- 製菓の資格は何歳から受けられるのか(製菓衛生師・菓子製造技能士)
- 小中学生が出られるコンテストが少ない、という現実
- お菓子作りが中学理科と直結している場所
- 作ったお菓子を人にあげる・売るときの決まり
- 中学卒業後に製菓を学ぶ道すじ
この記事では、厚生労働省・都道府県・業界団体の公式情報にあたって「今は受けられないもの」を正確に書いています。がっかりさせるためではなく、何年後に何ができるようになるかが分かると、いま何を積めばいいかが決まるからです。
まず結論|製菓の資格は、中学を出てから
製菓衛生師は都道府県が実施する国家資格です。東京都の公式ページで確認した受験資格は、次のいずれかを満たすことです。
(1)「都道府県知事の指定する製菓衛生師養成施設において、1年以上製菓衛生師として必要な知識、技能を修得した者」
(2)「中学校卒業以上の学歴があり、2年以上菓子製造業(食品衛生法第55条第1項の許可を受けて営むもの)に従事した者」
つまり在学中の小中学生は、どちらの条件も満たせません。最短でも「中学卒業 → 製菓衛生師養成施設で1年以上」という順番になります。
もう一つの国家検定である菓子製造技能士はどうでしょうか。中央職業能力開発協会の説明によると、3級は実務経験が6か月に満たなくても受検できますが、それは「検定職種に関する学科に在学する方」や「検定職種に関する訓練科において職業訓練を受けている方」が対象です。普通の小中学校はこれに当たらないため、事実上受検できません。
コンテストも、ほとんどが高校生から
今回、小中学生を明確に対象とする製菓コンテストの公式サイトは1件も確認できませんでした。
よく名前が挙がる「スイーツ甲子園(高校生パティシエNo.1決定戦)」は、産経新聞社の主催で、応募資格が「高校生3人1組でチーム」と明記されています。小中学生は応募できません。
年齢制限の明記がなく、小中学生でも応募できると読めるものとしては、共立食品の「夏の手作りコンテスト」(応募資格は「日本国内にお住まいの方」、同社の製菓材料を使ったオリジナル作品を写真で応募)があります。ただし「小中学生可」と書かれているわけではないので、応募前に主催者に確認してください。
コンテストが少ないことは、お菓子作りに価値がないという意味ではありません。評価される場が外にないなら、家庭の中に作ればいいだけです。誕生日、季節の行事、家族の集まり。「いつ・誰に・何を出すか」を先に決めて逆算する経験は、コンテストとほとんど同じ訓練になります。

お菓子作りは、中学理科とつながっている
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。お菓子作りで起きていることは、そのまま理科の内容です。
薄力粉と強力粉の違い=グルテン
一般財団法人製粉振興会の解説によると、小麦粉に水を加えてこねると、「グルテニン」と「グリアジン」という2つのたんぱく質が結合して「グルテン」ができます。グルテニンは弾力に富むが伸びにくく、グリアジンは弾力は弱いが伸びやすい。両方の性質を併せ持つのがグルテンです。
小麦のたんぱく質含有量は6〜14%で、たんぱく質が多い硬質小麦はパン向き、少ない軟質小麦は日本めんや菓子が主用途とされています。ケーキに使う小麦粉は「たんぱく質の量が少なくて質がソフト」であることが求められます。
「なぜお菓子には薄力粉なのか」の答えが、ここにあります。混ぜすぎると固くなる理由も同じです。
ふくらむ仕組み=炭酸水素ナトリウムの熱分解
オリエンタル酵母工業の公式解説によると、ベーキングパウダーは「炭酸ガスの発生源である重曹と、ガス発生を促進・調整する酸性剤および保存性を向上させる分散剤とを混合したもの」で、「水と熱が加わると炭酸ガスを発生して製品に膨らみをもたらします」。
重曹=炭酸水素ナトリウムの熱分解は、中学2年生の理科で扱う定番の実験です。ホットケーキがふくらむ理由と、授業でやる実験が同じものだと気づいた瞬間、その子にとって理科は「自分の話」になります。
失敗したときのノートをつけておくことをおすすめします。ふくらまなかった、固くなった、焦げた。原因を仮説として書き、次に一か所だけ変えて試す。これは理科の実験そのもので、自由研究のテーマにもそのまま使えます。

人にあげる・売るときの決まり
作れるようになると「売ってみたい」が出てきます。ここは法律の話になります。
食品衛生法上、菓子製造業は営業許可が必要な業種です(平成30年の法改正により令和3年6月1日から現在の制度に。許可が必要な32業種の11番目に「菓子製造業」が挙げられています)。つまり、家庭の台所で作ったお菓子をフリマアプリなどで販売することはできません。
ただし例外があります。東大阪市の公式ページには、「学校、社会福祉施設、地方公共団体、自治会、こども会等が地域交流や親睦を深めるために開催する行事(学園祭、バザー、お祭り等)において、臨時的に飲食物の調理・提供を行う場合は、『臨時出店』として営業許可の対象外」と記されています。ただしこの場合も開催日の10日前までに届出が必要で、生クリームを使用した食品は取り扱えない、食材の下ごしらえを屋外や家庭の台所で行ってはならない、といった制限があります。
この運用は自治体(保健所)ごとに異なります。バザーで出すことを考えるなら、必ず地元の保健所に確認してください。
中学卒業後の道すじ
| 進路 | 内容 | 取れる資格の例 |
|---|---|---|
| 高校の食物科・食物調理科 | 例:東京都立農業高等学校 食物科。日本料理・西洋料理・中国料理の実習に加え、製菓製パンの特別実習 | 調理師免許(必要単位修得者。調理師養成施設のため試験免除)、全国高等学校家庭科食物調理技術検定 |
| 製菓の専門学校 | 例:日本菓子専門学校 製菓技術学科(全日制2年)。1年次に洋菓子・和菓子・製パンの基礎、2年次に専門分野を選択 | 製菓衛生師(国家資格)、菓子製造技能士2級 |
厚生労働省によると、製菓衛生師養成施設は都道府県知事が指定するもので、養成課程には昼間課程・夜間課程・通信課程の3種類があります。「養成施設に進めば製菓衛生師の受験資格が得られる」という構造を知っておくと、高校選びの段階から逆算できます。
なお、パティシエになるのに資格が必須というわけではありません。ただ、資格があるルートを知っていることと、知らないままでいることは違います。中学生になったら、一度オープンキャンパスに行ってみる価値はあります。

よくある質問
まとめ
製菓衛生師は中学卒業後でなければ道が開けず、菓子製造技能士も事実上は専門の学科に進んでからです。スイーツ甲子園も高校生から。小中学生が外で腕を試せる場は、正直に言って多くありません。だからこそ、いまの時期は「誰かに食べてもらうために作る」経験を積みながら、なぜふくらむのか・なぜ薄力粉なのかという理科の側から深めていくのが現実的です。その2つを積んだ子が、高校・専門学校で強くなります。
この記事の内容を確かめるための一次資料
- 東京都保健医療局「令和8年度東京都製菓衛生師試験の実施について」(ページ)
- 中央職業能力開発協会「技能検定のご案内」(ページ)
- 厚生労働省「製菓衛生師養成施設」(ページ)
- 産経新聞社「スイーツ甲子園 高校生パティシエNo.1決定戦」(ページ)
- 共立食品株式会社「夏の手作りコンテスト」(ページ)
- 一般財団法人製粉振興会「小麦粉の科学」(ページ)
- オリエンタル酵母工業株式会社「ベーキングパウダーとは」(ページ)
- 東大阪市「バザーやお祭りなどで食品を提供する場合」(ページ)/江東区「食品衛生法の改正に伴う営業許可・営業届出について」(ページ)
- 東京都立農業高等学校「食物科の紹介」(ページ)
- 日本菓子専門学校「製菓技術学科」(ページ)
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