母子分離不安=甘えではない。不登校との関係と正しい向き合い方

「家では甘えん坊なのに、幼稚園や小学校になるとママから離れられない…」
「無理やり引きはがした方がいいのか、それとも甘えさせてあげた方がいいのか分からない」

そんな母子分離不安についての悩みは、多くの保護者から寄せられる相談のひとつです。実はこの母子分離不安、不登校とも深く関係しています。

そこで本記事では、「母子分離不安と不登校の関係性」について解説します。オルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の星野達郎(タツロー校長)が、脳科学の視点と、これまで数多くの母子分離不安の子どもたちと向き合ってきた経験から徹底解説します。

星野 達郎
星野 達郎 Tatsuro Hoshino
株式会社NIJIN 代表取締役 / NIJINアカデミー 校長

全国900名以上の小中高生が学ぶオルタナティブスクール「NIJINアカデミー」の校長を務める傍ら、2つの教師団体を主宰。これまで累計1,200名以上の教員向けに研修を実施し、学校の中と外、両面から教育課題の解決に取り組む。

その独自の教育実践はNHKやテレビ朝日など多くのメディアで特集され、「青年版国民栄誉賞」「内閣総理大臣奨励賞」を受賞するなど、各方面から高く評価されている。

確かな実績と熱い教育信念を持つ一方で、普段は生徒たちから気さくにいじられる「愛されキャラ」の校長として、日々子どもたちと本音で向き合っている。

目次

結論:引きはがした方が正しい時代もあったが、今は違う

結論から言うと、母子分離不安のお子さんに対して「無理やり引きはがす」という対応は、今の時代においては絶対に避けるべきだとタツロー校長は断言します。

タツロー校長

「昔は無理してでも、引きはがしてでも学校に連れて行かないと社会適合できない時代がありました。でも今は違います。今は、学校に行くことのデメリットの方が大きいんです。」

なぜ時代によって「正解」が変わるのか。そして、母子分離不安とはそもそも何なのか。順を追って解説していきます。

母子分離不安は「良いこと」。分離不安症との違い

母子分離不安と聞くと、ネガティブなイメージを持つ方が多いかもしれません。しかしタツロー校長は、母子分離不安そのものは「良いこと」だと言い切ります。

タツロー校長

「お母さんと離れたら不安になる。それは、お母さんの愛情をちゃんと受け取っている、極めて健全な反応です。むしろお母さん最高、と言ってあげたいくらいです。」

ただし、注意すべきケースもあります。対応を間違えたり、間違った情報をもとに行動してしまったりした結果、症状が長期化し、パニックや社会生活の困難につながる「分離不安症」に発展してしまう場合です。

初めての子育てでは、我が子の状態が「健全な母子分離不安」なのか、注意が必要な段階なのか、判断がつきにくいものです。だからこそ、たまたま出会った誤った情報や対応によって、状態が長引いてしまうケースが後を絶ちません。

脳科学から見る母子分離不安のメカニズム

母子分離不安を含む不安症状は、すべて脳機能のユニークさによって説明できるとタツロー校長は言います。カギを握るのは「扁桃体」という脳の部位です。

タツロー校長

「扁桃体は、脳の警報装置。危険が迫ると鳴って、体に危険を知らせてくれる機能です。『お母さんがいなくなっちゃう』となると、この扁桃体がアラームを鳴らし、脳の司令塔である前頭前野に信号を送ります。

その結果、体が固まったり、パニックになったり、動けなくなったりする。これが母子分離不安の正体です。そしてこのとき、周囲の対応によって分泌される物質が大きく異なります。

  • コルチゾール:無理な引きはがしなど、強いストレスを与えたときに分泌される。前頭前野に悪影響を及ぼし、トラウマや人間不信の原因になりうる
  • オキシトシン:抱きしめる、そばにいると伝えるなど、安心できる関わりによって分泌される。前頭前野の健全な発達を促す

不登校の子どもたちが無気力・無表情になっていくのも、このコルチゾールをはじめとした悪いストレスが体内に蓄積し、前頭前野が正常に働かなくなった結果だとタツロー校長は説明します。

なぜ「引きはがす」ことが、今は間違いなのか

ここで冒頭の結論に戻ります。なぜ、かつては「引きはがしてでも学校に行かせる」ことが正しいとされ、今はそうではないのでしょうか。タツロー校長は、その理由を「学校と社会の関係性の変化」に見ています。

昭和・平成初期の時代、情報は学校や職場といった組織に集約されていました。教科書には最先端の研究情報が集まり、家庭にいる母親の多くは、社会的なコミュニケーションの機会が今ほど多くありませんでした。つまり、学校の方が家庭よりも「上」にある時代だったのです。

タツロー校長

「当時は学校と社会が同じレベルでした。工業化社会のために学校があり、学校で学んだ人がそのまま工場のラインに出ていく。だから学校に行かないことのデメリットが、圧倒的に大きかったんです。」

しかし今は、状況が逆転しています。多くの母親たちは就労経験を持ち、社会と豊かにつながり、家庭の中でも高いレベルのコミュニケーションを子どもと交わしています。学校の先生よりも、人脈・知識・社会で生きる術を持つ保護者も珍しくありません。

つまり、「学校に行くことで得られる価値」と「家庭ですでに得られている価値」の差が、昔とは比べ物にならないほど縮まっている、あるいは逆転しているのです。だからこそタツロー校長は、「今は学校に行くことのデメリットの方が大きい」と語ります。

母子分離不安は「不安=賢さ」のサインかもしれない

NIJINアカデミーには、母子分離不安を経験してきた子どもたちがたくさん通っています。その保護者たちを見てきたタツロー校長は、ある共通点に気づいたと言います。

タツロー校長

「私が見てきた限り、母子分離不安は、コミュニケーション能力が高く、社会をよく知っている賢い保護者のご家庭ほど起きやすい印象があります。豊かな対話の中で育った子ほど、学校の画一的な指導に強い違和感を覚えるんです。」

つまり母子分離不安は、単に「ママと離れたくない」というだけの感情ではなく、豊かな家庭環境の中で育まれた個性が、学校という画一的な環境によって脅かされそうになったときに、扁桃体が発するアラームである可能性がある——タツロー校長はそう見ています。無気力や問題行動といった形で表面化する不安も含めて、その根底には「その子自身がとても賢い」という事実が隠れているのかもしれません。

具体的にどう向き合えばいいのか

では、我が子が母子分離不安で学校に行きたがらないとき、保護者は具体的にどう行動すればいいのでしょうか。タツロー校長の答えはシンプルです。

タツロー校長

行かせない方がいいと思います。そして、抱きしめてあげる、そばにいると伝えてあげる。安心できる関わりを積み重ねていけば、オキシトシンの力で前頭前野は健全に育っていきます。小学校低学年で向き合ってあげれば、多くの子は自然と自立していきますから。」

発達のスピードには個人差があり、それはオネショが治る時期や身長が伸びる時期が人によって違うのと同じだとタツロー校長は例えます。小学生で伸びる子もいれば、高校生になってから伸びる子もいる。焦る必要はまったくありません。

共働きなどの事情で、子どもにつきっきりでいるのが難しい家庭もあります。NIJINアカデミーでは、そうした保護者が働く企業と連携し、親子で一緒に「出勤・登校」できるような仕組みづくりにも取り組んでいます。

まとめ:引きはがすのではなく、寄り添う時代へ

母子分離不安は、決して「甘え」や「わがまま」ではありません。お母さんの愛情をきちんと受け取ってきた証であり、場合によっては、その子の高い感受性や賢さの表れでもあります。

かつては「引きはがしてでも学校へ」が正解とされた時代がありました。しかし社会と学校の関係性が大きく変わった今、その対応は前頭前野の健全な発達を妨げ、長期的な不安症状につながるリスクの方が大きくなっています。

タツロー校長

「無理に引きはがすのではなく、安心できる関わりを積み重ねる。それだけで、子どもは自分のペースでちゃんと自立していきます。何にも心配することはありません。」

我が子の母子分離不安に悩んだときは、まずは「無理に離す」ことをやめ、安心できる関わりを大切にすること。それが、これからの時代における正しい向き合い方です。

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▶ 動画でより深く:YouTube(フル解説)

さらに、星野達郎校長が今回のテーマを動画でより熱く、詳細に解説しています。
「不安=賢さ説」の詳しい根拠など、記事では紹介しきれない内容はぜひ動画でご視聴ください!

YouTube
【母子分離不安】をはじめとする「学校に行けない子」の問題にはある共通点があります ▼不登校オルタナティブスクール小中一貫校『NIJINアカデミー』https://academy.nijin.co.jp/▼教員研修プラットフォーム『授業てらす』https://jugyoterrace.nijin.co.jp/▼...
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この記事の内容を確かめるための一次資料

「怠けている」ように見える状態の裏に、医学的な背景があることは珍しくありません。とくに起立性調節障害は思春期に多く、朝起きられないことが本人の意思とは無関係に起きます。判断を家庭だけで抱えず、医療の一次情報にあたってください。

下の資料はすべて国・自治体・公的機関が出している一次情報です。学校や教育委員会と話すときは、この原文を示しながら相談すると、担当者によって対応が変わることを避けられます。

このテーマに関わる公的資料
資料何がわかるか
厚生労働省「こころの健康」子どもと保護者のメンタルヘルスの基礎情報
厚生労働省「こころの耳」相談窓口とセルフチェック
日本小児心身医学会起立性調節障害など、子どもの心身症に関する学会情報
文部科学省「令和6年度 問題行動・不登校等調査」小中の不登校353,970人。全国の最新の実数
文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」「登校という結果のみを目標にしない」という国の方針
同 別記1(学校外の施設で相談・指導を受ける場合)教育支援センター等に通った日を出席扱いにする要件
同 別記2(自宅でICT等を活用した学習)自宅学習を出席扱いにする7つの要件
文部科学省「欠席中に行った学習の成果に係る成績評価」2024年8月の改正。学習成果を成績に反映できる3要件
文部科学省「COCOLOプラン」誰一人取り残されない学びの保障に向けた国の対策
文部科学省「不登校に関する地元の相談窓口」全国1,045市区町村の公式相談窓口
教育機会確保法(e-Gov法令検索)第13条が「休養の必要性」を条文で認めている
こども家庭庁「子育て支援」子育て世帯が使える支援制度の全体像
国立教育政策研究所「生徒指導リーフ」研究にもとづく生徒指導の考え方をまとめた資料

学校に相談するときの進め方

1

① 支援の目標をすり合わせる

「令和元年10月25日の通知にあるとおり、登校という結果だけを目標にするのではなく、社会的な自立を目指す形で相談させてください」——最初にここを共有しておくと、その後の話が噛み合いやすくなります。

2

② 具体的な場所を挙げる

「教育支援センターの利用を考えています」「オンラインのスクールを検討しています」と場所を具体的に伝えます。抽象的な相談より判断してもらいやすくなります。

3

③ 出席扱いの要件を一緒に確認する

「別記1(通所)/別記2(自宅ICT学習)の要件を満たすために、こちらで何を用意すればよいでしょうか」と聞きます。「認めてください」ではなく「何を用意すればよいか」のほうが通ります。

4

④ 決めたことを記録に残す

面談のあとに「本日確認したこと」をメールなどで送っておくと、担任が変わっても引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。

つらいときの相談先(24時間・無料)

  • 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
  • お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター全国1,045市区町村の窓口一覧

この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。

家庭でいまできること

制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。

いま家庭で確かめておきたいこと

睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます)

食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか

頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください)

「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか

保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか

学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか

声のかけ方で迷ったときは

「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。

逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。

相談先の選び方|どこに何を聞けるか

相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。

相談先の比較
相談先聞けること費用向いている場面
在籍校(担任・スクールカウンセラー)出席の扱い、校内の別室、学習の進め方無料まず学校での配慮を相談したいとき
教育支援センター(市区町村)学校外の公的な居場所、通所と出席扱い原則無料学校の外に一歩を踏み出したいとき
フリースクール(民間)体験活動中心の居場所、少人数の学び月1〜5万円程度興味や「やってみたい」から入りたいとき
オンライン自宅から参加できる学び、出席扱いの実務スクールにより異なる外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき
医療機関(小児科・児童精神科)体の不調の背景、診断と治療保険診療睡眠・食事・体の症状が続くとき
24時間子供SOSダイヤル子ども本人・保護者どちらの相談も無料・24時間いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310)

どこから始めればいいか迷ったら

まずは市区町村の教育委員会(教育相談室)に電話してみてください。学校を通さずに保護者から直接相談できる自治体がほとんどです。「今すぐ通える場所はありますか」「対象は何年生からですか」の2つを聞くだけでも、次の一手が見えてきます。全国の窓口は文部科学省のページから探せます。

この記事のテーマについて、よく寄せられる質問

同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。

Q. 朝だけ具合が悪くなります。仮病でしょうか?

A. 仮病とは限りません。起立性調節障害のように、午前中に強く症状が出て午後に回復する状態は思春期に多くみられます。本人の意思では動かせない体の反応なので、まずは小児科や児童精神科で相談してください。

Q. 受診したほうがよい目安はありますか?

A. 睡眠・食事・体重に変化があるとき、体の症状が2週間以上続くときが一つの目安です。「気のせいかも」と迷う段階で相談して構いません。学校を休む判断の根拠にもなります。

Q. 薬を飲ませることに抵抗があります

A. 治療の選択は家庭が決めることです。迷いをそのまま医師に伝えてよいですし、薬以外の選択肢や、まず生活リズムから整える方針を相談することもできます。

Q. 学校にどう説明すればいいですか?

A. 診断名だけでなく、「午前中は登校が難しいが、午後なら可能なことがある」と具体的な時間帯や条件で伝えるほうが配慮につながります。医師の意見書があると、学校側も動きやすくなります。

Q. 保護者自身がつらいときは?

A. 保護者の消耗は子どもに伝わります。厚生労働省「こころの健康」や自治体の相談窓口は、保護者本人の相談も受け付けています。24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)は保護者からの相談も可能です。

つらいときの相談先(24時間・無料)

  • 24時間子供SOSダイヤル:0120-0-78310(全国どこからでも、24時間・無料。子ども本人も保護者も利用できます)
  • お住まいの市区町村の教育委員会 教育相談室/教育センター

この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。

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