気がなくなる
行き渋りが起こりやすいタイミング
行き渋りは、新学期、大型連休明け、クラス替え、夏休み明けなど、環境が変化するタイミングで特に起こりやすいとされています。「急に様子が変わった」と感じたときは、直前に何か環境の変化がなかったか振り返ってみると、背景が見えてくることがあります。
早期に気づくことの大切さ
行き渋りは、まだ「登校できている」段階だからこそ気づきにくいものです。しかし、この時期に無理に押し出し続けるのではなく、お子さんの様子に耳を傾けることが、その後の状態を大きく左右することがあります。
がんばっているあなたへ
「様子を見ましょう」という言葉に、モヤモヤした経験はありませんか。行き渋りのサインに気づいたあなたの直感は、決して的外れではありません。
行き渋りは、まだ何かを変えられる段階です。今、気づけたこと自体が、お子さんにとって大きな支えになっています。焦らず、でも見過ごさずに、寄り添い続けてください。
この記事の内容を確かめるための一次資料
学校とのやりとりは、担任個人の考え方に左右されやすい部分です。だからこそ国が学校に何を求めているかを知っておくと、話が噛み合いやすくなります。「認めてください」ではなく「要件を満たすには何を用意すればよいですか」と聞くのが、実務上いちばん通ります。
下の資料はすべて国・自治体・公的機関が出している一次情報です。学校や教育委員会と話すときは、この原文を示しながら相談すると、担当者によって対応が変わることを避けられます。
| 資料 | 何がわかるか |
|---|---|
| 文部科学省「生徒指導提要」 | 学校の生徒指導の基本方針(改訂版) |
| 文部科学省「スクールカウンセラー等活用事業」 | SC・SSWの役割と配置の考え方 |
| 文部科学省「就学援助」 | 学用品費・給食費などの経済的支援 |
| 文部科学省「令和6年度 問題行動・不登校等調査」 | 小中の不登校353,970人。全国の最新の実数 |
| 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」 | 「登校という結果のみを目標にしない」という国の方針 |
| 同 別記1(学校外の施設で相談・指導を受ける場合) | 教育支援センター等に通った日を出席扱いにする要件 |
| 同 別記2(自宅でICT等を活用した学習) | 自宅学習を出席扱いにする7つの要件 |
| 文部科学省「欠席中に行った学習の成果に係る成績評価」 | 2024年8月の改正。学習成果を成績に反映できる3要件 |
| 文部科学省「COCOLOプラン」 | 誰一人取り残されない学びの保障に向けた国の対策 |
| 文部科学省「不登校に関する地元の相談窓口」 | 全国1,045市区町村の公式相談窓口 |
| 教育機会確保法(e-Gov法令検索) | 第13条が「休養の必要性」を条文で認めている |
| こども家庭庁「子育て支援」 | 子育て世帯が使える支援制度の全体像 |
| 国立教育政策研究所「生徒指導リーフ」 | 研究にもとづく生徒指導の考え方をまとめた資料 |
学校に相談するときの進め方
① 支援の目標をすり合わせる
「令和元年10月25日の通知にあるとおり、登校という結果だけを目標にするのではなく、社会的な自立を目指す形で相談させてください」——最初にここを共有しておくと、その後の話が噛み合いやすくなります。
② 具体的な場所を挙げる
「教育支援センターの利用を考えています」「オンラインのスクールを検討しています」と場所を具体的に伝えます。抽象的な相談より判断してもらいやすくなります。
③ 出席扱いの要件を一緒に確認する
「別記1(通所)/別記2(自宅ICT学習)の要件を満たすために、こちらで何を用意すればよいでしょうか」と聞きます。「認めてください」ではなく「何を用意すればよいか」のほうが通ります。
④ 決めたことを記録に残す
面談のあとに「本日確認したこと」をメールなどで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター(全国1,045市区町村の窓口一覧)
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
家庭でいまできること
制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。
いま家庭で確かめておきたいこと
睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)
食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか
頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)
「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか
保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか
学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか
声のかけ方で迷ったときは
「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。
逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。
| 相談先 | 聞けること | 費用 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 在籍校(担任・スクールカウンセラー) | 出席の扱い、校内の別室、学習の進め方 | 無料 | まず学校での配慮を相談したいとき |
| 教育支援センター(市区町村) | 学校外の公的な居場所、通所と出席扱い | 原則無料 | 学校の外に一歩を踏み出したいとき |
| フリースクール(民間) | 体験活動中心の居場所、少人数の学び | 月1〜5万円程度 | 興味や「やってみたい」から入りたいとき |
| オンライン | 自宅から参加できる学び、出席扱いの実務 | スクールにより異なる | 外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき |
| 医療機関(小児科・児童精神科) | 体の不調の背景、診断と治療 | 保険診療 | 睡眠・食事・体の症状が続くとき |
| 24時間子供SOSダイヤル | 子ども本人・保護者どちらの相談も | 無料・24時間 | いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310) |
どこから始めればいいか迷ったら
学校に伝えるときの文例
言いたいことは決まっていても、いざ書こうとすると手が止まる——という声をよく聞きます。そのまま使える形にしました。丁寧すぎる必要はありません。事実と、してほしいことが伝われば十分です。
① しばらく休むことを伝える
本人の体調と気持ちの状態から、しばらく学校をお休みさせていただきます。
毎朝のご連絡が負担になっているため、こちらから連絡がない日は欠席としてお取り扱いいただけますでしょうか。状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。
毎朝の欠席連絡は、家庭にとっても学校にとっても負担です。先にこの一文で合意しておくと、朝の消耗がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
② 配慮をお願いする
つきましては、登校できた日は保健室や別室で過ごさせていただくことは可能でしょうか。
また、給食の時間だけ別室にする、掃除の時間は無理をさせない、といった形でもかまいません。
本人が続けられる形を一緒に考えていただけると助かります。
「配慮してください」だけでは学校も動きにくいので、場面と具体的な対処をセットで書くのがコツです。診断名は必須ではありません。
③ 出席扱いについて相談する
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)に、学校外の施設で相談・指導を受けた場合や、自宅でICT等を活用した学習を行った場合の指導要録上の出席扱いについて定めがあると伺いました。
本校ではどのような運用になっていますでしょうか。また、要件を満たすために家庭で用意すべきものがあれば教えてください。
ポイントは「認めてください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞くことです。学校側も判断材料を求めています。要件の全文は教育支援センターとはの記事に原文どおり掲載しています。
④ 面談のあとに送る確認メール
確認させていただいた内容を念のためお送りします。
・当面は◯◯(別室/午後のみ など)で対応いただく
・◯◯(教育支援センター等)への通所を検討し、決まり次第ご連絡する
・出席の取り扱いについては、◯月◯日までにご回答いただく
認識に相違がありましたらお知らせください。
口頭の合意は、担任が変わると消えてしまいます。短くていいので記録に残しておくと、翌年度も引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。
伝える相手の順番
まぎらわしい用語の整理
不登校について調べていると、似た名前の制度がいくつも出てきて混乱しがちです。いちばん多い誤解は「教育支援センター」と「学びの多様化学校」を同じものだと思ってしまうことです。前者は在籍校に籍を置いたまま通う「施設」、後者は転校して在籍する「学校」で、まったく別物です。
| 用語 | 正体 | 在籍 | 費用 | 出席の扱い |
|---|---|---|---|---|
| 教育支援センター (=適応指導教室) | 市区町村の教育委員会が運営する施設 | 在籍校のまま | 原則無料 | 要件を満たせば出席扱い |
| 校内教育支援センター (=校内の別室) | 在籍校の中に置かれた部屋 | 在籍校のまま | 無料 | 出席として扱われる |
| 学びの多様化学校 (旧・不登校特例校) | 特別の教育課程を組める正式な学校(全国84校) | その学校に転校 | 公立は無償/私立は学費 | 通常の出席 |
| フリースクール | NPOや民間企業が運営する民間施設 | 在籍校のまま | 月1〜5万円程度 | 要件を満たせば出席扱い |
| オンラインスクール | 自宅から参加する民間のスクール | 在籍校のまま | スクールにより異なる | 自宅ICT学習の要件を満たせば可 |
| 通信制高校・サポート校 | 高校段階の学校と、その学習を支える施設 | その高校に在籍 | 学校により異なる | 高校の在籍として扱われる |
この表でとくに見ておきたいのは「在籍」の列です。転校が必要かどうかで、手続きも心の準備もまったく変わります。教育支援センターやフリースクールは在籍校に籍を残したまま通えるので、「合わなければ戻る」ことができます。
名前が違っても中身は同じことがあります
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。
Q. 担任と話が噛み合いません
A. 「認めてください」ではなく「要件を満たすために何を用意すればよいですか」と聞き方を変えると通りやすくなります。それでも動かない場合は、学年主任・管理職・市区町村の教育委員会(教育相談室)へ相談先を上げてください。
Q. 毎日の欠席連絡がつらいです
A. 連絡方法は相談できます。「しばらく休むので、こちらから連絡がない日は欠席とみなしてください」と最初に合意しておくと、毎朝の負担がなくなります。多くの学校が対応してくれます。
Q. 保健室登校や別室登校は出席になりますか?
A. なります。校内で過ごした時間は在籍校の判断で出席として扱われるのが一般的です。保健室登校についてもあわせてご覧ください。
Q. 学習の遅れが心配です
A. 学校外での学習も、計画や内容が教育課程に照らし適切と判断されれば成績評価に反映できることが2024年8月の制度改正で明確になりました。詳しくは教育機会確保法の記事にまとめています。
Q. 面談で何を話せばいいですか?
A. ①いまの状態、②してほしい配慮を具体的に、③出席扱いの取り扱い、の3点に絞ると進みます。面談後に「本日確認したこと」をメールで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。
つらいときの相談先(24時間・無料)
- 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
- お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター
この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。
行き渋りは誰にでもあるものですか
はい、多くの子どもが成長の過程で経験するといわれています。ただし、頻度や強さ、期間によっては注意して見ていく必要があります。
行き渋りが続いたら、必ず不登校になりますか
いいえ、必ずしもそうではありません。早めに気づき、対応することで落ち着くケースも多くあります。
行き渋りの相談は誰にすればいいですか
担任の先生やスクールカウンセラーへの相談がまず考えられます。関連記事の「行き渋りが続くときの学校との連携の仕方」もあわせてご覧ください。
まとめ
行き渋りは不登校の「入口」になり得る状態です。小さなサインを見逃さず、お子さんのペースに寄り添っていきましょう。
「気づけたこと」そのものが、すでに大きな一歩です。完璧な対応ができなくても、寄り添おうとするその姿勢が、お子さんにとって何よりの安心材料になります。

