「家ではよく話すのに、学校では一言も話さない」——それは場面緘黙(かんもく)かもしれません。本人はわざと黙っているのではなく、強い不安で「話したくても話せない」状態です。この記事では、小学生の場面緘黙への家庭・学校での対応、やってはいけない関わり、相談先までを、実践的に整理してお伝えします。 場面緘黙(選択性緘黙)は、家庭など安心できる場所では話せるのに、学校など特定の社会的な場面になると話したくても声が出せなくなる状態が続くものです。わがままや反抗、性格の問題ではなく、強い不安が背景にある不安症の一つと考えられています。本人は「話さない」のではなく「話せなくて困っている」——ここが出発点です。 場面緘黙の背景やメカニズムは、こちらの記事でくわしく解説しています:【場面緘黙】家では話せるのに学校で話せないのはなぜ?校長が解説。本記事は、その先の「家庭と学校でどう対応するか・どこに相談するか」に絞ってお伝えします。 「頑張って話してごらん」と促す、みんなの前で発言させる、話せたら大げさにほめる——こうした働きかけは、かえって不安とプレッシャーを強めてしまうことがあります。まずは「話さなくても大丈夫」という安心をつくることが最優先です。 「学校で話せない状態が続く」と感じたら、まず担任・スクールカウンセラーや、お住まいの市区町村の教育相談・子育て・保健の窓口へ。専門的な相談・支援は、児童精神科・小児科、臨床心理士・公認心理師、言語聴覚士、発達障害者支援センターなどで受けられます。不安が強い場合は医療機関での相談も選択肢になります。 相談窓口の名称や体制は都道府県・市区町村で異なります。にじいろでは地域別に「診断・相談できる場所」をまとめています。東京都版・神奈川県版・大阪府版など、お住まいの地域の記事をご覧ください。 診断名がつくことに、抵抗や不安を感じる保護者は少なくありません。その気持ちはとても自然なものです。けれど診断は、お子さんを枠に閉じ込めるレッテルではなく、その子の世界を理解し、合う環境を選ぶための「地図」です。つまずきが減れば、本人が本来もっている力——好きなことへの集中力や独自の発想——が伸びていきます。にじいろは「数値で測られる学びから、経験で語れる学びへ」を掲げ、その子だけの強みを大切に育てる保護者を後押しします。一人で抱え込まず、まず相談することから始めてみてください。 現役校長・タツロー校長が、場面緘黙について動画で解説しています。文章とあわせてご覧ください。 ▶ 【場面緘黙】学び方や将来のキャリアは?学校で話せない理由 学校以外にも、その子に合う学びの場があります 「ALL HAPPY」を掲げる小中一貫のオルタナティブスクール。不登校・発達特性のある子どもたちが全国から通っています。在籍校と連携した97%の出席認定率を公表しています。 NIJINアカデミー 「ALL HAPPY」を掲げる小中一貫のオルタナティブスクール。累計1,000名以上が入学し、在籍校と連携した97%の出席認定率を公表しています。 制度や相談先が分かっても、明日からどう過ごすかは別の話です。うまくいかない日があって当たり前という前提で、いま無理なくできそうなものだけを選んでください。全部やろうとしないことが、いちばん大事なコツです。 いま家庭で確かめておきたいこと 睡眠のリズムが崩れていないか(起きる時間より、寝る時間を先に整えるほうがうまくいきます) 食事が極端に減っていないか。体重の変化はないか 頭痛・腹痛・立ちくらみなど、体の訴えが続いていないか(続く場合は受診を検討してください) 「学校の話」以外で笑える時間が、1日に少しでもあるか 保護者自身が眠れているか。抱え込んでいないか 学校との連絡窓口が、担任1人に集中していないか 「なんで行けないの」と理由を問うと、子ども自身も説明できないことが多く、答えられない自分を責めてしまいます。理由を聞くより、いまの状態を言葉にして返すほうが伝わります。「しんどそうだね」「今日はゆっくりでいいよ」——それだけで十分な日があります。 逆に、避けたほうがよい言葉もあります。「みんな行ってるよ」「そんなことでどうするの」「甘えてるだけでしょ」。どれも本人がすでに自分に言っている言葉なので、外から重ねると逃げ場がなくなります。 相談先はひとつではありません。それぞれ役割が違うので、聞きたい内容で選ぶと早く進みます。 どこから始めればいいか迷ったら 言いたいことは決まっていても、いざ書こうとすると手が止まる——という声をよく聞きます。そのまま使える形にしました。丁寧すぎる必要はありません。事実と、してほしいことが伝われば十分です。 毎朝の欠席連絡は、家庭にとっても学校にとっても負担です。先にこの一文で合意しておくと、朝の消耗がなくなります。多くの学校が対応してくれます。 「配慮してください」だけでは学校も動きにくいので、場面と具体的な対処をセットで書くのがコツです。診断名は必須ではありません。 ポイントは「認めてください」ではなく「何を用意すればよいですか」と聞くことです。学校側も判断材料を求めています。要件の全文は教育支援センターとはの記事に原文どおり掲載しています。 口頭の合意は、担任が変わると消えてしまいます。短くていいので記録に残しておくと、翌年度も引き継がれます。学校側にとっても助かる手順です。 伝える相手の順番 同じような状況の方から実際によく届く質問をまとめました。あてはまるものから読んでください。 A. 受けられます。通級指導や校内の配慮は、診断名がなくても本人の困りごとを根拠に相談できます。就学相談や教育支援センターも同様です。診断は「支援を受けるための条件」ではなく、支援の設計を助ける情報のひとつだと考えてください。 A. 「どちらが正解か」ではなく、いまの学級でその子が消耗しているかどうかで考えるのが現実的です。学びの内容だけでなく、人数・音・切り替えの多さといった環境要因を見てください。判断の考え方は支援級に入れるべきかにまとめています。 A. 狭くはなりません。不登校を公表した著名人のように、学校の枠に合わなかった人が別の道で力を発揮する例は多くあります。大事なのは「合う環境を選べるかどうか」で、選択肢は年々増えています。 A. 伝え方次第です。「◯◯障害です」と診断名だけを伝えるより、「音が大きいと固まってしまうので、席を後ろにしてほしい」と具体的な場面と対処で伝えるほうが、担任も動きやすくなります。 A. 一度に多くを変えないことです。予定を紙に書いて見える場所に貼る、次の行動を1つだけ先に伝える——この2つだけでも負担が変わる子は多いです。うまくいかない日があっても、やり方が悪いわけではありません。 つらいときの相談先(24時間・無料) この記事は情報提供であり、医療的・心理的な診断や個別の助言に代わるものではありません。心身の不調が続く場合は、かかりつけ医やスクールカウンセラーにご相談ください。 登校や毎朝の関わりで迷ったときは、こちらもあわせてご覧ください。 場面緘黙(かんもく)とは?
小学生に見られるサイン
対応の基本——「話させよう」としないこと
家庭でできること

学校でできる配慮・連携
早見表:家庭と学校でできること
場面
本人に合わせてできる工夫
家庭
「話せない」を責めず不安に寄り添う/学校の様子を問い詰めず、安心して帰れる家を大切に/好きなこと・得意なことで自信を育てる/少人数で安心して遊べる場を広げる
学校
発表・音読・点呼などを本人に合った方法(筆談・カード・録音等)に代える/「話せたか」ではなく「参加できたか」で見る/担任・スクールカウンセラー・保護者で情報を共有し対応をそろえる/安心できる友だちや居場所を確保する
共通の姿勢
「話さなくても大丈夫」という安心づくりを最優先に/スモールステップで本人のペースを尊重/時間がたつほど固定しやすいため、早めの理解と連携を大切に
関わり方の見直し早見表
逆効果になりやすい関わり
望ましい関わり
「頑張って話してごらん」と促す
話すことを求めず、うなずきや筆談など話す以外の参加を認める
みんなの前で発言させる
その場にいる→ジェスチャー→小声→特定の人と…と段階を一つずつ進める
話せたら大げさにほめる
できたことを大げさにせず、さりげなく受けとめる
相談先
診断は「レッテル」ではなく「地図」——にじいろから
タツロー校長のYouTube解説

家庭でいまできること
声のかけ方で迷ったときは
相談先の選び方|どこに何を聞けるか
相談先
聞けること
費用
向いている場面
在籍校(担任・スクールカウンセラー)
出席の扱い、校内の別室、学習の進め方
無料
まず学校での配慮を相談したいとき
教育支援センター(市区町村)
学校外の公的な居場所、通所と出席扱い
原則無料
学校の外に一歩を踏み出したいとき
フリースクール(民間)
体験活動中心の居場所、少人数の学び
月1〜5万円程度
興味や「やってみたい」から入りたいとき
オンライン
自宅から参加できる学び、出席扱いの実務
スクールにより異なる
外に出るのが難しい/近くに選択肢がないとき
医療機関(小児科・児童精神科)
体の不調の背景、診断と治療
保険診療
睡眠・食事・体の症状が続くとき
24時間子供SOSダイヤル
子ども本人・保護者どちらの相談も
無料・24時間
いますぐ誰かに聞いてほしいとき(0120-0-78310)
学校に伝えるときの文例
① しばらく休むことを伝える
本人の体調と気持ちの状態から、しばらく学校をお休みさせていただきます。
毎朝のご連絡が負担になっているため、こちらから連絡がない日は欠席としてお取り扱いいただけますでしょうか。状況が変わりましたら、その都度ご連絡いたします。② 配慮をお願いする
つきましては、登校できた日は保健室や別室で過ごさせていただくことは可能でしょうか。
また、給食の時間だけ別室にする、掃除の時間は無理をさせない、といった形でもかまいません。
本人が続けられる形を一緒に考えていただけると助かります。③ 出席扱いについて相談する
文部科学省の「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(令和元年10月25日)に、学校外の施設で相談・指導を受けた場合や、自宅でICT等を活用した学習を行った場合の指導要録上の出席扱いについて定めがあると伺いました。
本校ではどのような運用になっていますでしょうか。また、要件を満たすために家庭で用意すべきものがあれば教えてください。④ 面談のあとに送る確認メール
確認させていただいた内容を念のためお送りします。
・当面は◯◯(別室/午後のみ など)で対応いただく
・◯◯(教育支援センター等)への通所を検討し、決まり次第ご連絡する
・出席の取り扱いについては、◯月◯日までにご回答いただく
認識に相違がありましたらお知らせください。この記事のテーマについて、よく寄せられる質問
Q. 診断がついていなくても、支援は受けられますか?
Q. 支援級に移すべきか迷っています
Q. 特性があると、進路は狭くなりますか?
Q. 学校に特性を伝えると、レッテルを貼られませんか?
Q. 家庭でできる工夫はありますか?
場面緘黙は、そのうち自然に治りますか?
無理に話させても大丈夫ですか?
発達障害と関係がありますか?
どこに相談すればいいですか?
家では話せるのに学校で話せないのは「甘え」や「わがまま」ですか?
サインに気づいたら、まず何から始めればよいですか?
学校にはどんな配慮をお願いできますか?
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つらい気持ちを今すぐ話したいとき(全国共通・24時間)
24時間子供SOSダイヤル 0120-0-78310
お子さんからでも、保護者の方からでも相談できます。お住まいの地域の教育相談センターにつながります。
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