「音読だけ極端につっかえる」「板書が写せない」「計算だけができない」——他はできるのに特定の学習だけつまずく。それは学習障害(LD/限局性学習症)のサインかもしれません。この記事では、LDの特性から、診断の流れと費用、ICTや合理的配慮などの支援、家庭でできる関わりまでを、順番に整理してお伝えします。 学習障害(LD)は、医学的には限局性学習症(SLD:Specific Learning Disorder)と呼ばれ、全体的な知的発達に遅れはないのに、「読む」「書く」「計算する」など特定の学習だけが極端に苦手な状態です。努力不足やなまけではなく、脳の情報処理の特性によるものです。 LDは知的な遅れがないぶん「がんばれば読める・書けるはず」と誤解されやすく、本人が「自分は頭が悪い」と思い込んでしまいがちです。早く気づき、合った方法で学べる環境を整えることが、自信を守るうえでとても大切です。 特定の教科・場面だけ極端に苦手で、他は年齢相応にできる——このアンバランスさがLDのサインです。「さぼっている」と捉えず、どこでつまずくかをていねいに見ることが第一歩です。 診断は児童精神科・小児神経科・発達外来などの医療機関で行われます。相談窓口や学校では診断はできませんが、どこにかかればよいかを一緒に考えてくれます。一般的な流れは次の4ステップです。 市区町村の窓口や発達障害者支援センターに相談し、受診が必要かの見立てをもらう。 発達を診られる医療機関を予約。初診まで数週間〜数か月待つことも。早めが安心。 成育歴や家庭・学校での様子を聞き取り。母子手帳・連絡帳・通知表があるとスムーズ。 WISC-Vなどの知能検査や発達検査を実施し、総合して診断。診断まで1〜2か月が目安。 診察・知能検査・心理検査は多くが健康保険の対象(原則3割負担)。多くの市区町村の子ども医療費助成で自己負担が軽くなり、継続通院は自立支援医療制度で抑えられる場合があります。すべて自費の専門機関では検査一式で1.5万〜4万円ほどが目安。診断書作成料などは保険適用外のことがあります。 LDの支援は、苦手を無理に克服させることより、合った方法・道具で「わかる・できる」体験を積むことが中心です。学校では、障害の状態に応じた合理的配慮が求められています(文部科学省 特別支援教育)。 「読み書きだけが極端に苦手かも」と思ったら、まずお住まいの市区町村の教育相談・子育て・保健の窓口へ。学校のスクールカウンセラーや通級の相談も入口になります。診断や詳しい検査は児童精神科・小児神経科などの医療機関で受けられます。 相談窓口の名称や体制は都道府県・市区町村で異なります。にじいろでは地域別に「診断・相談できる場所」をまとめています。東京都版・神奈川県版・大阪府版など、お住まいの地域の記事をご覧ください。 診断名がつくことに、抵抗や不安を感じる保護者は少なくありません。その気持ちはとても自然なものです。けれど診断は、お子さんを枠に閉じ込めるレッテルではなく、その子の世界を理解し、合う環境を選ぶための「地図」です。つまずきが減れば、本人が本来もっている力——好きなことへの集中力や独自の発想——が伸びていきます。にじいろは「数値で測られる学びから、経験で語れる学びへ」を掲げ、その子だけの強みを大切に育てる保護者を後押しします。一人で抱え込まず、まず相談することから始めてみてください。 現役校長・タツロー校長が、学習のつまずきや発達について動画で解説しています。文章とあわせてご覧ください。 ▶ 【発達障害なら支援級に入れるべき?】現役校長が本音で解説 学校以外にも、その子に合う学びの場があります 「ALL HAPPY」を掲げる小中一貫のオルタナティブスクール。不登校・発達特性のある子どもたちが全国から通っています。在籍校と連携した97%の出席認定率を公表しています。 NIJINアカデミー 「ALL HAPPY」を掲げる小中一貫のオルタナティブスクール。累計1,000名以上が入学し、在籍校と連携した97%の出席認定率を公表しています。 制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。 いま家庭で確かめておきたいこと 睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます) 食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか 頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください) 「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか 保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか 学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか 「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。 逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。 相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。 どこから始めればいいか迷ったら 言いたいことは決まっていても、いざ書こうとすると手が止まる——という声をよく聞きます。そのまま使える形にしました。丁寧すぎる必要はありません。事実と、してほしいことが伝われば十分です。 毎朝の欠席連絡は、家庭にとっても学校にとっても負担です。先にこの一文で合意しておくと、朝の消耗がなくなります。多くの学校が対応してくれます。 「配慮してください」だけでは学校も動きにくいので、場面と具体的な対処をセットで書くのがコツです。診断名は必須ではありません。 ポイントは「認めてください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞くことです。学校側も判断材料を求めています。要件の全文は教育支援センターとはの記事に原文どおり掲載しています。 口頭の合意は、担任が変わると消えてしまいます。短くていいので記録に残しておくと、翌年度も引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。 伝える相手の順番 不登校について調べていると、似た名前の制度がいくつも出てきて混乱しがちです。いちばん多い誤解は「教育支援センター」と「学びの多様化学校」を同じものだと思ってしまうことです。前者は在籍校に籍を置いたまま通う「施設」、後者は転校して在籍する「学校」で、まったく別物です。 この表でとくに見ておきたいのは「在籍」の列です。転校が必要かどうかで、手続きも心の準備もまったく変わります。教育支援センターやフリースクールは在籍校に籍を残したまま通えるので、「合わなければ戻る」ことができます。 名前が違っても中身は同じことがあります 同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。 A. 受けられます。通級指導や校内の配慮は、診断名がなくても本人の困りごとを根拠に相談できます。就学相談や教育支援センターも同様です。診断は「支援を受けるための条件」ではなく、支援の設計を助ける情報のひとつだと考えてください。 A. 「どちらが正解か」ではなく、いまの学級でその子が消耗しているかどうかで考えるのが現実的です。学びの内容だけでなく、人数・音・切り替えの多さといった環境要因を見てください。判断の考え方は支援級に入れるべきかにまとめています。 A. 狭くはなりません。不登校を公表した著名人のように、学校の枠に合わなかった人が別の道で力を発揮する例は多くあります。大事なのは「合う環境を選べるかどうか」で、選択肢は年々増えています。 A. 伝え方次第です。「◯◯障害です」と診断名だけを伝えるより、「音が大きいと固まってしまうので、席を後ろにしてほしい」と具体的な場面と対処で伝えるほうが、担任も動きやすくなります。 A. 一度に多くを変えないことです。予定を紙に書いて見える場所に貼る、次の行動を1つだけ先に伝える——この2つだけでも負担が変わる子は多いです。うまくいかない日があっても、やり方が悪いわけではありません。 つらいときの相談先(24時間・無料) この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。学習障害(LD/SLD)とは?
3つのタイプと、小学校でのあらわれ方
① 読みの困難(ディスレクシア)
② 書きの困難(ディスグラフィア)
③ 計算・推論の困難(ディスカリキュリア)
診断はどこで・どうやって受ける?(流れ・費用)
相談窓口で様子を整理する
医療機関を予約する
問診・行動観察
心理検査・発達検査 → 診断
支援の考え方(苦手を補い、強みを活かす)

家庭でできる関わり
相談先
診断は「レッテル」ではなく「地図」——にじいろから
タツロー校長のYouTube解説

家庭でいまできること
声のかけ方で迷ったときは
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先
聞けること
費用
向いている場面
在籍校(担任・スクールカウンセラー)
出席の扱い、校内の別室、学習の進め方
無料
まず学校での配慮を相談したいとき
教育支援センター(市区町村)
学校外の公的な居場所、通所と出席扱い
原則無料
学校の外に一歩を踏み出したいとき
フリースクール(民間)
体験活動中心の居場所、少人数の学び
月1〜5万円程度
興味や「やってみたい」から入りたいとき
オンライン
自宅から参加できる学び、出席扱いの実務
スクールにより異なる
外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき
医療機関(小児科・児童精神科)
体の不調の背景、診断と治療
保険診療
睡眠・食事・体の症状が続くとき
24時間子供SOSダイヤル
子ども本人・保護者どちらの相談も
無料・24時間
いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310)
学校に伝えるときの文例
① しばらく休むことを伝える
本人の体調と気持ちの状態から、しばらく学校をお休みさせていただきます。
毎朝のご連絡が負担になっているため、こちらから連絡がない日は欠席としてお取り扱いいただけますでしょうか。状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。② 配慮をお願いする
つきましては、登校できた日は保健室や別室で過ごさせていただくことは可能でしょうか。
また、給食の時間だけ別室にする、掃除の時間は無理をさせない、といった形でもかまいません。
本人が続けられる形を一緒に考えていただけると助かります。③ 出席扱いについて相談する
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)に、学校外の施設で相談・指導を受けた場合や、自宅でICT等を活用した学習を行った場合の指導要録上の出席扱いについて定めがあると伺いました。
本校ではどのような運用になっていますでしょうか。また、要件を満たすために家庭で用意すべきものがあれば教えてください。④ 面談のあとに送る確認メール
確認させていただいた内容を念のためお送りします。
・当面は◯◯(別室/午後のみ など)で対応いただく
・◯◯(教育支援センター等)への通所を検討し、決まり次第ご連絡する
・出席の取り扱いについては、◯月◯日までにご回答いただく
認識に相違がありましたらお知らせください。まぎらわしい用語の整理
用語
正体
在籍
費用
出席の扱い
教育支援センター
(=適応指導教室)市区町村の教育委員会が運営する施設
在籍校のまま
原則無料
要件を満たせば出席扱い
校内教育支援センター
(=校内の別室)在籍校の中に置かれた部屋
在籍校のまま
無料
出席として扱われる
学びの多様化学校
(旧・不登校特例校)特別の教育課程を組める正式な学校(全国84校)
その学校に転校
公立は無償/私立は学費
通常の出席
フリースクール
NPOや民間企業が運営する民間施設
在籍校のまま
月1〜5万円程度
要件を満たせば出席扱い
オンラインスクール
自宅から参加する民間のスクール
在籍校のまま
スクールにより異なる
自宅ICT学習の要件を満たせば可
通信制高校・サポート校
高校段階の学校と、その学習を支える施設
その高校に在籍
学校により異なる
高校の在籍として扱われる
この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
Q. 診断がついていなくても、支援は受けられますか?
Q. 支援級に移すべきか迷っています
Q. 特性があると、進路は狭くなりますか?
Q. 学校に特性を伝えると、レッテルを貼られませんか?
Q. 家庭でできる工夫はありますか?
学習障害は勉強すれば治りますか?
知的な遅れとは違うのですか?
学校でタブレットを使う配慮は受けられますか?
診断がなくても支援は受けられますか?
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つらい気持ちを今すぐ話したいとき(全国共通・24時間)
24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310
お子さんからでも、保護者の方からでも相談できます。お住まいの地域の教育相談センターにつながります。

